This、that、these、those は代名詞として使うことも、形容詞として使うこともできる。
代名詞として使った場合、第 24 回で解説したのと同様に文に曖昧さが残ってしまうことがある。特に名詞に性別のある言語(フランス語やドイツ語など)で翻訳が難しくなる可能性がある。

次に挙げる Style Guide からの引用は、前者が these を代名詞として使っている例、後者が形容詞として使っている例である。
× Apply all the manual adjustments. These are listed on the Rules tab of the Adjustment window.
○ Apply all the manual adjustments. These adjustments are listed on the Rules tab of the Adjustment window.
(参考訳:手作業による調節をすべて行なってください。この調節は、「Adjustment」ウィンドウの「Rules」タブに記載されています。)

前者の場合、These はそのまま主語になっているため代名詞である。後者では adjustment という主語を修飾しているため、形容詞となる。2 つの文で adjustment が繰り返されているため書いていると冗長に感じるが、曖昧さを排除できている。

名詞に性別がない日本語の場合、代名詞の these は「これら」、this は「これ」で訳してしまっても問題ない。しかし性別のある言語の場合、その代名詞が指す中身を確定した上で、その性別に適した処理をする必要がある。「形容詞 + 名詞」という形で使うと、読者や翻訳者に代名詞の中身を推測させる必要がなくなるため、誤読や誤訳が減らせる。



・本項目は、Style Guide の「5.2」の内容に該当する。
・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・背景が濃くなっている部分は引用箇所である。


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著者:John R. Kohl
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