rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

13 6月

アゴラと Livedoor に「英語 2.0」の記事が掲載

私が書いた記事がアゴラに掲載されました。
アゴラから転載される形で、Livedoor ニュースにも載っています。

 英語 2.0: TOEIC とネイティブを超えて
 http://agora-web.jp/archives/1031158.html
 http://news.livedoor.com/topics/detail/4820899/

比較的好意的な意見が見られたのは、やはり同じような問題意識を持っている人が多いということでしょうか。



いくつか補足を……

今回 TOEIC について批判的な意見を述べましたが、何から何まで否定するつもりはまったくありません。リスニングとリーディングの能力を測る上ではやはり TOEIC は有用だと思います。年に何度もテストがある、受験料が手ごろ、他の受験者との比較が簡単にできるといった点は便利です。
TOEFL や IELTS はスピーキングやライティングも測定できる点はいいのですが、例えば受験料が高かったり受験地が限られていたりという点は利便性に欠けます。
どのテストにもメリットとデメリットはありますが、今回特に TOEIC(というより TOEIC 偏重の風潮)を批判したのは、その弊害が大きいのではないかと感じているからです。すなわち、「発信能力」が疎かにされてしまうという弊害です。

TOEIC は容易に受験できる上に、他の受験者との数値比較が可能であるという点で優れています。そのため就職や昇進の目安とされるのでしょう。しかしそれで測定できるのは、やはり「受信能力」だけである点に注意すべきかと思います。



またネイティブ偏重についても批判しました。
これも、「ネイティブ表現を身に付けるな」と言っているわけではありません。時間があるなら勉強すればいいでしょうが、ビジネスパーソンやエンジニアは英語学習ばかりに時間をかけられないでしょう。ネイティブのような英語にこだわっていたら、いつまで経っても発信はできません。

また、非ネイティブの英語話者が増える中で、自分がネイティブ表現を使っても、相手がそれを理解するとは限りません。難しいネイティブ表現はむしろコミュニケーションを阻害するケースがあるのです。

必要なのは、コミュニケーションの「道具としての英語」という考え方だと思います。
具体的には、例えば「Globish」という英語があります。これは、使う単語を 1,500 に限定した上で、ジョークや比喩を避けて意思伝達のみを目的とする英語です。Globish 以外にも非ネイティブが習得しやすい英語は提唱されています。



今回の記事は理念的な面が大きかったので、そのうち具体的な方法についても意見を述べたいなと思っています。
11 6月

リンクを「ブランド化」する

Twitter を使っている人であれば、「短縮 URL」を頻繁に目にするだろう。例えば bit.ly や ow.ly といったドメインだ。
Twitter は 140 文字という制限があるため、URL が長いとそれだけで制限いっぱいになってしまう。そのため長い URL を短縮 URL に置き換えるのである。機能は単純で、短縮 URL にアクセスすると、短縮前の長い URL に転送されるだけのことである。

これまで、Twitter 社自体は短縮サービスを提供せず、bit.ly 社などの外部企業が提供してきた。つい最近、Twitter 社が自分で短縮サービスを提供するというニュースが報じられ、bit.ly 社は今後存続が厳しくなるのではという憶測も出ている。


しかし、この短縮サービスは別の場面で活用できるのではないかと考えている。簡単に言うと、リンクを「ブランド化」できるのだ。
これは、短縮ではなく転送の機能と、独自ドメインとを組み合わせて実現する。

以前、次のような記事を書いた。

 自分用 URL 短縮サービスを作る: Yourls 編
 続・自分用 URL 短縮サービスを作る: Bit.ly Pro 編

これらはいずれも、自分の独自ドメインで URL 短縮サービスを作る方法を解説している。前者は自分でサーバを用意してソフトウェアをインストールして実現する方法、後者は外部インフラを利用して実現する方法である。

この記事では、簡単で手間がかからないのは後者の方法(Bit.ly Pro)を前提として話を進める。



独自ドメインを使うとどのような良いことがあるのだろうか?
Bit.ly Pro では当該ユーザーしか URL を短縮できないため、そのドメインの短縮 URL は、そのユーザーが作成(短縮)したことが分かる。つまり、署名のような効果があるため、リンクをブランド化できるのである。また自分に関するすべてのリンクに、独自ドメインの短縮 URL を使うようにすれば、リンク先が自分の情報であることを他人に明示できる。

ほかの特長としては、セキュリティ上の安心感がある。短縮 URL は転送先が分からないため、犯罪目的に使われることもある。つい数日前にも、偽サイトへの転送に使われたというニュースがあった。独自ドメインでブランド化されていれば、閲覧者も安心してクリックできる(もちろん、作成者が信頼できる人物であることが前提だが)。



例として、私自身に関する情報を独自ドメイン(nishino.me)でまとめてみた。
リンク先はすべて別々のドメインである。元のリンクが非常に長いものもある。またスラッシュ以下のカスタム文字列(profile_ など)は、内容が分かりやすいように作成してある。

・プロフィール
http://nishino.me/profile_

・ブログ
http://nishino.me/myblog_

・母校である産業技術大学院大学(AIIT)の地図
http://nishino.me/aiitmap
 → 元 URL は長い

・以前書いたローカリゼーション解説のファイル(PDF)
http://nishino.me/whatsl10n

・10 年前に書いた卒論(PDF)
http://nishino.me/mythesis
(今読むと非常に恥ずかしい…)

このように、短縮サービスと独自ドメインを組み合わせることで、リンクをブランド化して活用できるのである。

:ところどころアンダーバー( _ )が入っているのは、bit.ly のインフラを共有しているからである。実は「nishino.me」は「bit.ly」の部分を置き換えただけで、スラッシュ以下は bit.ly と共通なのだ。そのため誰かがすでに使った文字列は使えない。



佐々木俊尚氏の『ネットがあれば履歴書はいらない』は、これからの時代のセルフブランディング法を解説した名著だ。

同書には記載されていないが、「リンクのブランド化」も、このようなセルフブランディングの一方法として活用できるかもしれない。


ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術 (宝島社新書)ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術 (宝島社新書)
著者:佐々木 俊尚
販売元:宝島社
発売日:2010-01-09
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

4 6月

Google Apps Marketplace はこれからか

Google Apps Marketplace」が 3 月 9 日に公開されてから約 3 か月が経過した。公開当初は日本でもニュースになったが、その後は大きな話題にはなっていないようである。

Google Apps Marketplace とは、簡単に言えば「Web アプリケーション提供のインフラ」である。SaaS 型アプリケーション スイートである Google Apps と連携させ、Apps のユーザーがシームレスにサードパーティの Web アプリケーションを使えるようにする仕組みだ。
Web アプリの提供会社は、Google Apps のユーザー向けにアプリを販売できるのである。


◆ 特徴

・Google Apps に統合できる
 → ユーザーは Apps の画面からシームレスにサードパーティ アプリを起動できる

・Google Apps のユーザー数は 2,500 万以上、採用企業は 200 万以上
 → ユーザーベースが大きいため、収益化の可能性が高まる

・自社サーバーを使用可能
 → Google App Engine である必要はない。もちろん使ってもよい

・全く新規で開発する必要がない
 → すでにある Web アプリと連携できる

・利用料はそれほど高くない
 → Marketplace への登録費用は初回の 100 ドル。Apps と統合する場合、売上の 20% を Google に支払う

大きな特徴として、すでに SaaS でビジネス向け Web アプリを提供する企業は、一から開発しなおす必要がない点が挙げられる。連携部分などの開発で対応できる。小規模なソフトウェア会社でも、多数のユーザーにリーチできるというメリットがある。Google App Engine などを使えばサーバーコストも抑えられる。売上の 20% が高いと感じるかもしれないが、相当数のユーザーにリーチできることを考えれば妥当な気がする(Android や iPhone は 30% 取られる)。


◆ Marketplace の現状

5 月中旬に調べたところ、公表されているアプリケーション数は 500 ほどであった。ただし CRM や ERP のような大規模なアプリケーションは数十程度で、ツールに近いアプリ(メール管理など)が数百点と大半を占めている。詳しくは実際の Marketplace でカテゴリ別に確認していただきたい。

また、有料アプリも多い。ユーザー 1 人あたり毎月 7〜8 ドル程度を課金するケースもよく見られる。Android のような個人向けが主のアプリと比較すると、収益化がしやすい印象を受けた。


◆ 技術上のポイント

すでに Web アプリケーションを所有している場合でも新規に開発する場合でも、Apps との統合が技術上のポイントとなる。

・ユーザー認証
ユーザー認証には「OpenID」を使う。これにより、Google Apps のユーザーが再ログインなしでシームレスに外部 Web アプリケーションを使える。

・権限委譲
例えば Apps ユーザーの Calendar から予定を取得し、Web アプリで使いたいとする。この場合 Calendar 情報を提供するかどうかは「OAuth」が扱う。Web アプリ ベンダーはどの情報が取得したいかを表明し、それに対して Apps 管理者が許可を出すという方法である。

他にも技術的なポイントはあるが、基本的には OpenID と OAuth という 2 点のようだ。


◆ 参考情報

・Google Apps Marketplace(英語)
https://www.google.com/enterprise/marketplace/
 → ここにアプリが公開される

・Developer Program Site(英語)
http://developer.googleapps.com/
 → 開発者向け情報。Marketplace での販売方法なども解説している

・Google Apps Marketplace 企業向けアプリ出店入門
http://www.atmarkit.co.jp/fwcr/special/appsmarketplace/01.html
 → 具体的なアプリの公開方法を解説している

あと、私のブログで恐縮だが、Google Apps Marketplace カテゴリでいくつブログ記事を書いている。


※ 本ブログ記事は、執筆時点での最新情報で書いた内容です。
★6/22発売の翻訳書★
血と汗とピクセル 『血と汗とピクセル』
筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについてはこちらをご覧ください。
Twitterアカウント
RSS フィード
著書
アプリ翻訳実践入門
『アプリ翻訳実践入門』


ソフトウェアグローバリゼーション入門
インプレス刊
『ソフトウェアグローバリゼーション入門』

達人出版会刊
『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』


英語語源が魔術に変わる世界では
『英語語源が魔術に変わる世界では』


現場で困らない! ITエンジニアのための英語リーディング
『IT英語リーディング』


アプリケーションをつくる英語
紙版
『アプリケーションをつくる英語』

電子版
『アプリケーションをつくる英語』
第4回ブクログ大賞受賞】