rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

翻訳/L10N

31 3月

2020年度からJTF個人年会費が半額(+現在入会キャンペーン)

日本翻訳連盟(JTF)の個人会員の年会費が2020年4月1日から半額になります。
従来は年2万円でしたが2020年度から年1万円です。

会員になるとさまざまなメリットがありますが、経済面では以下の通りです(執筆時点)。

  • 翻訳(関西)セミナー受講料: 非会員6,000円が3,000円(税抜)

  • セミナーDVD代金: 非会員6,000円が3,000円(税抜)

  • 翻訳祭の参加費: 2019年の場合、非会員10,000円が5,000円(税抜)

  • ほんやく検定受験料: 非会員に比べて20%安い

  • 翻訳白書(2017年版): 非会員20,000円が無料(!)


その他、関連団体のセミナーなどへの参加費が割引になることもあります。

さらに、2020年5月31日まで入会金が半額になる入会キャンペーンを実施しています。
こちらの入会案内ページをご覧ください:
https://www.jtf.jp/jp/admission/admission_info.html

現在フリーランスや会社員として翻訳の仕事をしている、あるいはこれからしたいという方は、この機会にぜひご入会ください。

以上です。
18 3月

翻訳の設計

翻訳は個人で行うことが多く、その場合は橋やビル、あるいは大規模ソフトウェアを構築する際に実施するような「設計」の段階が存在するわけではない。もちろん「これからこの一冊をどう訳そうか」と翻訳者は考えるだろうから、その人の頭の中で計画なり戦略なりは立てているはずだ。ただしここで「設計」とは、翻訳者一人だけというより、翻訳依頼者(クライアント)や翻訳会社などが関係し、翻訳者が何人も参加するような状況における設計を指すことにする。

ソフトウェア開発のプロセスでは、「要件定義」→「外部設計」→「内部設計」→「実装(プログラミング)」といった順に進む。「外部設計」とはユーザーからどう見えるかという設計、「内部設計」とはソフトウェア自体をどう作るかという設計になる。またV字モデルで言うならば、以下の図のように、各フェーズに対して検証を実施することになる。


(引用元:日経XTech https://xtech.nikkei.com/it/article/lecture/20061130/255501/


翻訳プロセスにこれを当てはめた場合、一番分かりやすいのは翻訳者が「実装」をする点だと思われる。ソフトウェア開発におけるプログラマーと同じ立ち位置である。
では翻訳の「外部設計」で何を決めるのだろうか。外部設計はユーザー(最終読者)から見てどうかという話である。だから、たとえば最終読者がエンジニアである場合、「技術専門用語がきちんと用いられている」、「エンジニア向けの日本語になっている」、「旧版マニュアルの表現を踏襲している」といった点だろうか。
続く「内部設計」は、翻訳成果物内部をどうするかという話である。外部設計を受けるならば、たとえば「あの用語集に従う」、「である調(常体)をスタイルとする」、「前回作成したTMを使う」といった話になるはずだ。

このような翻訳における設計(外部と内部)は、現在のところ翻訳会社内で実施されていると思われる。自分自身も翻訳会社にいるときにしていた。
ただ、翻訳設計は誰もが知るような公の知識になってはおらず、各翻訳会社の「ノウハウ」として蓄積されていると考えられる。ノウハウは利益の源泉になるため、翻訳会社に出してくれとは言いにくい。しかし公の知識になれば、人が同じ失敗を繰り返したり、車輪の再発明をしたりする事態は避けられる。だから大学などの公的機関が研究してまとめて公開することが社会全体からすると本当は望ましい。

実のところ、ISO 11669という国際標準規格では、翻訳の仕様を作る(つまり設計する)ためのパラメーターが提案されている。ISO 11669はお金を払わないと読めないが、その元になったパラメーター自体はMelby氏によってウェブ上に公開されている。
大きく「言語面」(原文と訳文の情報)、「制作面」(タスクなど)、「環境面」(ツールなど)、「社会関係面」(納期や費用など)と分類されている。非常に有用ではあるものの、やはり実務者から見ると少し足りない気がするし、構成がどこまで妥当なのかも分からない。こういったパラメーターも、外部設計や内部設計といった概念で分類してみるとすっきりし、かつ実務で適用しやすくなるのかもしれない。特に検証を内部設計にするのか、外部設計にするのかという分割は、概念上役立つ。

なおソフトウェア・ローカリゼーションにおける設計は自著『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』(達人出版会インプレス)の第2章5節で触れているが、あくまでソフトウェア設計に属する話だったので、純粋に翻訳に注目した調査研究が欲しいところである。
26 12月

シンプルMTスコアのウェブ版を公開

以前、機械翻訳の自動評価をGUIで手軽にできるデスクトップ・アプリを作成した(ブログ記事)。
しかしファイル・サイズがかなり大きくなってしまったり、ウイルス誤検出が原因でクラウド・ストレージ上に置けなかったりといった問題があった。

そこでインストール不要なウェブ版を作成して公開した。

 シンプルMTスコア
 http://mtscore.nishinos.com/
 https://mtscore.nishinos.work/
 (SSL対応でドメインを変更しました。2020-01-04)

シンプルMTスコア

機能的にはデスクトップ版と同じで、BLEUとGLEU(Google-BLEU)のスコアが計算できる。

入力された訳文はサーバー上で一切保存していないが、不安であれば機密情報の入力は避けていただきたい。
また、あまりに重い処理を避けるために、センテンス数は500を上限としている。これはサーバー負荷を見ながら変更するかもしれない。
17 12月

JTFほんやく検定合格でトライアル免除/受験要件緩和

日本翻訳連盟(JTF)は「ほんやく検定」を主催しています。

これまでも2級以上に合格するとJTFの「検定合格者リスト」(JTF会員のみ閲覧可)に掲載され、プロとして仕事を受けるチャンスがありました。しかし合格者(翻訳者)の側から翻訳会社にアプローチする機会は限られていました。

そこで、ほんやく検定2級以上の合格者に対してトライアル免除またはトライアル受験要件緩和という優遇措置を実施している翻訳会社をまとめて掲載することになりました。これにより、合格者の側から翻訳会社を探して翻訳者登録をしたりトライアルを受験したりできます。

本日現在、翻訳会社20社がこの優遇措置を実施しています。
たとえば、1級合格で「トライアル免除」、2級合格で「実務経験なしでトライアル受験可能」といった内容です。

実施会社や要件などの詳細情報は、以下「JTFほんやく検定」のページにある「合格者の特典」セクションの「●トライアル優遇措置対象翻訳会社リスト」をご覧ください。
https://kentei.jtf.jp/

あるいは、こちらから直接PDFを開くことも可能です。
https://www.jtf.jp/pdf/kentei_trial.pdf

jtf-kentei-traial

フリーランス翻訳者になるためにはトライアル合格が必須です。しかしそもそもトライアル受験に実務経験を求められるケースもあります。(そのため最近、実務経験を「盛る」トライアル受験者が出ているとの話も聞きます。)
上記の制度を利用すれば、実務経験がなかったり浅かったりしても、トライアル受験が可能になります。しかも一度検定に合格するだけで何社にもアプローチ可能なので、効率的です。

フリーランス翻訳者を目指している方は、ぜひこちらの制度を活用してみてください。

※ なお次の第72回ほんやく検定は2020年1月25日(土)実施で、申込み期限は2020年1月14日(火)17:30までです。
4 10月

翻訳品質を扱うISO 21999がキャンセル

ISOのウェブサイト(こちら)で公式発表されているが、10/3付で翻訳品質を扱うISO 21999はキャンセル(Deleted)になった。

規格の対象範囲(scope)をどこまで広げるかに関し、参加者間で意見が合わなかったのが原因である。リーダーらは「品質保証」まで扱うべきだと主張していたが、大半の国は「評価」に留めるべきだと考えていた。投票で「評価まで」と決まったのにもかかわらず、リーダーらが固執し、結局キャンセルになってしまった。
(確か2012〜2013年頃にも、ISO 17100を策定する過程で翻訳品質を扱う国際規格の話が持ち上がったものの、消えてしまったと聞く。)

ただし、翻訳品質評価自体の重要性は理解されているので、ISOで近々別のプロジェクトが立ち上がるかもしれない。



ISO以外でも、翻訳品質を扱う国際規格はASTMが現在制作している。

 ・ASTM WK46396: New Practice for Analytic Evaluation of Translation Quality
 ・ASTM WK54884: New Practice for Holistic Quality Evaluation System for Translation

また国際規格ではないが「MQM」が2015年に完成している。
MQMは欧州委員会の翻訳品質評価にも使われているようであるし、学術論文でもMQMを使って品質評価する例を見かける。
さらにMQMの制作者がASTMにも関わっており、今後MQMの方法が国際的に受け入れられる可能性は高い。ISOで別プロジェクトが立ち上がる場合も、MQMから大きな影響を受けると思われる。

なお、日本翻訳連盟(JTF)で昨年作った「JTF翻訳品質評価ガイドライン」もMQMをベースとし、これとの互換性を維持している。
そのため日本語が関わる翻訳で品質評価する場合は、JTFのガイドラインを参考にしておけば将来的に「ガラバゴス化」する危険性は小さいのではないかと思う。
最新の翻訳書
血と汗とピクセル 『血と汗とピクセル』
筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについてはこちらをご覧ください。
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アプリ翻訳実践入門
『アプリ翻訳実践入門』


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