前投稿と関連する内容です)

ISO 17100の翻訳実績として「ポストエディット」が認められる旨の回答を登録先機関(日本規格協会:JSA)がした。
それに対し、そもそもISO 17100は「ポストエディット」(機械翻訳+後編集:MT+PE)を範囲外としているので、おかしいのではという指摘が出ている。該当する部分を引用する:
The use of raw output from machine translation plus post-editing is outside the scope of ISO 17100:2015.

https://www.iso.org/standard/59149.html


ところがISO 17100の「2.2.4 post-edit」の定義の注を見るとこうある(下線は西野が追加):

2.2.4
post-edit
edit and correct machine translation output (2.2.3)

Note 1 to entry: This definition means that the post-editor will edit output automatically generated by a machine translation engine. It does not refer to a situation where a translator sees and uses a suggestion from a machine translation engine within a CAT (computer-aided translation) tool.

https://www.iso.org/obp/ui/#iso:std:iso:17100:ed-1:v1:en

つまり、翻訳支援ツール(CAT)に提示される機械翻訳の出力を翻訳者が見て使うことは「post-edit」に該当しないということである。



ここで混乱が生じている。
一般的に、ポストエディットという場合、2種類が考えられる。

 A. 機械翻訳が出力した訳文のみを見て、訳文を編集する
 B. 機械翻訳が出力した訳文と原文とを見比べて、訳文を編集する

ISO 17100では、Aを「post-edit」とし、Bは違うとしている。

確かにAは訳文しか見ないのだから、「翻訳」には該当しないだろう。
Bの場合は「翻訳」だとしても違和感はない。
翻訳メモリー(TM)を使った翻訳は現在では「翻訳」に入るはずだ。外部(自分以外)から提示された訳語や訳文を利用して翻訳作業をする点で、Bと本質的な違いはないと思う。さらに言うと、辞書という外部資料を使って訳語に当たるのも違いはないように思える(語レベルで訳候補を提示するか、文レベルで訳候補を提示するかの違い)。

混乱の原因は、Bに専用の呼称が存在しないからではないだろうか?
前述の通り、AもBも一般的には「ポストエディット」と呼ばれる。
Bは例えば「機械翻訳の対訳編集」と呼ぶなど、何かしら専用の名前が欲しいところだ。


私はJSAの説明会の質疑応答の場にいたが、回答者がBの方を指していると理解した。しかし、Aと理解する人がいてもおかしくないだろう。
混乱を招かないような対策が必要だと思う。
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【追記】ISO 17100の「ポストエディット」について続きの記事があります。
http://blog.nishinos.com/archives/5222162.html