「アジャイル型」でのソフトウェア開発の増加に伴い、ローカリゼーションでもアジャイルへの対応が必要になっています(記事)。それに関する議論の資料をいくつか紹介します。特に面白いと思ったものには【おすすめ】と記しておきました。

あらかじめ基本的な用語を紹介しておきます。「Scrum」とはアジャイル開発の手法の1つで、現在主流になっています。「sprint」とは、そのScrumにおける「繰り返し1回分」のことです。Scrumではsprintという小さな工程を何度も繰り返し、最終的な完成を目指します。



(1)Agile Localization Practices【おすすめ】
http://www.i18nguy.com/l10n/Agile-Localization-Practices.pdf (PDFファイル)
Tex Texin氏による解説です。アジャイルの全般的な説明に加え、既存のL10N手法ではなくプロセスを変える必要があるという内容です。

(2)Agile Challenges for Localization
http://www.lingoport.com/software-internationalization-articles/agile-challenges-for-localization/
Lingoport社のAdam Asnes氏によるコラムです。ウォーターフォールで使っていたL10Nプロセスをアジャイルに当てはめるのには無理があるという話です。

また(1)と(2)はどちらも「Localization World」(2010年10月)におけるパネルディスカッション「D2: How Do We Create an Agile Localization Process That Can Keep Up with an Agile Development Process?」を受けた議論です。「最近アジャイル型開発が増えており、それに合わせるために苦労している」というパネリストに対し、いや、既存のプロセスこそ変えるべきと意見を表明しています。私もその意見に賛成で、既存の手法(つまりウォーターフォール型開発に最適化されたL10N手法)は絶対視するのではなく、一度相対化すべきだと考えています。

(3)Internationalizing and Localizing Complex Software Systems in an Agile Environment 【おすすめ】
http://vimeo.com/20586255
Lingoport社によるWebinarの録画です。3人のスピーカーが話します。20分頃から始まる2人目Kurihara氏のPure Agile、Waterfall、Hybridの話が面白く、最後の質問もそれに集中しています。ちなみに3人目のBlau氏のスライドはこちらで見られます。ざっと内容を確認したい場合は便利でしょう。

(4)Localization in the Agile Environment
http://vengacorp.com/wp-content/uploads/2011/08/Localization-in-the-Agile-Environment_Venga.pdf(PDFファイル)
Venga社の資料です。やや宣伝的な部分がありますが、ワークロードが分散できるという話です。

以下は学術論文です。私はまだ取得できていないので内容はよく分かりませんが、リンク先でアブストラクト(概要)は見られます。

(5)Lost in Agility? Approaching Software Localization in Agile Software Development
http://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-642-20677-1_25

(6)Defects and Agility: Localization Issues in Agile Development Projects
http://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-642-20677-1_23



アジャイル型開発が増えている現在は、ソフトウェアL10N業界における大きな転換期だと思っています。L10N業界が成立したのは、そもそもソフトウェア開発の主流がウォーターフォール型だったことが理由の1つです。ウォーターフォール型だからこそ外注が容易になったからです。つまり業界が成立した前提自体が揺らいでいるわけです。

日本でいまいち「アジャイル・ローカリゼーション」に対する関心が高まっていないように思えるのは、恐らく日本のL10N業界の多くが「英→日」の方向で仕事をしているからでしょう。開発がアメリカの大企業で行われているため、日本のL10N企業が直接関わることが少ないからです。

しかし、ここ数年でスマートフォンのマーケット出現などにより、日本の中小ソフトウェア企業も海外にソフトウェアを売りやすくなっています。今後は日本企業が開発したソフトウェアを海外向けにローカライズする機会も増えるはずで、大きなチャンスがあります。今まで「英→日」対応だけでよかったL10N企業も無関心ではいられなくなるのではないでしょうか。

以上です。