rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

11 1月

『ネットがあれば履歴書はいらない』 佐々木俊尚

一企業内でしか通用しない「ジェネラリスト」の時代は終わり、複数の企業から専門的な仕事を請ける「エキスパート」の時代が到来する。
そのような時代を生きるために必要なセルフブランディング(個人のブランド化)の方法について書かれている。

その方法とはタイトルにもあるようにネットを利用することだが、それには戦略が必要になる。
例えばプライバシーをコントロールしつつも自分の情報を思い切って出したり、ブログや Twitter で有益な情報を発信したりといった点である。
また、プロフィールサイトや情報収集サイトを利用して効率を上げることも勧められている。

本書は、まず今後の社会の姿(エキスパートの時代)を示し、次にその対応策(セルフブランディング)について解説し、最後に具体的なツールをいくつか紹介するという構成になっている。
ツールの紹介はアカウントの登録方法なども含めて非常に丁寧であり、日ごろインターネットを使用している人であれば、すぐ理解できるだろう。


個人的には、序盤の終身雇用の崩壊や非正規雇用の増加に触れている部分で、もう少し統計的(客観的)な情報があればよかったように感じる。例えば二十代の正規雇用・非正規雇用の割合の推移を示すグラフなどある。ただし統計があると逆に敬遠してしまう読者もいる可能性もあるので、トレードオフかもしれない。

また、91ページに「ブログであればコメント欄を設置しないもの一つの方法だ」とある。
ブログサービスによっては、コメントは受け付けるものの管理者が表示するかどうかを選択できるという機能が付いていることがある(例えばこの Livedoor ブログにもある)。この機能を使えばコメント欄を設置しておいても特に問題はないため、細かい話ではあるが、そういった点が書かれていてもよかったように思う。


私の感想としては、本書に強い共感を覚えた。
私自身少し前までフリーランスで翻訳者をしていたため、特定企業に依存せずに自己の専門技能を向上させ、その専門技能によって生きていくことが重要だと感じていたからである。
しかし具体的に個人として何をしたらよいか、またどのようなツールを使ったらよいかを明確に理解していたわけではなかったため、内容は非常に有益だった。

偶然にも本書の購入前日に、休眠させていた Twitter アカウントを復活させてブログとリンクし、佐々木さんのフォローを開始していた。そのため、Twitter の活用方法はタイムリーな話題であった。
さらには半年ほど前に、本書に登場する SBI ビジネスで佐々木さんの「マイネットワーク」に加えていただいていた。
個人的にはさまざまに縁のある本である。


ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術 (宝島社新書)ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術 (宝島社新書)
著者:佐々木 俊尚
販売元:宝島社
発売日:2010-01-09
おすすめ度:4.0
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10 1月

「科学の世界と心の哲学」 小林道夫

大学生の頃は哲学関係の本をかなり読みました。現代フランス哲学やら言語哲学やらと並び、科学哲学も好きでした。
実はまだこの本は前半しか読んでいません。非常に内容が濃くて面白かったので、途中ですが感想を書いてしまいました。

この本の前半は科学哲学の歴史の本質的な部分が簡潔にまとめられていて、アリストテレスからニュートンを経てアインシュタインに至るまでの流れがざっとつかめます。
しかし簡潔なわりに、挙げられている例は説得力があります。
例えば古典力学(ニュートン力学)からアインシュタインの相対論的力学への「進歩」を説明する部分があります。

ところで、アインシュタインの相対的力学による「質量」の定式は次のものである。

m = m0 / √(1 - (v2 / c2))
c は光速度、v は物体の速度、m0 は静止質量

これは、光速度 c を物体の速度 v に対して無限大に大きいとみなしてよい(我々の周りの物体はすべてそうである)ときには、v2/c2 は 0 として無視することができ、その場合は、相対論的力学の質量 m は古典力学の静止質量 m0 に帰着するということを教える。いいかえれば、相対論的力学は古典力学に対してメタ理論の役割を果たし、古典力学の妥当範囲(妥当条件)を明らかにする。このように、後なる相対論的力学は、先なる古典力学の妥当範囲を画定し、その点でまさに相対論的力学は古典力学に優越することが示されるのである。
ちょっと引用が長くなりましたが、このように具体的に簡単な数式を出して説明しているので理解が進みます。
ただし個別の用語(例えば「通約不可能性」)が詳しく解説されているわけではないので、ある程度の前提知識が要るかもしれません。

後半の「心の哲学」の部分はこれから読みます。


科学の世界と心の哲学―心は科学で解明できるか (中公新書)科学の世界と心の哲学―心は科学で解明できるか (中公新書)
著者:小林 道夫
販売元:中央公論新社
発売日:2009-02
おすすめ度:4.0
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3 1月

2010年の学生生活と専門職大学院

あけましておめでとうございます。

いよいよ 2010 年の 3 月に現在通っている産業技術大学院大学を卒業します。
卒業まで 3 か月間ほどありますが、実際の活動は 2 月 11 日の PBL 成果発表会までです。
(ちなみに私は中鉢 PBL の「ソフトウェア開発とマネジメント」に所属)
つまり、あとほぼ 1 か月です。

この社会人学生の 2 年間はやはり充実していたと思います。
授業や PBL(Project-based learning)活動を通じて実際の IT 関連知識を得られたことはもちろん大きかったです。
しかしそれと同等に、他の社会人学生と知り合えたという点が意義深かったと感じています。
異なる分野で活躍している人たちと、IT という共通の興味を介してつながりを持てたことは、今後の人生の中で貴重な財産になります。


産業技術大学院大学は「専門職大学院」であり、高度専門技術者を育成するために設立されました。
日本では、企業が大学新卒者を年に 1 回一括で採用し、企業内研修などによって育成するという方法が一般的かと思います。
そう考えると、専門職大学院に通ってスキルを磨く人というのは少数派であり、日本企業の慣例から見ると「異端」なのでしょう。

しかし、海外を見ると、社会人が働きながら大学などの公的教育機関を修了することは珍しくありません。
例えばアメリカでは「コミュニティーカレッジ」という公立の 2 年制大学があります。
卒業後に 4 年制大学に編入することもできますし、専門技能のコースを修了して就職することもできます。
地元の住民であれば、授業料は格安で、夜間に開かれるクラスも数多くあります。
私も高校卒業後にアメリカ留学したときに、コミュニティカレッジに入学しました。
昼間はやはり若い学生が多いのですが、夜間には社会人が多く、少し驚いたことを覚えています。

また、イギリスやオーストラリアでは、1 年制で主に職業直結の課程を提供している大学院が数多くあります。
こういった課程では「Master of Science in ○○」や「Master of Art in ○○」ではなく、「Master in ○○」(○○は専門名で、例えば Information Systems)という学位を出すことが多いようです。


上記のように企業内で人材を育てる日本企業では、その企業でしか通用しない知識やスキルしか身に付かないため、社員は転職や再就職が難しくなります。
この硬直的な雇用慣習のため、成長産業に人材が移動できず、日本経済停滞の一因になっているという意見も聞きます。
専門職大学院が活用され、高度な技能を身に付けた人が適材適所で働けるようになれば、日本経済の発展も期待できるでしょう。

産業技術大学院大学はぜひがんばってもらいたいですし、在学生(もうすぐ卒業生)としても何か貢献したいと思っています。
★最新著書★
アプリ翻訳実践入門 『アプリ翻訳実践入門』
筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについてはこちらをご覧ください。
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ソフトウェアグローバリゼーション入門
インプレス刊
『ソフトウェアグローバリゼーション入門』

達人出版会刊
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