先日、会社のウェブサイトにDQFエラー分類の日本語解説を載せた。
これを書いているときに感じたのは、やはりヨーロッパ言語の発想が色濃いということだ。

例を挙げると、「流暢さ」カテゴリーに「文法上のレジスター」という詳細カテゴリーがある。レジスターとは、ある状況(どういった人間関係か、話し言葉か書き言葉か、など)に適した言葉遣いのことである。
具体例としてDQFは敬称を用いるべき場面で親称を用いているエラーを挙げている。例えばドイツ語なら「Sie」の場面で「Du」という代名詞、フランス語なら「Vous」の場面で「Tu」という代名詞、スペイン語なら「Habla」の場面で「Hablas」という動詞を使うケースが該当する。
日本語の場合も「あなた」や「君」という言葉はもちろんあるが、それよりも大きな問題になりそうなのは「敬語」であったり「敬体/常体」の使い分けだったりだろう。果たしてこれらを「文法上のレジスター」という項目に入れてしまってよいのか悩ましい。ちなみにJTFスタイルガイドでは「敬体/常体」という項目を扱っている。だから日本語では「スタイル」カテゴリーのエラーにもなり得る。

別の例としては、同じく「流暢さ」カテゴリーの「スペル」という詳細カテゴリーである。日本語の場合、スペルミスのようなものはもちろん考えられる(例:「ありかとう」)。しかし、よりあり得そうなのは同音異義語(例:対象/対照/対称)の入力ミスといったエラーではないだろうか。ところがこれをもし「スペル」という項目で分類するとしたら違和感を覚える。

実のところ、DQF(あるいはMQM)のエラー分類は日本語での運用実績が乏しい。細かな分類で担当者が悩む状況は発生するだろう。

それはさておき、いま日本の翻訳業界が考えるべきは、エラー分類を巡る世界的な動きだと思われる。
かつてISOではプロダクト(翻訳成果物)の評価方法について議論されたが、紛糾して頓挫したことがある(2012年)。現在、プロダクトの評価方法について再度議論しようという動きがある。そのときは(DQFやMQMが参考にされるかは別にして)、エラー分類も検討されるだろう。ヨーロッパ言語を前提としたエラー分類の場合、上記のように日本語にうまくフィットしない項目が出てくるはずだ。日本の翻訳業界としては「日本語も考慮したエラー分類」について今から議論を深めておいた方がよいかもしれない。