rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

20 2月

世界で最も革新的な企業(2010 年版)

Fast Company 誌が「世界で最も革新的な企業」の 2010 年版を発表しています。

詳しくはリンク先を見てください。
http://www.fastcompany.com/mic/2010

ここで一覧になっている上位 50 社を国別に挙げると・・・

アメリカ 36
中国   4
インド   2
イギリス 1
ドイツ   1
フランス 1
オランダ 1
スイス  1
台湾   1
韓国   1
日本   1

アメリカが 1 位であるのはそれほど不思議ではありませんが、それにしても上位の 7 割以上がアメリカ企業です。
アメリカの雑誌が集計している点を割り引いても、圧倒的です。

驚くのは、中国が 2 位、インドが 3 位という点でしょうか。どちらも日本より多い数の企業が入っています。
(ただし分野別ランキングで、「中国」「インド」があるので、その影響かもしれません)

中国とインドでどのような企業が入っているかと言うと・・・

・中国
 5 位 Huawei: 通信機器
16 位 BYD: 自動車、電池
29 位 Alibaba: B2B オンライン マーケット
42 位 Huayi Brothers: 映画/テレビ番組制作

・インド
22 位 Indian Premier League: クリケット リーグ運営
39 位 VNL: 太陽電池式の携帯電話基地局網

中国は国際的な企業が多いですが、インドは主に国内市場をターゲットにしている企業のようです。

ちなみに同じアジアの台湾と韓国は・・・

・台湾
31 位 HTC: 携帯電話

・韓国
36 位 Samsung: 家電、メモリ、携帯電話

最後に日本は・・・

・日本
41 位 ファースト リテイリング: 衣料品(ユニクロ)

日本企業は、上位 50 社ではファースト リテイリングのみです。
上位 50 社以外でも分野別ランキングが出されていて、家電分野でオリンパスが 9 位になっています。
ゲーム分野で「Muteki Corp.」とあったので、日本の会社かと思ったらアメリカ企業でした。
日本が得意だと思われていた家電やゲームの分野でも、台湾や韓国の企業が入る一方、日本企業に革新性があると認められていないようです。

(リンク先を見ると、「SPONSORED BY HITACHI」となっています。これは一体何かの皮肉なのか・・・)
1 2月

個人で始める製造業: クリス・アンダーソンの記事について

『フリー』の著者であるクリス・アンダーソンが Wired に記事を書いています。

In the Next Industrial Revolution, Atoms Are the New Bits
http://www.wired.com/magazine/2010/01/ff_newrevolution/

要約すると以下のような内容です。
----------
この 10 年間で、インターネットのおかげで出版や放送を行なう人が増え、「ビットのロングテール」現象が起こった。
今後 10 年間で、これと同様なことが「製造業」でも発生する。「原子(atom)のロングテール」と言うべき現象である。
アイデアを持つ人であれば、個人でモノを製造して販売できるようになる。

この現象は 2 つの要因に後押しされる:

(1)安価で高性能なプロトタイプ製作ツールが普及する
例えば「MakerBot」は、3 次元プリンターを 1,000 ドル未満で販売している。これはプラスチックで立体を形成する機械である。

(2)中国の工場にカスタム製品を発注できる
インターネット経由で注文を受け、クレジットカードなどでの支払いが可能な企業が増えている。「Alibaba.com」などを見るとそういった工場は見つかる。


アイデアから販売までの手順:

1. アイデアを出す
すでに特許が出てないか確認するした方がよい。

2. デザインする
Blender などの無償のツールで 3 次元のデジタルモデルを製作する。

3. プロトタイプを作成する
MakerBot などの 3 次元プリンターでプロトタイプを作成する

4. 製造する
小規模ならガレージでもよいが、世界を目指すなら中国に発注する。

5. 販売する
オンラインで消費者に直接販売するか、E コマースサイトを利用する。
----------

技術の発展により、それまで巨大な資本を持つ企業にしかできなかったことが個人でできるようになりました。
出版や放送の例を挙げるなら、ブログや Youtube の動画です。これらはビット(電子データ)を扱うため、容易にコンピュータで処理したりネットワークで伝送したりできます。
コンピュータの低価格化やネットワーク帯域の増大によって、資本の少ない個人が出版業や放送業を始められるようになったのです。

上記の通り、アンダーソンは今後 10 年で同じ傾向が物理的なモノにまで及んでくると言っています。つまり、個人で製造業を始められるということです。
ただ注意したいのは、町工場に代表されるような、いわゆる「ものづくり」的な製造業ということではありません。
個人が担うのは、アイデアやデザインといった知識集約型の部分であり、実際の製造という資本集約型(場合によっては労働集約型)の部分ではないのです。
アンダーソンは Jawbone というノイズキャンセラーを製造している企業を例に挙げています。ここは工場は持たず、製造はすべてアウトソーシングしているようです。

アンダーソンの予想が的中するなら、GDP における製造業の割合が大きい日本は、不利な立場に立たされるでしょう。
ブログなどの個人メディアの発展により、収益を脅かされる新聞社や出版社と同じ立場です。
アイデアやデザインといった知識集約型の部分をいかに伸ばせるかで、今後の日本経済の行く末が決まるような気がします。
(Apple の台頭を見れば、もう始まっているのでしょうけど・・・)

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11 1月

『ネットがあれば履歴書はいらない』 佐々木俊尚

一企業内でしか通用しない「ジェネラリスト」の時代は終わり、複数の企業から専門的な仕事を請ける「エキスパート」の時代が到来する。
そのような時代を生きるために必要なセルフブランディング(個人のブランド化)の方法について書かれている。

その方法とはタイトルにもあるようにネットを利用することだが、それには戦略が必要になる。
例えばプライバシーをコントロールしつつも自分の情報を思い切って出したり、ブログや Twitter で有益な情報を発信したりといった点である。
また、プロフィールサイトや情報収集サイトを利用して効率を上げることも勧められている。

本書は、まず今後の社会の姿(エキスパートの時代)を示し、次にその対応策(セルフブランディング)について解説し、最後に具体的なツールをいくつか紹介するという構成になっている。
ツールの紹介はアカウントの登録方法なども含めて非常に丁寧であり、日ごろインターネットを使用している人であれば、すぐ理解できるだろう。


個人的には、序盤の終身雇用の崩壊や非正規雇用の増加に触れている部分で、もう少し統計的(客観的)な情報があればよかったように感じる。例えば二十代の正規雇用・非正規雇用の割合の推移を示すグラフなどある。ただし統計があると逆に敬遠してしまう読者もいる可能性もあるので、トレードオフかもしれない。

また、91ページに「ブログであればコメント欄を設置しないもの一つの方法だ」とある。
ブログサービスによっては、コメントは受け付けるものの管理者が表示するかどうかを選択できるという機能が付いていることがある(例えばこの Livedoor ブログにもある)。この機能を使えばコメント欄を設置しておいても特に問題はないため、細かい話ではあるが、そういった点が書かれていてもよかったように思う。


私の感想としては、本書に強い共感を覚えた。
私自身少し前までフリーランスで翻訳者をしていたため、特定企業に依存せずに自己の専門技能を向上させ、その専門技能によって生きていくことが重要だと感じていたからである。
しかし具体的に個人として何をしたらよいか、またどのようなツールを使ったらよいかを明確に理解していたわけではなかったため、内容は非常に有益だった。

偶然にも本書の購入前日に、休眠させていた Twitter アカウントを復活させてブログとリンクし、佐々木さんのフォローを開始していた。そのため、Twitter の活用方法はタイムリーな話題であった。
さらには半年ほど前に、本書に登場する SBI ビジネスで佐々木さんの「マイネットワーク」に加えていただいていた。
個人的にはさまざまに縁のある本である。


ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術 (宝島社新書)ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術 (宝島社新書)
著者:佐々木 俊尚
販売元:宝島社
発売日:2010-01-09
おすすめ度:4.0
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筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについては会社のウェブサイトをご覧ください。
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著書
現場で困らない! ITエンジニアのための英語リーディング
『IT英語リーディング』


ソフトウェア・グローバリゼーション入門:I18NとL10Nを理解する
『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』


アプリケーションをつくる英語
紙版
『アプリケーションをつくる英語』

電子版
『アプリケーションをつくる英語』
第4回ブクログ大賞受賞】