ISOのウェブサイト(こちら)で公式発表されているが、10/3付で翻訳品質を扱うISO 21999はキャンセル(Deleted)になった。

規格の対象範囲(scope)をどこまで広げるかに関し、参加者間で意見が合わなかったのが原因である。リーダーらは「品質保証」まで扱うべきだと主張していたが、大半の国は「評価」に留めるべきだと考えていた。投票で「評価まで」と決まったのにもかかわらず、リーダーらが固執し、結局キャンセルになってしまった。
(確か2012〜2013年頃にも、ISO 17100を策定する過程で翻訳品質を扱う国際規格の話が持ち上がったものの、消えてしまったと聞く。)

ただし、翻訳品質評価自体の重要性は理解されているので、ISOで近々別のプロジェクトが立ち上がるかもしれない。



ISO以外でも、翻訳品質を扱う国際規格はASTMが現在制作している。

 ・ASTM WK46396: New Practice for Analytic Evaluation of Translation Quality
 ・ASTM WK54884: New Practice for Holistic Quality Evaluation System for Translation

また国際規格ではないが「MQM」が2015年に完成している。
MQMは欧州委員会の翻訳品質評価にも使われているようであるし、学術論文でもMQMを使って品質評価する例を見かける。
さらにMQMの制作者がASTMにも関わっており、今後MQMの方法が国際的に受け入れられる可能性は高い。ISOで別プロジェクトが立ち上がる場合も、MQMから大きな影響を受けると思われる。

なお、日本翻訳連盟(JTF)で昨年作った「JTF翻訳品質評価ガイドライン」もMQMをベースとし、これとの互換性を維持している。
そのため日本語が関わる翻訳で品質評価する場合は、JTFのガイドラインを参考にしておけば将来的に「ガラバゴス化」する危険性は小さいのではないかと思う。