rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

翻訳/L10N

26 12月

シンプルMTスコアのウェブ版を公開

以前、機械翻訳の自動評価をGUIで手軽にできるデスクトップ・アプリを作成した(ブログ記事)。
しかしファイル・サイズがかなり大きくなってしまったり、ウイルス誤検出が原因でクラウド・ストレージ上に置けなかったりといった問題があった。

そこでインストール不要なウェブ版を作成して公開した。

 シンプルMTスコア
 http://mtscore.nishinos.com/
 https://mtscore.nishinos.work/
 (SSL対応でドメインを変更しました。2020-01-04)

シンプルMTスコア

機能的にはデスクトップ版と同じで、BLEUとGLEU(Google-BLEU)のスコアが計算できる。

入力された訳文はサーバー上で一切保存していないが、不安であれば機密情報の入力は避けていただきたい。
また、あまりに重い処理を避けるために、センテンス数は500を上限としている。これはサーバー負荷を見ながら変更するかもしれない。
17 12月

JTFほんやく検定合格でトライアル免除/受験要件緩和

日本翻訳連盟(JTF)は「ほんやく検定」を主催しています。

これまでも2級以上に合格するとJTFの「検定合格者リスト」(JTF会員のみ閲覧可)に掲載され、プロとして仕事を受けるチャンスがありました。しかし合格者(翻訳者)の側から翻訳会社にアプローチする機会は限られていました。

そこで、ほんやく検定2級以上の合格者に対してトライアル免除またはトライアル受験要件緩和という優遇措置を実施している翻訳会社をまとめて掲載することになりました。これにより、合格者の側から翻訳会社を探して翻訳者登録をしたりトライアルを受験したりできます。

本日現在、翻訳会社20社がこの優遇措置を実施しています。
たとえば、1級合格で「トライアル免除」、2級合格で「実務経験なしでトライアル受験可能」といった内容です。

実施会社や要件などの詳細情報は、以下「JTFほんやく検定」のページにある「合格者の特典」セクションの「●トライアル優遇措置対象翻訳会社リスト」をご覧ください。
https://kentei.jtf.jp/

あるいは、こちらから直接PDFを開くことも可能です。
https://www.jtf.jp/pdf/kentei_trial.pdf

jtf-kentei-traial

フリーランス翻訳者になるためにはトライアル合格が必須です。しかしそもそもトライアル受験に実務経験を求められるケースもあります。(そのため最近、実務経験を「盛る」トライアル受験者が出ているとの話も聞きます。)
上記の制度を利用すれば、実務経験がなかったり浅かったりしても、トライアル受験が可能になります。しかも一度検定に合格するだけで何社にもアプローチ可能なので、効率的です。

フリーランス翻訳者を目指している方は、ぜひこちらの制度を活用してみてください。

※ なお次の第72回ほんやく検定は2020年1月25日(土)実施で、申込み期限は2020年1月14日(火)17:30までです。
4 10月

翻訳品質を扱うISO 21999がキャンセル

ISOのウェブサイト(こちら)で公式発表されているが、10/3付で翻訳品質を扱うISO 21999はキャンセル(Deleted)になった。

規格の対象範囲(scope)をどこまで広げるかに関し、参加者間で意見が合わなかったのが原因である。リーダーらは「品質保証」まで扱うべきだと主張していたが、大半の国は「評価」に留めるべきだと考えていた。投票で「評価まで」と決まったのにもかかわらず、リーダーらが固執し、結局キャンセルになってしまった。
(確か2012〜2013年頃にも、ISO 17100を策定する過程で翻訳品質を扱う国際規格の話が持ち上がったものの、消えてしまったと聞く。)

ただし、翻訳品質評価自体の重要性は理解されているので、ISOで近々別のプロジェクトが立ち上がるかもしれない。



ISO以外でも、翻訳品質を扱う国際規格はASTMが現在制作している。

 ・ASTM WK46396: New Practice for Analytic Evaluation of Translation Quality
 ・ASTM WK54884: New Practice for Holistic Quality Evaluation System for Translation

また国際規格ではないが「MQM」が2015年に完成している。
MQMは欧州委員会の翻訳品質評価にも使われているようであるし、学術論文でもMQMを使って品質評価する例を見かける。
さらにMQMの制作者がASTMにも関わっており、今後MQMの方法が国際的に受け入れられる可能性は高い。ISOで別プロジェクトが立ち上がる場合も、MQMから大きな影響を受けると思われる。

なお、日本翻訳連盟(JTF)で昨年作った「JTF翻訳品質評価ガイドライン」もMQMをベースとし、これとの互換性を維持している。
そのため日本語が関わる翻訳で品質評価する場合は、JTFのガイドラインを参考にしておけば将来的に「ガラバゴス化」する危険性は小さいのではないかと思う。
27 8月

JTFスタイルガイドを更新

JTF日本語標準スタイルガイドが更新されました。

 JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)
 http://www.jtf.jp/jp/style_guide/styleguide_top.html

styleguide30


新しい第3.0版の大きな修正点としては以下があります。

・クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが「表示」(CC BY 4.0)に
これまでは「継承」(SA)が付いていたので、改変して再配布する際は同一ライセンス(つまり「継承」あり)とする必要がありました。
今後は適切にJTFのクレジットを記載するだけでよいということです。JTFに利用許諾の連絡をする必要もありません。
たとえば企業がJTFスタイルガイドをベースにして自社スタイルガイドを作り、取引先に配布するといったことが簡単にできます。

・Googleドキュメント上でも閲覧可
これまではPDFでのみ配布してきました。
Googleドキュメントの場合、DOCX、TXT、EPUBといった形式でもダウンロードできます。

細かい部分の修正は、スタイルガイド第3.0版の末尾にある改定履歴を参照してください。
19 7月

翻訳業界が社会にアピールすべき価値

昨日翻訳業界の会合に参加したところ、翻訳業界を社会にどうアピールし、認知してもらうかという話題が出た。

僕は「原文を作る段階から最終読者が読む段階まで」が産業翻訳が扱う範囲だと考えている。
もちろん案件で違いはあるが、基本的なプロセスは以下を想定している。

  1. クライアント企業で原文を作成

  2. 翻訳会社で翻訳前作業(翻訳者割り当て、資料やツールの準備、MT適用など)

  3. 翻訳担当者が翻訳作業

  4. 翻訳会社で品質保証(最終読者を想定した確認も含む)


だから機械翻訳(MT)システムからの出力だけが翻訳ではないし、翻訳者の訳出作業だけが翻訳でもない。クライアントも読者も巻き込み(通常読者の参加は難しいが)、プロセス全体を経て成果物を出して初めて産業翻訳の仕事になると思う。
いまMTが注目されているので、MT出力だけを社会にアピールしてしまうと、このプロセス全体を認識してもらえない。

単に飲み物を出すだけであれば自動販売機でも可能だ。そのため「飲み物を出す」という点だけに注目してしまうと、「喫茶店なんて自動販売機で代替できるんでしょ?」と考える人はいるはずだ。でも実際は自動販売機が普及しても喫茶店はなくならない。自動販売機では100円で飲料が買えるのに、なぜその何倍も払って喫茶店に入る人がいるのか? それは喫茶店は単に飲み物を出しているだけでなく、別の価値も提供しているからだ(コーヒーを飲みながら読書できたり、人と待ち合わせできたり)。

同様に、もし「翻訳業界=訳文を出す」と社会に認識されてしまうと「翻訳業界なんてMTで代替できるんでしょ?」と思われてしまう。
やはり翻訳業界が社会にアピールすべきは単に「訳文を提供する」という点ではなく、「最終読者であるユーザーや消費者の満足を高め、クライアント企業の利益やイメージアップに貢献する」といった点だと考える。
(もし単に訳文を出して欲しいだけであれば、Google翻訳などを使ってもらえばよい)

僕自身は翻訳会社におけるMT活用について反対ではないのだが、MTは人間翻訳者を代替できるものではない。人間は同じ人間である最終読者に(たとえば)共感し、そういった視点で訳文を確認できる。あるいは分野専門家の視点で訳文内容をチェックできる。だから代替というより、プロセス全体の中で持ち場あるいは役割が違うと考えている。

そこで最初の問いに戻り、翻訳業界をどう社会にアピールするかを考えた場合、単に「訳文を出す」仕事をしているわけではなく、最終読者の満足度向上なども含めたプロセス全体を通じ、クライアント企業に貢献していると伝えるべきではないかと思う。
★6/22発売の翻訳書★
血と汗とピクセル 『血と汗とピクセル』
筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについてはこちらをご覧ください。
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