rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

14 7月

594年の孤独

「涼宮ハルヒの憂鬱」の最新作を見た。
エンドレスエイトと呼ばれる連話の 3 回目です。

これ、夏休みに何かをやり残したと無意識に思っているハルヒが 8/17 〜 8/31 までの時間をループさせているという話です。
そのループ回数、15,499 回!
2 週間分(8/17 〜 8/31)で 1 回なので、なんと 594 年になる。

記憶がリセットされるため、ハルヒ本人はもちろん、他の人は誰もそのループに気づいていない。長門有希を除き・・・。
この長門は 594 年も一人でループを観察してきたということらしい。

そういう話の中の設定はアニメなので、まあいいとしよう。
しかし驚くのは、このループに合わせ、テレビも内容自体はまったく同じものを 3 週に渡って放送してるんです。
細部は微妙に違うものの、基本的に同じ話を 3 回もやるとは、ものすごい決断だと思う。
先週見たとき、さすがに 2 回で終わると思っていたが、完全にやられた。

もともとこのテレビアニメ版「涼宮ハルヒの憂鬱」の構成は、第 1 話からすごかった。
「涼宮ハルヒの憂鬱」なのに、第 1 話のタイトルは「朝比奈ミクルの冒険」。
誰が主人公なのか分からない。
そして、いきなりセリフ棒読みのキャラが次々と登場する。
これは「劇中劇」だと分かるのだけど、その劇中劇の監督であるハルヒは最後まで姿を現さない。声だけ。

実はハルヒは劇中劇の「監督」だけではなく、その劇自体の「超監督」であるという、多重の階層で成り立っている。
1970 〜 80 年代の筒井康隆の小説みたいに面白いです。
12 7月

『Cat's Cradle (猫のゆりかご)』 カート・ボネガット

カート・ボネガットの「Cat's Cradle (猫のゆりかご)」を読んだ。

◆内容は・・・

あるノーベル賞科学者が「アイス9」という物体を発明した。
これは触れた水を結晶化させ、結晶化した水が新たなアイス9に変わるというもの。
それで例えば池にアイス9を投げ込むと、池が結晶化し、それにつながっている川が続けて結晶化し、さらに川が注ぎ込む海が結晶化し・・・という具合に連鎖していく。
それで世界が凍ったような状態になるわけです。

この科学者が死ぬとき、3人の子供がアイス9を受け取った。
ある作家は、この子供たちが今カリブ海のとある国に住んでいるらしいことを突き止める。
そしてこの作家が子供たちに会おうとカリブ海の国に向かい、いろいろな出来事に巻き込まれるわけです。
(結末に近いところは書きませんが、もっと知りたければ Wikipedia でも)

◆英語は・・・

原書で読んだのですが、英語自体はやや難の部類に入りそう。
ただ章段がいくつにも分かれていて区切りをつけやすいので、読み進めること自体は楽だった。

ところで、少なくとも 3〜4 冊程度(原書で)読んだ作家の中で、英語が読みやすかったのはアガサ・クリスティーとヘミングウェイあたりですね。
今回のボネガットや前回読んだサリンジャーは、これらよりも難しかった。

次は「ユリシーズ」あたりを読みたいのだけど、ちょっと学校が忙しくなってきたからお預けかな・・・。

Cat's Cradle (Penguin Modern Classics)Cat's Cradle (Penguin Modern Classics)
著者:Kurt Vonnegut
販売元:Penguin Classics
発売日:2008-05-01
おすすめ度:5.0
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11 7月

英語文学ベスト100

最近また文学を読み始めたのですが、次に何を読めばよいか参考になる資料がないかと思って探していました。
英語で書かれた文学のベスト 100 みたいなのをいくつかの組織が出しているみたいです。

◆ ランダムハウス社:モダンライブラリ
(1998年発表)
http://www.randomhouse.com/modernlibrary/100bestnovels.html

リンク先の左列の「THE BOARD'S LIST」が委員会選出のベスト100、右列の「THE READER'S LIST」が読者投票によるベスト 100 です。
読者の方はちょっと微妙なので、ここは権威がありそうな委員会の方で話を進めましょう(”文学”なんていう制度は権威で成立している)。

ベスト 10 を見ると・・・

  1. ユリシーズ: ジェームズ・ジョイス
  2. 華麗なるギャッツビー: スコット・フィッツジェラルド
  3. 若き芸術家の肖像: ジェームズ・ジョイス
  4. ロリータ: ウラジミール・ナボコフ
  5. すばらしい新世界: オルダス・ハクスリー
  6. 響きと怒り: ウィリアム・フォークナー
  7. キャッチ22: ジョゼフ・ヘラー
  8. 真昼の暗闇: アーサー・ケストラー
  9. 息子と恋人: D.H. ローレンス
  10. 怒りの葡萄: ジョン・スタインベック

ほとんど知っているタイトルばかりですが、恥ずかしながら 5 位と 8 位はまったく知らなかった。名前すら聞いたことなかった・・・。


◆ ラドクリフ出版コース
(1998年発表)
http://www.randomhouse.com/modernlibrary/100rivallist.html

それで、このランダムハウスのに対し、Radcliffe Publishing Course というところもベスト 100 を出してきたらしい。
(Radcliffe Publishing Course というのは、もともとラドクリフ大学の出版コースらしく、今はコロンビア大学に吸収されていてもうないようだ)

  1. 華麗なるギャッツビー: スコット・フィッツジェラルド
  2. ライ麦畑でつかまえて: J.D. サリンジャー
  3. 怒りの葡萄: ジョン・スタインベック
  4. アラバマ物語(To Kill a Mockingbird): ハーパー・リー
  5. カラーパープル: アリス・ウォーカー
  6. ユリシーズ: ジェームズ・ジョイス
  7. ビラブド: トニ・モリソン
  8. 蝿の王: ウィリアム・ゴールディング
  9. 1984: ジョージ・オーウェル
  10. 響きと怒り: ウィリアム・フォークナー

こちらはほとんど知っていた。
(ちょっと「政治的正しさ」みたいなものが見えますが、まあいいでしょう)

共通なのは、「ユリシーズ」、「華麗なるギャッツビー」、「怒りの葡萄」、「響きと怒り」ですか。


◆ タイム誌
(2005 年発表)
http://www.time.com/time/2005/100books/the_complete_list.html

あのタイムもベスト 100 なんて出してます。
こちらは順位が付いてないので、だらだらと 100 冊。
どうもタイムが刊行された 1923 年以降が対象らしく、選者がわざわざ「1922 年のユリシーズは入っていません」みたいなことを言っています。
やはり「ユリシーズ」はすごいのか。


◆ BBC
(2003 年発表)
http://www.bbc.co.uk/arts/bigread/top100.shtml

イギリスの BBC までベスト 100 に手を出していました。
ただしこちらは読者投票らしく、ハリーポッターとかが上位に入っています。
これはパスでいいか・・・。


そもそもこういう芸術価値がかかわるものに順位を付けられるかどうかは分かりませんが、議論を起こさせるにはちょうどいいですね。
日本でも 10 年くらい前に福田和也氏が「作家の値うち」という本で、日本の作家の作品に点数を付けていました。
筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについては会社のウェブサイトをご覧ください。
著書
ソフトウェアグローバリゼーション入門
インプレス刊
『ソフトウェアグローバリゼーション入門』

達人出版会刊
『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』


現場で困らない! ITエンジニアのための英語リーディング
『IT英語リーディング』


アプリケーションをつくる英語
紙版
『アプリケーションをつくる英語』

電子版
『アプリケーションをつくる英語』
第4回ブクログ大賞受賞】