『アプリケーションをつくる英語』に関する著者インタビュー記事がITmediaに掲載されました。


「アプリケーションをつくる英語」著者インタビュー: ボーンデジタルから紙出版、その知られざる紆余曲折


以下、インタビュー時に話せなかった持ち込み時のこと、編集者の独断の重要性、その他の感想です。

◆原稿の持ち込み

本書は原稿を書き終わってからの持ち込みだったのですが、一般には、あらかじめ企画を出版社に承認してもらった上で書くケースが多いようです。やはり書き終わってからの持ち込みは、出版できないと丸損になってしまうので、特に職業ライターの場合は避けたいのでしょう。ただ本書の場合、先に企画を持ち込んでいたら現在のような構成やページ数になっていなかったはずなので、(リスクはありましたが)書き終えてからの持ち込みでよかったと思います。

記事にある通り、まず紙の出版社数社に持ち込みました。編集者の知り合いがいる出版社では何とか社内会議に出してもらったり修正アドバイスをもらったりしたのですが、伝手のない出版社にはメールを送っても、なしのつぶてでした。どうも持ち込みメールは多いらしく、通常は返信もしないようです。ですから紙の出版社から本を出したいと思っている方は、持ち込み制度がある会社に連絡するか、何らかの形で編集者と知り合いにならないと難しいかもしれません。

ただ、伝手はないものの、メールを送った出版社1社から返信がありました。仮にA社としておきます。編集者が本書の内容に興味を持ち、社内会議に出したいとのことでした。若い編集者で、アプリのグローバル化には将来性があると思ったようです。そこで社内会議を通すための資料作り(データ集めなど)にも協力したのですが、結局会議は通らず、出版は見送りになりました。ページ数が多いので価格が高くなってしまう点と対象読者が不明瞭という点が不可の理由でした。

その後で達人出版会に持ち込みました。こちらではすんなりと出版可の返事をもらい、その後の経緯はインタビュー記事にもあります。


◆編集者の独断

ここで感じたのは、編集者の独断で出版できるかどうかが重要だという点です。A社のように編集者が出版意欲を持っていても、紙媒体だと在庫リスクなどで出せないことがあります。特に若い編集者だと、売れるという直感はあっても、社内的な力が足りないので会議を通せないのかもしれません。

そう考えると、電子版出版元である「達人出版会」の高橋さんはすごいと感じます。同社は高橋さん1人で経営しています。紙の本を出すにはある程度の資本や体制が必要で、リスクも負わなければなりません。しかし電子に特化することでそういったリスクを小さくし、組織化で「経営者」として忙殺されることなく「編集者」の役割に注力しています。また分野を専門であるITに絞ることで、「電子IT技術書なら達人出版会」という流れも生み出しています。いわば目利きの高橋さんが独断で出版の可否を決められる状態にあるわけです。

(こういった方法は、実は従来の出版社でもできそうです。紙の採算ラインに乗るかどうか分からない書籍であれば、とりあえず電子で出しておき、一定の販売実績があれば紙にするという方法です。もうやっているところはあるのでしょう。)

ちなみに、高橋さんはもともとRubyプログラミング言語で有名な方で、高橋メソッドと本人の名前の付いた発表技法もあります。また私の印象では、商売というより本当に出版や編集が好きなようです(実は電子版編集済みファイルも対価なしで紙版出版元に渡しています)。


◆その他の感想: 震災のとき

本書の書き始めが2010年末、書き終わったのが2011年末なので1年ほどかかりました。ちょうど書いている間に東日本大震災が起こり、部屋はこんな具合になってしまいました。その直後は計画停電やら原発やら余震やらという話で執筆できず、しばらく中断しました。通常の仕事をするのがやっとの状態です。

出版できるかどうか分からない書籍なのでもう書くのを止めようかとも思いましたが、震災復興に邁進する人たちの姿を見て、ここで自分も止めるわけにはいかないと気力を出しました。さらに「出版が遅れれば日本のソフトウェア産業にマイナスだ」と夜郎自大な暗示を自らにかけ、何とか最後までこぎ着けた次第です。実は本書を書いていることはほとんど誰にも言わなかったので、なかなかモチベーションを維持するのが難しかったです。上記のとおり、その後も出版社探しに苦労しましたが。

以上です。