IT 分野の英文を読んでいると、exit という英単語は「プログラムやアプリケーションを終了する」という意味で、目的語を取る「他動詞」として扱われるケースがほとんどという印象があります。例えば「To exit this program, click the [X] button.」といった説明文です。

2003 年刊(恐らく)の『研究社 新英和中辞典』で調べると、「自動詞」であるという説明があります。IT 分野の用法に関する説明はありません。しかし、最新の単語が掲載される『英辞郎』では自動詞と他動詞の両方が載っています。「《コ》」というのはコンピュータのことなので、IT 分野での用法を示しています。

また、専門的な用語解説でも違います。 1994 年に発行された『コンピュータ英語動詞使い分け辞典』を読むと、自動詞の用例しかありません。逆に 2006 年に発行された『科学技術英語 動詞はこう使え!』では、他動詞の用例しかありません。

つまり時代によって説明に差があり、やや古い辞書や書籍だと「自動詞」扱い、新しくなると「他動詞」としての用法が加わって来ているように思えます。ただ、これは私の印象なので、何の証拠もありません。そこで以前ブログで紹介した「Google Books NGram Viewer」を使ってみることにしました。

exit from the program」(自動詞)と「exit the program」(他動詞)を比較した結果がこれです。1950 年から 2008 年までにおける書籍上の登場頻度を比較しています。

exit


自動詞としての用法(青線)は 1960 年頃から見られ始め、徐々に増えていき、1985 年過ぎた辺りから減少に転じています。他動詞としての用法(赤線)は 1980 年頃から急激に増え始め、1 〜 2 年程度で自動詞の用法を一気に抜き去っています。

要するに、IT 分野における exit という英単語は、1980 年代に自動詞から他動詞に変わったと言えるほどです。そう考えると、上記の辞書や書籍の記述の違いも理解できます。言葉は生き物であることは理解していましたが、これほど劇的に語法が変わるケースも珍しいのではないでしょうか。

ちなみに program を application に置き換えても同じような傾向が見られます(program ほど明らかではありませんが)。