rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

10 3月

グローバル英語のスタイル(6):the は何を指しているか明確な場合のみに使う

「the」という定冠詞は英語で非常によく使われるものの、英語を母語とするプロのライターでさえよく間違える。間違った使い方をすると読者を混乱させることになったり、誤訳の原因になったりするので注意が必要だ。

「the + 名詞」という形は、何を指しているか読者にとって明確な場合に使用する。以前に話題になったことのない名詞に the を付けると、読者は混乱してしまう。

Style Guide では次の例を挙げている。
I saw the dog on my way to work.
この場合、話す人と聞く人の間で以前に dog について話題になったことがあり、そのためどの dog を指しているか明確な場合にのみ the が使える。逆に言うと、初めてその dog を話題にする場合、a を使うことになる。

また Style Guide では別の例を挙げる。
× HIERLIST is a list that show the hierarchy.
例えばマニュアルのそれまでのページにこの hierarchy が出ていない場合、a hierarcy にする。ただし「the hierarchy that was specified for the organizational chart」など、that を使って対象を限定する場合、the が使える。

日本人にとっては the の使用が最も難しいのではないかと思う。上記のような原則は中学や高校の英文法で勉強しているはずだが、それでも判断に迷うことが多い。ただしネイティブでもよく間違えるとのことなので、最初は完璧を目指さなくてもいいかもしれない。
例に挙がっているように that などで指す対象を明確にすると the が使える。しかし、that で限定すればすべて the になるかと言うと、そうでもない。例えば、
  ・the product that the company sells...
  ・a product that the company sells...
の場合、前者は特定の製品を表し、後者は数ある製品のうちの 1 つを表している。



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「2.6」の内容に該当する。


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9 3月

グローバル英語のスタイル(5):標準的でない比較級と最上級は使わない

比較級 -er と最上級 -est が使える場合に、more と most は使わないようにする。
Style Guide では次のような例を挙げている。
× Can particles that are tens of thousands of times more narrow than a human hair penetrate human skin?
○ Can particles that are tens of thousands of times narrower than a human hair penetrate human skin?
同様に、more と most が適切な場合がある。同書の例を以下に挙げる。
× Gene-chip technology can detect one of the commonest genetic mutations with 100% accuracy.
○ Gene-chip technology can detect one of the most common genetic mutations with 100% accuracy.
どちらが標準的かは通常は辞書に記載されているが、ない場合は Web 上で検索すると判断できることが多い。
Google や Bing のフレーズ検索(" " で囲む)を行なってヒット数を比較するとよい。例えば最初の narrow の場合、Bing で「"times more narrow than"」で検索すると約 46 件、「"times narrower than"」で検索すると約 264 万件ヒットする。そのため、通常は「narrower」の形が使われていることが分かる。
ただし Web 検索では非ネイティブの英語が混じっているので注意が必要である。Google も Bing も「site:」を付けてドメイン検索にして範囲を限定した方がよいだろう。例えばイギリスに限定する場合は「site: uk」を付けたり、アメリカの大学に限定する場合は「site: edu」を付けたりして検索対象のドメインを指定する。具体的には「"times narrower than" site:uk」などと検索する。
Google の検索はたまにヒット件数の表示がおかしいことがあるので注意が必要だ。何ページかめくっていると、突然ヒット件数が大幅に変わることがある。



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「2.7」の内容に該当する。


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8 3月

グローバル英語のスタイル(4):語句の組み合わせは標準的なものを使う

ネイティブ スピーカーの場合、ある単語と特定の単語とを強く結びつけて覚えている。
『Global English Style Guide』の例だと、correspond という単語は to や with と結びついている。associate の場合は with のみと結びついている。そのため、
× The user can associate metadata to any metadata resource in a repository.
○ The user can associate metadata with any metadata resource in a repository.
となる。

組み合わせが適切でない場合、(1)翻訳時に解釈に手間取る、(2)機械翻訳で間違いが発生する、(3)ドキュメント全体の一貫性が崩れるため翻訳メモリのマッチ率が下がる、といった弊害が発生する。

こういった組み合わせは辞書に記載されていることが多いが、実際の使用例を知りたい場合、Google や Bing で「"associate to"」と「"associate with"」を検索し、その数を比較してみることもよいだろう。ちなみに Google も Bing も " " で囲むと、それぞれの単語ではなく、ひとまとまりの句(フレーズ)として検索できる。
また、コーパス ツールで発生頻度を集計してみる方法もある。例えば英辞郎の「頻度集計機能」を使うと、どの単語の組み合わせが多いのかが手軽に分かる。(頻度集計機能はベータ版なので、非公開になる可能性がある)



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「2.6」の内容に該当する。


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西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
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