rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

7 7月

書籍『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』が発売

本日7/7、著書『ソフトウェア・グローバリゼーション入門: I18NとL10Nを理解する』が達人出版会より発売されました。


https://tatsu-zine.com/books/software-g11n

ソフトウェアはグローバリゼーション(G11N)することによって初めて、さまざまな言語や地域のユーザーに使ってもらえるようになります。

G11Nを総合的に扱っている書籍は少なく、日本では15〜20年前に何点か出版されたのが最後です。本書は最新の動向も盛り込みながら、特に基本的な考え方を理解できるようにしてあります。

達人出版会は電子書籍専門の出版社で、書籍はPDFファイルとしてダウンロードできます。お支払いはクレジットカード(Paypal経由)で可能です。
また発売セールとして、当初は20%オフでご購入いただけます。

ちなみに紙版は未定です。
(紙版を出したいという出版社がいらっしゃったら達人出版会か私までご連絡ください)
5 7月

翻訳業界の歴史を知る本

翻訳業界はそれほど規模が大きくないため業界史が必ずしも記録されておらず、口伝えに聞くしかないこともある。

柴田耕太郎氏の『翻訳家になろう!』(2012年、青弓社)を読んだら、翻訳業界の歴史について比較的詳しい記述があった。業界の人間にとっては貴重な資料だと思う。タイトルからこの内容は想像できなかった。

例えば「翻訳団体」という節(p.19)では、日本翻訳連盟(JTF)について以下のように書かれている。
 それでも徐々に経済回復への兆しが見え始めた1981年、日本翻訳連盟がひっそりと立ち上げられた。当初のメンバーは翻訳学校の日本翻訳学院(現・フェローアカデミー)と中小の翻訳会社を合わせて、十数社だった。<略>だが84年になると、少しずつ実績を積み上げていこうと考える企業と、実力をつけるにはまず社会的な認知が必要と考える企業が対立し、後者のメンバーは同会を脱退して新たに日本翻訳協会を設立した。

日本翻訳協会(JTA)の存在は知っていたが、もともと一つだったことは初耳だった。ほかにもさまざまな翻訳会社の歴史が紹介されていて、初めて知る事実も多かった。



また、昨今はISO 17100に関連して、翻訳が専攻できる大学院が話題に出ることがある。

実は日本でも2000年代半ばに「日本翻訳大学院大学」という専門職大学院が検討された(文科省サイト)。これが結局ダメになったことは聞いていたものの、その理由までは知らなかった。しかし同書には詳しい経緯が記されていた。

それによると、大学院の設置者である「栄光ゼミナール」から柴田氏が要請を受け、申請書を書いて文科省に提出したが、それに対して修正意見が出たらしい。柴田氏は反論して再提出しようと思ったものの、当の栄光ゼミナールが申請を取り下げてしまったということのようだ。同書にはその申請書の内容も掲載されている。

それから約10年経った現在、翻訳が専攻できる大学院への期待が高まっているので、この資料は貴重だと感じる。



ちなみにGoogleブックスから一部内容が読める(こちら)ので、興味のある方は試しに閲覧してから購入すればよいだろう。
14 6月

日本翻訳連盟(JTF)の理事に就任

先日(6/7)、日本翻訳連盟(JTF)の総会で承認していただき、理事に就任しました。

JTFは翻訳会社と個人翻訳者の両者が参加している翻訳業界団体です。
私は「産業翻訳は、翻訳者による実作業だけでは完結せず、原文が書かれるところから訳文が使われるところまでのプロセス全体を対象にしなければならない」と考えています。そのため、両者が参加するJTFは大きな役割を果たすはずです。

理事としては特に「翻訳品質」に取り組みたいと思っています。
機械翻訳の精度が向上したとされている現在、「何をもって良いとするのか?」という品質基準の確立は翻訳業界にとって重要です。きちんとした品質基準がないと、翻訳成果物は一緒くたにされてしまう可能性があります。何とか日本語になっている程度の訳文も、時間をかけて丁寧に作った訳文も、十把ひとからげです(※)。
これは翻訳業界にとって悲しい事態ですが、顧客側にとっても不便が生じます。例えばお金がかかっても優れた翻訳が欲しいという場面で、選択肢を見極める手段がないのです。要するに品質基準がないと、翻訳業界自身も顧客も困るのではないかと感じます。

JTFでは今年度から「翻訳品質委員会」が始まりました。私も一委員として参加しています。
「標準スタイルガイド検討委員会」からの改称ですが、扱う範囲は広くなっています。翻訳品質の要素としては、スタイルのほかに、例えば「用語」や「流暢さ」といった要素があります。こういった品質全体を視野に入れるつもりです。

翻訳品質委員会としては、まず翻訳品質のガイドラインの策定に取り組む予定です。
ガイドラインといっても、業界全体で均一の品質を目指そうというわけではありません。何かしら「目安」や「基準」を持とうという程度です。
例えば、プロの翻訳サービスをまったく使ったことのない新規顧客がいた場合、どの程度やってもらえるのかという目安がないと、怖くて発注できないかもしれません。「無料の機械翻訳と何が違うの?」という質問にも明確に答えられません。
また業界で品質の目安があると、例えば翻訳会社Aは「うちは目安に加え、こういうことをしています」、翻訳会社Bは「うちは目安にこれとこれを追加しているので、その分料金が高いです」といったサービス展開ができます。要するに、差別化の基準として使えるわけです。
このように、ガイドラインがあると、業界全体として新規顧客を獲得したり、各翻訳会社が自社の特徴を出す手段となったりするのではと期待しています。結果として翻訳業界が活性化すればうれしいことです。
ただし、この辺りは個人的なイメージで、まだ委員会として何かを決めたわけではありません。

とりあえずの理事任期は1年ですが、上記の通りまずは「翻訳品質」について取り組みたいと考えています。


※ ちなみにISO 17100は翻訳の「サービス」が対象であり、翻訳成果物(プロダクト)そのものの品質を扱っているわけではありません。翻訳成果物については、今年からISO 21999として議論が始まります。
筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについては会社のウェブサイトをご覧ください。
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著書
アプリケーションをつくる英語
紙版
『アプリケーションをつくる英語』

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『アプリケーションをつくる英語』
【第4回ブクログ大賞受賞】