rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

29 5月

Udacityの「Localization Essentials」

Udacityが「Localization Essentials」という無料講座を開始した(2017年5月)。
UdacityはCourseraやedxなどと同じくMOOCであるが、Googleなどの企業が関わっていて実践的な講座が多いことが特徴だ。
講座へのリンク:

 Localization Essentials
 https://www.udacity.com/course/localization-essentials--ud610

 


ローカリゼーション(L10N)はソフトウェア開発で、かやの外に置かれがちだ。L10Nは翻訳の比重が大きく、翻訳会社に外注されることが多い。そのため開発者が興味を持つ機会が限られてしまう。そのようなL10NがUdacityで扱われることは、L10N関係者にとっては意義深い。

講座の全レッスンを聴講してみたが、確かに基礎は押さえられていたと思う。すでにソフトウェアL10Nに携わっている人にとっては、知識を整理するのにちょうどよい内容ではないか。Google社内のL10Nフローや担当者インタビューも入っている。
ただ、まったくL10Nに関わったことがない人だと、付いていくのは少々厳しいという印象を受けた。紹介されているプロセスが複雑で、ツールの種類も多い。

各レッスンの内容は以下の通りである:

・レッスン1:Key Concepts
L10N業界の現状、L10Nの歴史、GoogleにおけるL10Nなど

・レッスン2:Content Types
L10Nの対象となるコンテンツ種類とその特徴
マーケティング資料、オンライン・ヘルプ、字幕/吹き替え、ユーザー・インターフェイス、SEO/SEM

・レッスン3:Profiles and Skills
Google社内におけるL10Nのフローや担当者
Google社内担当者のインタビュー

・レッスン4:Processes
4段階のプロセス
製品準備(I18Nなど)、L10Nプロジェクト準備、プロジェクト実施、品質保証

・レッスン5:Tools
L10Nで使うツール
プロジェクト管理ツール、TM、用語、QAツール
Google Translator Toolkit(GTT)のデモ
(※ 私が聴講したときはデモ用ファイルがダウンロードできなかった)


前述のように、すでにL10N業界にいる人は知識を整理するのにちょうどよい内容だと思う。無料でもあるし、試してみてはどうだろうか。
25 5月

アメリカの翻訳通訳企業の統計

Slatorの記事で、アメリカの翻訳通訳関連企業の統計データが紹介されている。

 US Language Industry Booms, Doubles Headcount Within 7 Years
 https://slator.com/industry-news/us-language-industry-booms-doubles-headcount-within-7-years/

従業者数、企業数、平均賃金などが分かりやすいグラフになっているので、読みやすい。翻訳業界の人であれば興味を抱きそうな情報ばかりだ。

なかでも特に印象深かったのは、規模(従業員数)である。グラフを引用する。


(引用元: https://slator.com/industry-news/us-language-industry-booms-doubles-headcount-within-7-years/ 2017-05-25時点)

2,494社ある翻訳通訳関連企業のうち、1,943社が従業員が1〜4人らしい。実に8割近い。
個人が法人化しているようなケースが多いのだろう(私の会社も同じだが……)。
もし翻訳業界で「平均」を調べた場合、こういった小規模企業の実体が強く影響しそうだ。

ヨーロッパの翻訳業界調査によると、企業規模が小さいほど機械翻訳などテクノロジーの導入率が低いらしい。
同じ翻訳会社と言っても、小規模企業と大企業とでは、やっている仕事の内容に違いがある。
「平均的な翻訳会社像」というのは想定しない方がよいのかもしれない。
25 5月

シンガポールの国家翻訳委員会

シンガポールでは2014年に国家翻訳委員会(National Translation Committee)という組織が立ち上がったらしい。


リンク: https://www.mci.gov.sg/portfolios/public-comms/what-we-do

まず政府内で翻訳のノウハウを蓄積し、それを民間に移転するようなことを計画しているようだ。
また、言語としては中国語、マレー語、タミル語の専門家が参加して改善を図ろうとしている。シンガポールは多民族国家なので、そういった点を考慮しなければならないのだろう。

先日この委員会の人と話す機会があったのだが、シンガポールの翻訳ビジネスは個人や中小企業が多く、日本のように大きな翻訳会社はないという話だった。だから日本の翻訳業界の現状は興味深そうに聞いていた。

翻訳業界の状況は国によって違うだろうが、多言語が関わるという翻訳サービスの性質上、今後は国際的なルールや基準が広がるかもしれない。例えば翻訳品質評価では、DQFとMQMが国際標準に推されているという噂も聞く。
日本の翻訳業界は海外の業界トレンドから比較的隔絶されているような印象がある。これが良いとか悪いとかは一概には言えないが、少なくとも情報収集は積極的にしておきたい。
筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについては会社のウェブサイトをご覧ください。
Twitterアカウント
著書
現場で困らない! ITエンジニアのための英語リーディング
『IT英語リーディング』


ソフトウェア・グローバリゼーション入門:I18NとL10Nを理解する
『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』


アプリケーションをつくる英語
紙版
『アプリケーションをつくる英語』

電子版
『アプリケーションをつくる英語』
第4回ブクログ大賞受賞】