rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

11 3月

グローバル英語のスタイル(7):名詞の単数と複数を正しく使う

名詞を単数形とすべきときに複数形、複数形とすべきときに単数形を使うと、意味が不明瞭になることがある。
そのため、間違った理解や誤訳という結果を招いてしまう。

Style Guide では次の例を挙げている。
× All the data items shown in Figure 7 have a numeric value.
これは、items が複数であるのに value が単数形であるため、矛盾している。ただしすべての items が同一の value を持っている場合は間違いではないが、次の文の方が明瞭である。
○ All the data items shown in Figure 7 have the same numeric value.
すべての items が複数の value を持つ場合は、次の文が正確である。
○ All the data items shown in Figure 7 have numeric values.
また、それぞれの item がそれぞれ 1 つの value を持つ場合は、次の文が正確である
Each data item shown in Figure 7 has a numeric value.
名詞に単数形と複数形がない日本語を母語にする者にとって、判断は難しい。
しかし、「the same」や「each」といった、指示対象を明確化する言葉を補うことで、誤解のリスクを低減することは可能である。



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「2.9」の内容に該当する。


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10 3月

グローバル英語のスタイル(6):the は何を指しているか明確な場合のみに使う

「the」という定冠詞は英語で非常によく使われるものの、英語を母語とするプロのライターでさえよく間違える。間違った使い方をすると読者を混乱させることになったり、誤訳の原因になったりするので注意が必要だ。

「the + 名詞」という形は、何を指しているか読者にとって明確な場合に使用する。以前に話題になったことのない名詞に the を付けると、読者は混乱してしまう。

Style Guide では次の例を挙げている。
I saw the dog on my way to work.
この場合、話す人と聞く人の間で以前に dog について話題になったことがあり、そのためどの dog を指しているか明確な場合にのみ the が使える。逆に言うと、初めてその dog を話題にする場合、a を使うことになる。

また Style Guide では別の例を挙げる。
× HIERLIST is a list that show the hierarchy.
例えばマニュアルのそれまでのページにこの hierarchy が出ていない場合、a hierarcy にする。ただし「the hierarchy that was specified for the organizational chart」など、that を使って対象を限定する場合、the が使える。

日本人にとっては the の使用が最も難しいのではないかと思う。上記のような原則は中学や高校の英文法で勉強しているはずだが、それでも判断に迷うことが多い。ただしネイティブでもよく間違えるとのことなので、最初は完璧を目指さなくてもいいかもしれない。
例に挙がっているように that などで指す対象を明確にすると the が使える。しかし、that で限定すればすべて the になるかと言うと、そうでもない。例えば、
  ・the product that the company sells...
  ・a product that the company sells...
の場合、前者は特定の製品を表し、後者は数ある製品のうちの 1 つを表している。



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「2.6」の内容に該当する。


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9 3月

グローバル英語のスタイル(5):標準的でない比較級と最上級は使わない

比較級 -er と最上級 -est が使える場合に、more と most は使わないようにする。
Style Guide では次のような例を挙げている。
× Can particles that are tens of thousands of times more narrow than a human hair penetrate human skin?
○ Can particles that are tens of thousands of times narrower than a human hair penetrate human skin?
同様に、more と most が適切な場合がある。同書の例を以下に挙げる。
× Gene-chip technology can detect one of the commonest genetic mutations with 100% accuracy.
○ Gene-chip technology can detect one of the most common genetic mutations with 100% accuracy.
どちらが標準的かは通常は辞書に記載されているが、ない場合は Web 上で検索すると判断できることが多い。
Google や Bing のフレーズ検索(" " で囲む)を行なってヒット数を比較するとよい。例えば最初の narrow の場合、Bing で「"times more narrow than"」で検索すると約 46 件、「"times narrower than"」で検索すると約 264 万件ヒットする。そのため、通常は「narrower」の形が使われていることが分かる。
ただし Web 検索では非ネイティブの英語が混じっているので注意が必要である。Google も Bing も「site:」を付けてドメイン検索にして範囲を限定した方がよいだろう。例えばイギリスに限定する場合は「site: uk」を付けたり、アメリカの大学に限定する場合は「site: edu」を付けたりして検索対象のドメインを指定する。具体的には「"times narrower than" site:uk」などと検索する。
Google の検索はたまにヒット件数の表示がおかしいことがあるので注意が必要だ。何ページかめくっていると、突然ヒット件数が大幅に変わることがある。



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「2.7」の内容に該当する。


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筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
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