「the」という定冠詞は英語で非常によく使われるものの、英語を母語とするプロのライターでさえよく間違える。間違った使い方をすると読者を混乱させることになったり、誤訳の原因になったりするので注意が必要だ。

「the + 名詞」という形は、何を指しているか読者にとって明確な場合に使用する。以前に話題になったことのない名詞に the を付けると、読者は混乱してしまう。

Style Guide では次の例を挙げている。
I saw the dog on my way to work.
この場合、話す人と聞く人の間で以前に dog について話題になったことがあり、そのためどの dog を指しているか明確な場合にのみ the が使える。逆に言うと、初めてその dog を話題にする場合、a を使うことになる。

また Style Guide では別の例を挙げる。
× HIERLIST is a list that show the hierarchy.
例えばマニュアルのそれまでのページにこの hierarchy が出ていない場合、a hierarcy にする。ただし「the hierarchy that was specified for the organizational chart」など、that を使って対象を限定する場合、the が使える。

日本人にとっては the の使用が最も難しいのではないかと思う。上記のような原則は中学や高校の英文法で勉強しているはずだが、それでも判断に迷うことが多い。ただしネイティブでもよく間違えるとのことなので、最初は完璧を目指さなくてもいいかもしれない。
例に挙がっているように that などで指す対象を明確にすると the が使える。しかし、that で限定すればすべて the になるかと言うと、そうでもない。例えば、
  ・the product that the company sells...
  ・a product that the company sells...
の場合、前者は特定の製品を表し、後者は数ある製品のうちの 1 つを表している。



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「2.6」の内容に該当する。


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著者:John R. Kohl
販売元:Sas Inst
発売日:2007-10-26
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