私は英語関連の仕事にしているためか、知人や友人から英語の勉強方法を聞かれることがあります。

これが非常に答えにくいのです。
現在持っている「英語力」に個人差はありますし、そもそもなぜ英語を勉強するのか動機がよく分からない場合もあります。
例えば「旅行できる程度の英会話」や「日常会話」と漠然といっても、その中身はさまざまです。英語がほとんどできなくても身振り手振りで買い物することはできますし、逆に「旅行先の酒場で酔っ払った現地人と楽しく会話する」といったことをしたければ、ある程度の英語力(と文化理解)が必要です。

まず、なぜ英語を勉強するのか、その動機を明確にしておいた方がよいのではと思います。例えば国際的なビジネスパーソンになりたい、あるいは通訳者になりたいなどです。
就職を控えた学生や社会人であれば、英語は「手段」である場合がほとんどでしょう。語学の学習には相当の時間とお金が必要です。手段であるならば、漫然とではなく、効率的に身に付けたいものです。逆に手段ではなく、「目的」である(語学学習自体が楽しい、趣味であるなど)ならば、効率は考える必要はないかと思います。


もし手段として英語を勉強するのであれば、「PDCA サイクル」のような考え方で、学習プロセスを意識してはどうかと思います。リンク先から引用すると、PDCA サイクルとは次のようなものです。
典型的なマネジメントサイクルの1つで、計画(plan)、実行(do)、評価(check)、改善(act)のプロセスを順に実施する。最後のactではcheckの結果から、最初のplanの内容を継続(定着)・修正・破棄のいずれかにして、次回のplanに結び付ける。このらせん状のプロセスを繰り返すことによって、品質の維持・向上および継続的な業務改善活動を推進するマネジメント手法がPDCAサイクルである。

要するに、「目標を立てて実行し、その結果を評価して目標を再検討しましょう」ということです。


◆ Plan
まず Plan です。ここでは「目標を定める」ことになります。
ここで重要なのは、そもそもの英語学習の理由や動機を明確にしておくことかと思います。国際的なビジネスパーソンになりたいからとか、通訳者になりたいからとかです。最終的には(長期的には)これが目標になるはずですが、現実的には達成したかどうか測定しやすい短期的な目標を設定することになるかと思います。
つまり、短期的な目標のサイクルを繰り返しつつ、最終的な目標を目指すということでしょうか。

目標は、ある程度具体的でなければ、達成したかどうかの評価ができません。例えば「旅行に行っても困らない程度の英会話」では曖昧です。「この旅行英会話本の例文を 50 個暗記する」であれば、達成したかどうかが評価できます。このような具体的な目標の方が望ましいのではないかと思います。

測定可能という点で、英語の検定やテストは便利に使えるかと思います。例えば英検なら「級」を取れたか取れないかで判断できますし、TOEIC なら点数で測定できます。
ただし注意したいのは「検定やテストが知らないうちに自己目的化してしまう」ことでしょうか。例えば TOEIC 680 点が取れたら、次は 700 点を取ってみたくなります。ゲームのスコアと同じで、それ自体は達成感があることは確かですが、ゲームにはまると大きな目標を見失うことになります。

英語の検定やテストはいくつかありますが、有名なのは以下でしょうか。

・実用英語検定(英検)
1 〜 5 級まであり、結果は合格か不合格で出る。ただし、級によっては不合格でも「不合格 A」などと出るため、どの程度足りなかったのかが分かる。4、5 級はペーパーテストのみだが、1 〜 3 級まで面接の二次試験がある。
年 3 回実施されている。

・TOEIC
結果は 990 点までの 5 点刻みで、合格か不合格かではない。860 点以上ならレベル A、730 〜 855 点まではレベル B などという評価も出る。TOEIC はリーディングとリスニングのみであるが、「TOEIC SW」というテストでスピーキングとライティングをテストする。
年間 10 回ほど実施されている。

・TOEFL
英語圏への留学生向けのテストで、大学生活に必要な英語が出題される。コンピュータを使ったテストであれば 0 〜 120 点で出る。リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングがすべてテストされる。
月に数回実施されるが、予約が埋まっていることもある。(あと少し高い…)

一般的にはこの辺りですが、専門的なテストもあります。例えば技術英語に関する「工業英検」です。自分の最終目標から見て妥当だと思えば、こういった専門英語のテストを使えばよいと思います。

またテスト以外でも、上で挙げた「例文 50 個暗記」や、「英会話教室の中級クラス修了」などを目標にしてもよいでしょう。いずれにせよ、達成できたかどうか評価できる目標を立てることが必要かと思います。


◆ Do
次は Do、つまり実際に勉強する段階です。
この方法は各人の目標によって異なります。例えば TOEIC の点数が目標なら対策本をやる、あるいは例文暗記が目標ならカードを作って地道に覚える、でしょうか。


◆ Check
続いて Check、評価や確認です。
TOEIC の点数を目標にしたのであれば目標の点数に到達したのか、例文暗記が目標ならきちんと覚えられたのか、評価します。


◆ Act
最後に Act、改善です。
目標を達成できたのか、できなかったら何が悪かったのか、そもそも目標が妥当だったのか、などを見直して目標を再設定します。また新たな PDCA サイクルが始まるわけです。

再度目標を立てる場合も、英語を学習するそもそもの動機や理由を忘れないようにしましょう。例えば今回 TOEIC 600 点だったので次は 650 点と単純に設定するのではなく、「自分は国際的なビジネスパーソンになりたい、そのために英語で交渉できる力が必要だ、だから次は交渉英語を勉強できる講座を修了しよう」といったように、常に原点に立ち返りつつ目標を再設定することが必要ではないかと思います。

また、サイクルの「粒度」も適切に設定しましょう。
例えばテストの点数を目標にした場合、評価(Check)はテストの点数で行います。しかし、例えば「テスト対策本の第 3 章の練習問題で 80% 以上正解する」といったような、さらに粒度の細かいサイクルも考えられます。サイクルは「入れ子」にできます。


 ◆ ◆ ◆

以上、英語の勉強を始める前に考えておいた方がよい思うことについて書きました。
私が強調しておきたいのは、「英語を学習する理由や動機は忘れずにしておく」という点です。英語の勉強はだらだらと続けてしまったり、半ばゲームのようにスコアを追ってしまったりすることがあります。学習それ自体が趣味で「目的」なら構いませんが、「手段」とするなら、明確な目標を立てて効果を測ることが望ましいのではないかと思います。