rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

13 5月

英語でモバイル アプリを出すべき理由

Android アプリのコンテストである「Android Application Award 2010 Spring」に応募した。会社で開発した「シンプル体重レコーダー」である。アプリケーション自体は非常に簡素なものなので入賞は難しいだろうが、試しに出してみた。

この「シンプル体重レコーダー」のダウンロード数は、すでに 80,000 を超えた。Androlib というサイトの統計情報を見ると、8 万ダウンロード程度だと上位 2〜3% くらいに入りそうだ。これほど多くの人に利用していただけているのは、ありがたいの一言である。しかし、半分素人のプログラマである私が開発したアプリが、なぜここまでダウンロードされたのだろうか?
以前のエントリでいくつか理由を考えたのだが、基本的に今もそれが正しいのではないかと考えている。すなわち、

 1. 英語で作成した
 2. アプリケーションの目的が明確であった
 3. 早い時期に参入した
 4. アップグレードした

という理由である。

この中でも特に重要なのが 1 であると感じている(2 も重要だとは思うが)。
つまり、英語で作成することで、ユーザー数の多いアメリカ人をターゲットにできた点に加え、非英語圏(ドイツなど)で英語が分かるユーザーにもダウンロードしてもらえたのである。英語でアプリケーションを公開するということは、単にネイティブ人口だけがターゲットになるのではない。外国語として英語を教えている国は多いため、こういった層もユーザーになるのである。世界市場を狙えるのは、Android アプリの開発者にとって大きなチャンスである。


ところで 3 月に au が Android 端末を発表したとき、このような発表があった。
「au one Market」の提供開始について

「au one Market」は、auの「Android™搭載スマートフォン」向けに、日本国内のお客さまニーズに最適化されたアプリケーションを集めたマーケットプレイスです。

http://www.kddi.com/corporate/news_release/2010/0330b/besshi.html

日本人のユーザーが使いやすくなることは、いいことだろう。その点に異議はない。しかし問題は、開発者の側である。もし開発者が国内専用マーケットで日本人相手に満足するのであれば、せっかくターゲットにできる世界市場を逃すことになる。「ガラパゴス」のままである。
同様のマーケットはドコモも持っているし、Taosoftware さんのブログによると Vector もマーケットを作るようだ。


ご存知のように、現在 Android 端末はアメリカのみならず、日本でも増え続けている。近い将来、モバイル人口が増え続けている新興国でもかなりの数になるだろう。新興国のモバイル普及を考える上で重要なのは、先進国と同じ普及過程をたどるわけではないという点である。
日本のような先進国の場合、まず電話線や電線のようなインフラが整って有線電話が普及したあと、ここ 20 年ほどの間に携帯電話の基地局が設置され普及した。新興国の場合、有線電話のインフラが整備されてから携帯電話のインフラが整備されるとは限らない。いきなり携帯電話が普及するのである。

例えば、去年「世界で最も革新的な企業」の 50 社に選ばれたインドの VNL 社は太陽電池式の携帯電話基地局を販売している。太陽電池であるため、電線を引いたり発電機を設置する必要はない。当然電話線も要らない。インフラを整えなくても、携帯電話を普及させられるのである。
(ところで VNL の製品紹介がこちらにある。見るとなかなか面白い。)

また 2009 年 9 月にエコノミスト誌に「通信産業:モバイルマネーの威力」という記事が載った。ここではモバイルマネーを活用しているアフリカの例が挙げられている。インフラが整備される前にモバイルが普及し、先進国と遜色ないレベルで活用されているのである。

世界に英語でモバイル アプリを出すというメリットはここにもある。つまり、将来的に、巨大な人口を抱える新興国もターゲットにできる可能性が生まれるのである。


このように、英語でモバイル アプリを開発するメリットは非常に大きい。日本の開発者は国内だけではなく、巨大な海外市場にも目を向けるべきではないか。もし障壁があるとすれば、一番は言葉(たいてい英語)ではないかと感じる。しかし言葉が分からなければ、分かる人を雇えばいいだけのことである。結局、言葉なんて金で解決できる問題なのだ。利益が費用を上回るならばチャレンジを考えるべきだと思う。
11 5月

グローバル英語のスタイル(29):関係詞節の that は省略しない

関係詞 that を使った文では、その that を省略できることがある。しかしグローバル英語においては、文の構造を明確にするために、可能な限り省略しないようにする。

Style Guide の例:
× The file you selected is displayed in the frame on the right.
× ○ The file that you selected is displayed in the frame on the right.
(参考訳:選択したファイルは右側のフレームに表示されます。)

追記: 当初○と×が反対になっていました。失礼しました。ご指摘ありがとうございます。(2010/05/11 12:46)

上記の文は、意味的には同じであるし、注意して読めば誤読することもない。しかし that を加えることで、「you selected」が「file」を修飾していることが即座に判断できる。
非ネイティブを対象読者として想定するグローバル英語では、多少の冗長さよりも「分かりやすさ」を優先した方がよい。


・本項目は、Style Guide の「6.4」の内容に該当する。
・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・背景が濃くなっている部分は引用箇所である。
・内容は英語中級者〜上級者向けである。


The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global MarketThe Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market
著者:John R. Kohl
販売元:Sas Inst
発売日:2007-10-26
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7 5月

プライベート図書館サービスはできるか

前回のブログ記事「数百冊をわずかな時間で読書管理サービスに登録」は信じられないほどのアクセスをいただきました。ツイートしてくださった方、ブックマーク登録してくださった方、ありがとうございます。
私は単に CNET で山口さんの記事を読み、ブクログに登録してヘルプを読み、「チャロぐ」さんのソフトウェアをダウンロードして使った様子をまとめただけで、大した仕事はしてません。


これほど興味を持っていただけたのは、やはり「本をたくさん持っているが、むしろ数が多すぎるため登録できない」という人が多いということなのでしょう。読書家ほど読書管理サービスが使えないという矛盾です。
今まで読書管理サービスは、こういった層にアピールしてこなかったのでしょうか?個人宅はもちろん、大学の研究室のような場所にも管理しきれない本はたくさんあります。

これはやや妄想も入っていますが、こういった読書家層向けに「プライベート図書館サービス」を提供したら面白いのではないかと思います。
通常の図書館にあるような蔵書目録の作成に加え、メモ内容検索、プライベート図書館間での本(特に絶版本など)の貸し借りマッチング サービスといった具合です。特に最後のは Web ならではの機能で、ローカルの Excel シートなどではできません(絶版本・希少本の貸し借りビジネスも成り立つような気もします)。


始めて間もないブクログなので、まだ使いこなせていません。しかし感じたのは、蔵書の検索機能が弱いのではという点です。
自分の本棚に「タイトル検索」があります。これは前方一致検索しかできません。例えば Python の本を検索したい場合、Python と入力すると『Python ポケットリファレンス』はヒットするものの、『みんなのPython』はヒットしません。これだと、本の名前を頭から記憶していないと蔵書検索ができません。
また、「非公開メモ」も検索できません。個人的にメモしておき、それを手がかりに後で本を見つけることができないわけです。

このように、ブクログでは読書家にとって便利な「大量登録」はできても、まだまだ検索が弱いと感じます。まずはこの検索に関する部分を改善していただきたいと思います。
そして将来的に「プライベート図書館サービス」機能のようなものが追加されれば、読書家の私にとってうれしいサービスになるでしょう。
著書
アプリ翻訳実践入門
『アプリ翻訳実践入門』


ソフトウェアグローバリゼーション入門
インプレス刊
『ソフトウェアグローバリゼーション入門』

達人出版会刊
『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』


英語語源が魔術に変わる世界では
『英語語源が魔術に変わる世界では』


現場で困らない! ITエンジニアのための英語リーディング
『IT英語リーディング』


アプリケーションをつくる英語
紙版
『アプリケーションをつくる英語』

電子版
『アプリケーションをつくる英語』
第4回ブクログ大賞受賞】