rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

19 12月

2/4にセミナー「JTF翻訳品質評価ガイドラインを活用する」を開催

来年2019年2月4日(月)に「JTF翻訳品質評価ガイドラインを活用する」というタイトルでJTF翻訳品質セミナーが開催されます。場所は東京です。

ウェブサイトはこちら:
https://www.jtf.jp/tq/translation_quality_seminar.html

タイトルの通り、今年11月に公開した「JTF翻訳品質評価ガイドライン」の活用方法に関する内容になります。大きく3部での構成となります。
・ガイドライン全体を説明する
・企業での利用予定事例を紹介する
・演習形式で実際に評価してみる

JTF会員の申し込みは12/19から始まっています。JTFから届いたメールをご確認ください。
会員以外の申し込みは12/26から開始となっています。上記ウェブサイトからお申し込みください。
21 11月

JTF翻訳品質評価ガイドラインを公開しました

日本翻訳連盟(JTF)から「JTF翻訳品質評価ガイドライン」が公開されました。

会員非会員を問わずどなたでも入手可能です。
ウェブサイトはこちら: https://www.jtf.jp/tq/translation_quality_guidelines.html
ガイドラインにはクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY)が設定されているので、著作権者などの表示という条件に従う限り、複製や改変して利用できます。
(著作権が放棄されているわけではありません)

なお、同ガイドラインに関するセミナーを2019年2月4日に開催します。
詳細はこちらのページでお知らせする予定です:
https://www.jtf.jp/tq/translation_quality_seminar.html

 ■ ■ ■ ■ ■

詳細はガイドラインを読んでいただきたいのですが、うまく説明できていないかもしれない部分について、個人的にざっくばらんに書いてみたいと思います。

◆ 経緯
これまで産業翻訳業界で「品質」について正面から議論することはあまりありませんでした。というのも、産業翻訳であっても品質の良し悪しの判断は主観的な部分を排除できないからです。翻訳の発注側も受注側も、個人としてはさまざまな経験(読書歴や業界歴など)を持っています。だから議論を始めても「こう思う人もいれば、ああ思う人もいる。仕方ない」で終わってしまう場面もよく目にしました。
しかし産業翻訳はビジネスであり、成果物の品質の改善が求められます。改善には、品質がどの程度であるのかという(可能な限り客観的な)測定や評価が必要でしょう。いつまでも「仕方ない」で終わらせるわけにはいきません。
そこでJTFは業界団体として、翻訳品質評価ガイドラインを作ることになりました。2015年に検討を開始し、ようやく今年完成したわけです。

◆ガイドラインが考える「品質」
同ガイドラインでは、ものさしそのものを1本提示し、さあこれであらゆる翻訳を測ってくれ、とやっているわけではありません。あらゆる翻訳を1つの基準で測るのは無理です。
そうではなく、「適切なものさしを作って使う方法」を示しています。
まず、事前(翻訳前)に受発注者間で合意してものさしを作ります。当然、専門分野や個別の条件によって異なるものさしができ上がるでしょう。発注者(クライアント)は自分が期待する品質が何であり、どの程度であるのかをものさしとして示せます。他方、受注者(翻訳会社や翻訳者)は何を期待されているのかがわかります。
そして事後(納品後)にそのものさしで品質の良し悪しを測定するわけです。
つまり同ガイドラインが考える「品質」とは、「受発注者間の事前合意をどの程度満たすか」ということになります。

◆特長
・国際的な方法を踏襲
本ガイドラインでは、翻訳品質評価面で進んでいる欧米の考え方をベースにしています。たとえばMQM(欧州委員会で品質評価に利用)です。
翻訳は国際ビジネスなので、日本国内だけで通用する評価方法を作っても仕方ありません。
本ガイドラインの方法は、グローバルなビジネスの場面でも違和感なく受け入れられるはずです。

・日本語独自の項目を追加
そうは言っても、ヨーロッパ言語をベースにした評価手法だと、日本語にうまく合わないことがあります。
たとえば日本語では「同音異義語」のエラーがよく発生します。こういった日本語に特徴的なエラーも扱えるようにしてあります。

・ドキュメント・タイプ別重み例を提示
前述のように、ものさしは専門分野で違ってきます。
翻訳会社で品質評価を担当している専門家何人かに聞き、ドキュメント・タイプ別(専門分野別)にエラー点数の重み例を提示しています。
あくまで例ですが、これを参考にすれば、翻訳の案件やプロジェクトに応じたものさしを作るのも(少しは)楽になるはずです。


本ガイドラインはこれで完成というわけではなく、利用者の皆さまからのフィードバックをいただいて改善を重ねたいと考えています。

以上です。
2 11月

機械翻訳で翻訳者をトレーニング

機械翻訳(MT)の発達に伴い、MTを活用する仕事も増えている。いわゆるポストエディットの仕事である。
しかし一方で、ポストエディットは絶対にしたくないと考えている翻訳者も多い。MTアレルギーのような反応をして、触ることすらしない人もいる。

私自身もポストエディットの道は考えていないが、機械翻訳自体には興味がある。
それで先日、MTが何か翻訳者の役に立たないかと考えていたところ、翻訳者のトレーニングに使えるのではないかと思った。
MTシステムを(コーパスなどで)トレーニングするのではなく、翻訳者をMTシステムでトレーニングするのである。
具体的に言うと、翻訳者が人間翻訳した後に、その訳をMT出力と見比べるのだ。自分の訳文がMTよりどのくらい優れているのか比較するのである。
重要なのは人間翻訳した「後」という点だ。「前」に見てしまうとポストエディットと変わらないし、MT出力に引きずられて良い訳文が作れないことがある。

自分自身で少し試してみたが、これは多少なりとも鍛えられそうな気がする。
訳文がMT出力とあまり変わらなければ、「俺の仕事はゼロ円翻訳に近いのか……」と反省して訳文の改善に取り組める。ここがトレーニングの中心だ。
逆にMT出力より断然優れていたら「よし、人間翻訳の価値を示せた」と安心できる。最近MTの発達が喧伝されるので、MTがすぐ背後に迫っていると不安を感じることがある。しかしMTとの距離をきちんと測れれば、健やかな気分で仕事に向き合える(と思う)。

さらに副次的なメリットがある。MTは人間がうっかりやるような見落としをまずしない点だ。
たとえば数字だ。英語原文に500000とあるのに日本語訳文で「5万」としてしまった場合でも、あとでMT出力を見て「50万」と出ていれば、間違いに気づく。
さらに自分のケースだが、原文に「through」と書いてあったのを「though」と見間違えてしまった。うーん、うーん、と考え込んでいたところ、MT出力を見ると「…を通して」などとあったので、自分の見間違いに気づいた。
翻訳技術はまずまずだが、目の良いアシスタントを無料で雇えるようなものだ。高齢化社会の福音である。

もう少し自分で使ってみて、どのような鍛錬効果があるか考察してみたいと思う。



なお、「MTトレーニング」を試すには、MTが統合されている翻訳支援システムを使う必要がある(無料のならGoogle Translator ToolkitやOmegaTなど)。
問題は、翻訳支援システムは翻訳メモリー(TM)とも一体化している点だ。TMを使う際、一般的には1文(セグメント)単位で翻訳する。そのため、1文としては妥当な訳が作れても、文章全体としてつながりのおかしな訳になることがある。TMで1文ばかりに目が行っていると、全体を把握できなくなってしまうのだ。
TMと一体化したシステムでMTトレーニングする際、特に駆け出しの翻訳者はこの「1文病」に注意が必要だと思う。
★6/22発売の翻訳書★
血と汗とピクセル 『血と汗とピクセル』
筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについてはこちらをご覧ください。
Twitterアカウント
RSS フィード
著書
アプリ翻訳実践入門
『アプリ翻訳実践入門』


ソフトウェアグローバリゼーション入門
インプレス刊
『ソフトウェアグローバリゼーション入門』

達人出版会刊
『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』


英語語源が魔術に変わる世界では
『英語語源が魔術に変わる世界では』


現場で困らない! ITエンジニアのための英語リーディング
『IT英語リーディング』


アプリケーションをつくる英語
紙版
『アプリケーションをつくる英語』

電子版
『アプリケーションをつくる英語』
第4回ブクログ大賞受賞】