日本翻訳連盟(JTF)から「JTF翻訳品質評価ガイドライン」が公開されました。

会員非会員を問わずどなたでも入手可能です。
ウェブサイトはこちら: https://www.jtf.jp/tq/translation_quality_guidelines.html
ガイドラインにはクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY)が設定されているので、著作権者などの表示という条件に従う限り、複製や改変して利用できます。
(著作権が放棄されているわけではありません)

なお、同ガイドラインに関するセミナーを2019年2月4日に開催します。
詳細はこちらのページでお知らせする予定です:
https://www.jtf.jp/tq/translation_quality_seminar.html

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詳細はガイドラインを読んでいただきたいのですが、うまく説明できていないかもしれない部分について、個人的にざっくばらんに書いてみたいと思います。

◆ 経緯
これまで産業翻訳業界で「品質」について正面から議論することはあまりありませんでした。というのも、産業翻訳であっても品質の良し悪しの判断は主観的な部分を排除できないからです。翻訳の発注側も受注側も、個人としてはさまざまな経験(読書歴や業界歴など)を持っています。だから議論を始めても「こう思う人もいれば、ああ思う人もいる。仕方ない」で終わってしまう場面もよく目にしました。
しかし産業翻訳はビジネスであり、成果物の品質の改善が求められます。改善には、品質がどの程度であるのかという(可能な限り客観的な)測定や評価が必要でしょう。いつまでも「仕方ない」で終わらせるわけにはいきません。
そこでJTFは業界団体として、翻訳品質評価ガイドラインを作ることになりました。2015年に検討を開始し、ようやく今年完成したわけです。

◆ガイドラインが考える「品質」
同ガイドラインでは、ものさしそのものを1本提示し、さあこれであらゆる翻訳を測ってくれ、とやっているわけではありません。あらゆる翻訳を1つの基準で測るのは無理です。
そうではなく、「適切なものさしを作って使う方法」を示しています。
まず、事前(翻訳前)に受発注者間で合意してものさしを作ります。当然、専門分野や個別の条件によって異なるものさしができ上がるでしょう。発注者(クライアント)は自分が期待する品質が何であり、どの程度であるのかをものさしとして示せます。他方、受注者(翻訳会社や翻訳者)は何を期待されているのかがわかります。
そして事後(納品後)にそのものさしで品質の良し悪しを測定するわけです。
つまり同ガイドラインが考える「品質」とは、「受発注者間の事前合意をどの程度満たすか」ということになります。

◆特長
・国際的な方法を踏襲
本ガイドラインでは、翻訳品質評価面で進んでいる欧米の考え方をベースにしています。たとえばMQM(欧州委員会で品質評価に利用)です。
翻訳は国際ビジネスなので、日本国内だけで通用する評価方法を作っても仕方ありません。
本ガイドラインの方法は、グローバルなビジネスの場面でも違和感なく受け入れられるはずです。

・日本語独自の項目を追加
そうは言っても、ヨーロッパ言語をベースにした評価手法だと、日本語にうまく合わないことがあります。
たとえば日本語では「同音異義語」のエラーがよく発生します。こういった日本語に特徴的なエラーも扱えるようにしてあります。

・ドキュメント・タイプ別重み例を提示
前述のように、ものさしは専門分野で違ってきます。
翻訳会社で品質評価を担当している専門家何人かに聞き、ドキュメント・タイプ別(専門分野別)にエラー点数の重み例を提示しています。
あくまで例ですが、これを参考にすれば、翻訳の案件やプロジェクトに応じたものさしを作るのも(少しは)楽になるはずです。


本ガイドラインはこれで完成というわけではなく、利用者の皆さまからのフィードバックをいただいて改善を重ねたいと考えています。

以上です。