rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

3 6月

『Machine Translation』(Poibeau著)

Thierry Poibeau著『Machine Translation』(MIT Press、2017年)(英語版のみ)



2017年に出版された機械翻訳の解説書。新しいのでニューラル機械翻訳(NMT)まで扱っている。
技術面というより、歴史的な流れに主眼をおいて説明している。そのため技術者でなくてもあまりストレスを感じず読み進められる(ただし統計翻訳で若干の数式が登場)。
日本で既刊の機械翻訳本は技術者向けのものが多いので、その点では貴重だ。



同書第3章を参考に、簡単に機械翻訳の歴史をまとめるとこうなる。

・〜1940年代:
 研究者は自動翻訳について考えてはいたが、実現方法がなかった。

・1940〜1960年代半ば:
 コンピューターが登場し、動く機械翻訳システムが作られた。期待は大きかった。

・1965-66年:
 機械翻訳の実現に否定的な「ALPACレポート」がアメリカで出され、研究費が出なくなった。

・1966〜1980年代末:
 英米圏で研究は下火だった。ただし計算言語学で進歩があり、構文解析などが進んだ。
 一方、欧州や日本では研究は継続されていた。1980年代に日本の長尾真氏による「用例ベース」(Example-based)の機械翻訳が登場し、第8章はまるまるこの解説に当てられている。

・1990年代〜:
 統計とバイリンガル・コーパスを使ったアプローチが登場した。基礎になっているのは1980年代後半〜90年代初頭に行われたIBMでの研究(同書内でも詳しく解説している)。

・2010年代半ば〜:
 ディープラーニングに基づく新アプローチが登場(ニューラル機械翻訳のこと)。



同書でやや残念なのは、2017年に出版されたため、その直後に一気に普及したニューラル機械翻訳の解説が少ないという点だ。そのため、最新の機械翻訳だけを集中して知りたいという人にとっては物足りないかもしれない。
ただし歴史全体を知るには良い書籍であり、Kindle本で1,400円弱、洋書でも1,700円弱(2018年6月時点)なので、比較的買いやすい。

21 5月

最新の「Microsoft Writing Style Guide」が無料で公開

つい最近知ったのですが、2018年2月にマイクロソフトが英語スタイルガイド「Microsoft Writing Style Guide」を無料公開していたようです。

Microsoft Writing Style Guide
https://docs.microsoft.com/ja-jp/style-guide/welcome/

ms-styleguide

これまでIT分野の英語スタイルガイドとして重要な位置を占めてきた『Microsoft Manual of Style』の後継となるようです。
The Microsoft Writing Style Guide replaces the Microsoft Manual of Style, a respected source of editorial guidance for the tech community for more than 20 years.

従来の『Microsoft Manual of Style』は2012年に第4版が出たので、6年ぶりの更新となるようです。
また同書は有料で販売されていましたが、「Microsoft Writing Style Guide」はウェブ上で無料公開となりました。

古い『Microsoft Manual of Style』では、全般的なスタイル解説に加え、個々の単語の使い方を解説するという特徴を持っていました。
新しい「Microsoft Writing Style Guide」も同様に、スタイル全般 + 個々の単語の解説という構成になっています。
たとえば「abort」という単語についてはこう解説があります。
Don't use abort in content or user experiences for a general audience. If abort appears in a UI that you can't edit, use an alternative term to describe the customer action.

要するに、abortという単語は一般向けには使わず、UIに出てきたら言い換えよということです。言い換え候補として以下が挙がっています。
  • End: use for communications and network connections.

  • Close: use for apps and programs.

  • Stop: use for hardware operations.

  • Cancel: use for requests and processes.

このように、1つの単語についてもかなり解説が詳しいので、英語を書くのに悩んでいる日本人にとっても大いに参考になるはずです。



昨年、Googleが開発者向け文書のスタイルガイドを公開しました。
これはこれで簡潔にまとまっていて便利なのですが、やはり英語ライティングのリソースに関してはマイクロソフトに一日の長があります。
「Microsoft Writing Style Guide」は無料でアクセスできるので、英語を書く際に活用してみてはいかがでしょうか。

20 5月

「ITエンジニアが芭蕉と学ぶ英語構文」の第5〜6回

連載記事「ITエンジニアが芭蕉と学ぶ英語構文」の第5〜6回が公開されています。

basho-title

芭蕉たちは栃木市の「室の八島」を経て、日光東照宮を参詣しています。

【第5回】可能(5)と室の八島
https://globalization.co.jp/english-with-basho/05/

取り上げている英語構文: [無生物主語] [be動詞] available (at/in/for [場所/物]).

【第6回】不可能(1)と日光
https://globalization.co.jp/english-with-basho/06/

取り上げている英語構文: [無生物主語] fail to [動詞].


以上です。
★6/22発売の翻訳書★
血と汗とピクセル 『血と汗とピクセル』
筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについてはこちらをご覧ください。
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