ローカリゼーション業界関係者であれば、「ローカリゼーション」と聞くとすぐにソフトウェアが思い浮かびます。インターフェイスの文字列を翻訳したり、各国の事情に合わせて機能(例えば税金計算やカレンダー)を変えたりすることです。
しかしローカリゼーションの対象になるのは、ソフトウェアだけではありません。アメリカに輸出する自動車のハンドルを左に付けることもローカリゼーションの一例です。


「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力
著者:安西洋之
販売元:日経BP社
(2011-07-28)
販売元:Amazon.co.jp
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本書は日本企業によるローカリゼーションの事例をいくつも紹介しています。しょうゆ、即席めん、冷蔵庫、洗濯機などです。
また、単に事例を挙げるだけではなく、これから海外進出したい企業が考慮すべきポイントと、「ローカリゼーションマップ」の作り方を解説しています。ローカリゼーションマップとは、「商品企画において役に立つ日常生活のロジックを、いかに把握するかを目的とした」ツールで、海外展開の戦略に利用されるものです。

なぜローカリゼーションという考え方が生まれたかについて、こう説明しています。
即ち、元来、地域文化と製品文化に乖離はなかった。商品が地域の外で売られたり、あるいは人が移動して商品をもちこむことによって、その先の土地でローカリゼーションが要望されることになった。(p.201)

つまり、製品が海外に出る際には「地域文化」と「製品文化」の乖離が発生するため、そこにローカリゼーションが必要だということです。例えば本書のタイトルにもなっているマルちゃんのカップめんは、アメリカやメキシコではラーメンというより「スープ」と認識されているため、スープを全部飲むそうです。そのため味を薄くしているとのことです。

各国における製品文化の特徴をつかみ、その地域文化を理解するために、「ローカリゼーションマップ」を作ります。
図は何種類かあるのですが、以下は「ローカリゼーション全体評価図」と呼ばれています。

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第 1 象限にある「スマートフォン」は、グローバルな市場で流通する製品であり、特定地域のコンテクスト(文化的な色合い)が弱い傾向があります。
逆に第 3 象限の「洗濯機」は、ローカル市場で売られ、かつコンテクストの影響が強い傾向があります。洗濯機は、ドイツ以北だと脱水機能の強さが求められるのに対し、南欧では洗濯容量が求められます。また、日本では洗濯、脱水、すすぎなどのメニューが選べるのに対し、ヨーロッパではセットになっていて選べなくなっています。このように洗濯機は地域のコンテクストの影響が強いということです。

全部は紹介できませんが、上記のような図(ツール)がいくつか挙げられています。



私も「ローカリゼーション業界」に属しているため、ローカリゼーションには興味を持っていました(翻訳はローカリゼーションの一部とされる)。しかし、ソフトウェア以外の製品については状況をほとんど知りませんでした。
本書は具体例が豊富なことに加え、「ローカリゼーションマップ」という実践的なツールまで紹介されているので、ローカリゼーション関係者にとっても、海外向け製品を企画する人にとっても、興味深い内容だと思います。