rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

翻訳/L10N

4 10月

JTF翻訳品質委員会の委員長に就任

日本翻訳連盟(JTF)の「翻訳品質委員会」の委員長を私が務めることになりました。
前任の田中千鶴香さんが急逝されたため、それを引き継ぐ形です。とても田中さんのように進められないとは思いますが、精一杯努力したいと思います。

現在、翻訳品質委員会では以下の2つのドキュメントを制作、管理しています。
・日本語標準スタイルガイド
・翻訳品質評価ガイドライン

後者の「翻訳品質評価ガイドライン」は現在制作途中で、翻訳品質委員会の部会である「翻訳品質ガイドライン検討会」で議論しているところです。
昨今の機械翻訳の利用拡大などもあり、品質評価の重要さが認識されつつあります。どう品質評価をすべきかという部分について、JTFという業界団体が関与するのは大事だと考えています。

今後、成果などをウェブサイトで公開します。
ちなみにフェイスブックに翻訳品質委員会のページもあります。



ところで、10/13(金)に開催されるJTF翻訳セミナーに登壇します。
テーマは「それぞれの翻訳品質 〜発注企業、翻訳会社、翻訳者の視点から〜」で、翻訳品質に関する発表やディスカッションをします。
申込締切は3営業日前なので、10/10(火)です。
詳しくはこちら:
https://www.jtf.jp/east_seminar/index_e.do?fn=search
9 9月

JTFジャーナル291号にISO解説記事

JTFジャーナル(291号)が出ています。
http://journal.jtf.jp/

本号で私の連載は休みですが、ISOウィーン総会への参加レポートを書いています。
翻訳品質に関する規格である「ISO 21999」の状況です。

会員登録が必要ですが、2017年度まで記事は無料で読めます。


31 8月

イベント「pixivアプリに学ぶG11Nの実際」が9/12に

9/12(火)20時から「pixivアプリに学ぶG11N(グローバリゼーション)の実際」というイベントが開催されます。

イベントでは最初に私がソフトウェア・グローバリゼーション全般について解説します。
続いて、イラストコミュニケーションサービスを提供しているピクシブ社でどのようにソフトウェアをグローバル化しているかを紹介します。
その後、ご参加の皆さまからの質問を受けつつ、意見交換をするような流れになります。

場所は東京・千駄ヶ谷近く、参加費は無料です。

詳細や申し込みはこちら:
https://g11n.connpass.com/event/65428/
29 8月

10月のJTF翻訳セミナーは翻訳品質

10月13日(金)に日本翻訳連盟(JTF)主催の翻訳セミナーが開催されます。

 JTF翻訳セミナー
 http://www.jtf.jp/east_seminar/index_e.do?fn=search

タイトルは「それぞれの翻訳品質 〜発注企業、翻訳会社、翻訳者の視点から〜」です。
まず第1部では、最近の翻訳品質関連の業界動向を私が説明します。
続く第2部では、発注企業、翻訳会社、翻訳者という3者が「翻訳品質」について考えていることを各自発表したあと、パネルディスカッションを行います。

パネリストは以下の通りです(司会は私)。
・発注企業:上田有佳子さん(ネットアップ株式会社)
・翻訳会社:森口 功造さん(株式会社川村インターナショナル)
・翻訳者:高橋聡さん(JTF理事)

パネルディスカッションでは、会場からの意見や質問を受けつつ、表立っては言いにくい本音の発言をパネリストがする予定です。そのため録画DVDの販売はありません。ぜひ会場へどうぞ。
申し込み期限は10/10です。

25 8月

翻訳メモリーの使い方を学校で教えるべきか

先週、MultiLingual誌のサイトで「Career question: Do I really need to learn Trados?」という記事が掲載された。
筆者はアメリカの大学で翻訳を教えている人で、学生から「翻訳の仕事を得るのにTradosを習得する必要があるか?」という質問をよく受けるらしい。そこで求人データなどを基にしながら、Tradosというシェアの高い製品を習得することについて考察している。
結論としては、Tradosを買えるならそれを優先するが、別のも習得したらどうか、といったことを勧めている。

私も、Tradosなどの翻訳メモリーを使う意味を知ることが重要であって、特定ツールの操作を覚えることが重要ではないと思う。
翻訳メモリーを使う意味は「訳文の再利用と共有」という点にあると考える。過去に生み出された知識(対訳)を複数人で将来的に活用するということだ(注1)。
そういった意味を理解するには、Google Translator ToolkitやOmegaTのように無料で入手できるツールで十分だと思う。



一般の人が翻訳と聞くと、有名な翻訳家が小説や映画字幕を訳すようなイメージがあるのではないか。これは「文芸翻訳」などと呼ばれる。
もちろんそういう翻訳も存在するが、現在、翻訳会社が受注する案件の大部分は「実務翻訳」と呼ばれるものである(もちろん翻訳は翻訳会社以外でも発生するが、それを差し引いても大きい)。例えば、やや古いがJTFの2005年調査結果(PDF)を見ると、売上の9割以上が実務翻訳分野(コンピューター、特許、医薬・バイオなど)である。

文芸翻訳では1人の翻訳家が1冊訳すような方法が主流だと思う。一方、現代の実務翻訳では、分野にもよるが翻訳メモリーを活用して多人数で大量の文書を翻訳することがある。

両者の違いは大きい。
日本史の解説を読むと、元寇のとき日本の武士は「やあやあ、我こそは…」と名乗りを上げて1対1で戦おうとした。対して元軍は、名乗らず集団で戦ったとされている。
文芸翻訳と実務翻訳では、これに近いという印象がある。つまり単独か分担かということである。
どちらが良いか悪いかという話ではなく、目的に応じて戦法が違うというだけだ。大量の文書を短時間のうちに翻訳するなら、複数人で分担するという戦法が適している。

もし学生が将来翻訳を仕事にする場合、需要が大きい実務翻訳分野に進む可能性が高い。その際、翻訳メモリーの知識は必須で、翻訳の授業を設けている大学なら基本的な考え方くらいは教えるべきだろう。

ところが「翻訳」と名前の付く授業のシラバスを見ても、翻訳メモリー(や実務翻訳)に触れているケースは少ない。例えば、ac.jpドメイン以下で「翻訳 シラバス」でGoogle検索(https://www.google.co.jp/search?q=翻訳+シラバス+site:ac.jp)すると、翻訳に関する授業の情報が見られる。

たまに「大学は職業訓練をする場ではない」という主張がなされることがある。しかし大学が卒業生の就職先やら就職サポートやらをホームページに載せてアピールして学生募集するのであれば、職業に関わる知識やスキルを学生に教える責任もあるだろう。
もし学生が翻訳関係の仕事に就けると期待して入学したのに、現代の実務翻訳で重要な翻訳メモリーについてすら学べないのだとしたら、実に不幸だ。

こういった現実社会の需要に目を向けない日本の大学の現状を見ると、どの翻訳メモリーを教えるべきかで悩む冒頭の状況が羨ましくさえ感じる。



【注1】
翻訳メモリーのマイナス面も同様に知っておく必要がある。
例えば、翻訳メモリーを使うと既存訳に「引きずられる」ことがある。そうなると最適な訳出ができない。また、翻訳メモリーは1文単位で対訳を格納している。1文にしか目が行かないと、文章全体が見えなくなる。
筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについては会社のウェブサイトをご覧ください。
著書
ソフトウェアグローバリゼーション入門
インプレス刊
『ソフトウェアグローバリゼーション入門』

達人出版会刊
『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』


現場で困らない! ITエンジニアのための英語リーディング
『IT英語リーディング』


アプリケーションをつくる英語
紙版
『アプリケーションをつくる英語』

電子版
『アプリケーションをつくる英語』
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