すでに固まった主張というわけではないのですが、ソフトウェア・ローカリゼーションの仕事が今後10年くらいでこうなるのではないかという漠然とした予想が僕の中にあります。他の人の考えも聞いてみたいなという気持ちもあり、メモ書き程度ですが公表しておきます。


ソフトウェア開発が「ウォーターフォール型」だった90年代にL10N業界が誕生した。現在は、L10N仕事が生まれるソフトウェア開発現場では「アジャイル型」が主流になりつつあるという背景を考えると…

【A】L10Nは設計や開発のプロセスに組み込まれる。特にUI翻訳あたりは内製化される
【B】翻訳者は専任ではなく、兼任。プロジェクトマネージャー、デザイナー、プログラマーの役割と兼任
 → 外注される翻訳は、一部のビジネス向けソフトのマニュアルのように、開発終了後でも翻訳できるドキュメントに限られる

L10Nされるソフトウェアのユーザー層の変化を考えると…

【C】ビジネス向けではなく、1人1台のスマホ向けアプリのユーザーが増加
 → いわゆる「直感的」操作が好まれたり画面サイズが小さかったりで、主力サービスだったマニュアル翻訳が減少(?)
【D】「言葉をデザインする」という視点が必要で、ユーザビリティーやUXも考えなければならない。最終的な顧客は翻訳会社ではなくエンドユーザー → Aに書いたように内製化が進む

機械翻訳とポストエディット(PE)の進化を考えると…

【E】「PE案件」と「デザイン翻訳案件」との分離 → 定型的な繰り返し表現が多い翻訳は大部分が機械翻訳になる?(10年近く前にすでにマイクロソフトは技術者向けサイトで機械翻訳で情報提供していた)。ユーザーが頻繁に目にする翻訳にはお金をかけるが、エンドユーザーがあまり読まない翻訳にはお金をかけない

クラウドソーシング(crowdsourcing)の進化を考えると…

【F】従来の翻訳会社を経由しない仕事が増える → 翻訳価格が低下し、従来は成立していた在宅の専業翻訳者という仕事が成り立ちにくくなる(?)


結果、ローカリゼーションに関わる翻訳会社や翻訳者はこう変わるのではないか:
・在宅で働く専業翻訳者が減り、社内で働く兼任翻訳者が増える。UI翻訳は社内、マニュアル翻訳は外注など
・翻訳の「スキル化」 → 職業としての翻訳ではなく、スキルとしての翻訳
・翻訳会社と在宅翻訳者へ出される翻訳は、まとまった量のPE案件がメイン(?) → 従来の在宅IT翻訳者にとってはやや暗いイメージだが、これを好む人もいるかもしれない


上でも書きましたが、90年代に翻訳外注が増えてローカリゼーション業界が成立しました。これを可能にしたのがウォーターフォール型の開発プロセスです。しかし現在はその前提自体が変化している(アジャイル型が増加)ことの影響はもっと深刻に受け止めるべきなのではないかと感じます。