日本は 10 万人を超える留学生を受け入れている。2020 年には 30 万人まで増やそうとしている。しかし必要なのは、留学生の頭数を揃えるというより、留学生受け入れを産業として成り立たせようとする戦略ではないだろうか。


◆ どこから出てきた 30 万人なのか

政府は 2008 年に「留学生 30 万人計画」を立てた。2020 年を目途に 30 万人の留学生を受け入れるという計画である。その骨子はこちらの PDF ファイルから見られるが、趣旨にこうある。

日本を世界により開かれた国とし、アジア、世界との間のヒト、モノ、カネ、情報の流れを拡大する「グローバル戦略」を展開する一環として、2020年を目途に留学生受入れ 30万人を目指す。


「開かれた国」だとか「グローバル戦略」だとか、それ自体にはあまり反論できない耳触りのよい言葉が使われているが、結局それがどのように日本のためになるのか、そしてなぜ「30 万人」なのか、よく分からない。文部科学省の担当官はインタビューにこう答えている。

我が国の高等教育機関が、他の先進国と同様に、海外からの留学生の受け入れ数の水準を確保していこうとする際、現在の3%強からドイツ、フランスに届くような10%程度(つまり300万人のうちの1割≒30万人)の受入れが必要となるということになります。

また、世界の留学生市場は今後急拡大をするというレポートもあり、そのレポートでは留学生数は、2015年には500万人、2025年には700万人規模と試算されています。現在、世界の留学生数における日本の受入れシェアは約5%程度ですので、仮に中間の2020年を600万人とすれば、現在の受入れシェアを確保しようとした場合、約30万人程度の留学生を受け入れるということになります。

http://www.studyjapan.go.jp/jp/toj/toj09j.html


1 つ目の理由としては、他の先進国では留学生割合が 10% くらいだから、日本も 10%(つまり 30 万人)を目指そうということらしい。2 つ目の理由として、現在の留学生市場のシェア(5%)を維持するためには、30 万人確保する必要があるということである。いずれにしても、先進国としての面目が立たないから、頭数だけ揃えましょうということだろう。


◆ 留学生受け入れで儲ける国

たとえばオーストラリアでは、留学生受け入れが産業として成り立っている。実際、観光業と並ぶくらいの巨大な輸出産業となっているようだ(参考リンク)。

そのオーストラリア、アメリカ、イギリスなどでは、国公立大学に入学する外国人留学生は、現地人より高い授業料を払うことになる。国や大学によって異なるが、1.5 〜 3 倍程度にはなる。金額で言うと、年間 100 〜 200 万円くらいだろう。逆に学生 1 人あたりに投入される税金は、オーストラリアで 77 万円、イギリスで 97 万円、アメリカで 104 万円である(参考リンク:PDF)。少なくともこの 3 か国では、費用(投じられる税金)と収益(支払われる授業料)を比較した場合、国立大学でも留学生から十分儲けていそうである。


◆ 留学生受け入れは産業になるか

最初に述べたように、日本には 30 万人を受け入れる計画がある。しかし 30 万人という数字は単に「先進国としての面目」を立てることが主目的のように思えて仕方ない。産業として成り立たせて儲けようという発想はなさそうだ。

だが上記の通り、産業として成り立たせている国は存在する。たとえばオーストラリアでは毎月留学生数の統計を調査・発表したり、留学生出身国の経済・社会状況のレポートを出したりしている。留学生というお客様(特にお金を出してくれそうな国の学生)を獲得するために、マーケットの動向を調査しているのだ。


単に「日本に来てくださいね」というだけではなく、オーストラリアのように徹底的にマーケットの調査をし、顧客(留学生)を知り、サービスを向上させることで、儲かる産業を目指すことが必要ではないかと思う。30 万人などの数字は、その結果として付いてくるものではないだろうか。