rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

グローバル英語のスタイル

15 4月

グローバル英語のスタイル(24):代名詞が何を指しているか明確にする

代名詞 it、its、they、them、their が何を指すか明確でなければ、解釈や翻訳がうまくできないことがある。
言語によっては代名詞に「性別」が存在する。日本語では単に「それ」や「これ」とすればよいが、性別のある言語ではこのように処理することはできない。

A. 主格代名詞と目的格代名詞:it、they、them
Style Guide の例:
× Once you define the basic structure of your table, enhancing it is easy.
○ Once you define the basic structure of your table, enhancing the table is easy.
(参考訳:表の基本構造を定義すると、表を簡単に改善できるようになります。)

前者では it が basic structure を指しているのか、your table を指しているのか、明確ではない。後者のように it の内容を明確にすることで曖昧さがなくなる。
同じ単語の繰り返しは、書く側からすると冗長に感じるが、誤読や誤訳を防止するためには繰り返しても問題ない。

B. 所有格代名詞: its、their
× If a numeric variable has a character string as a formatted value, its unformatted numeric value is transposed.
○ If a numeric variable has a character string as a formatted value, then the variable's unformatted numeric value is transposed.
(参考訳:フォーマットされた値として文字列が数値変数内に格納されている場合、その変数のフォーマットされていない値は置き換えられます。)

前者の場合、its は下線が引いてある 3 つの名詞のどれを指しているのか確定できない。後者のように「variable's」と名詞を明示することで、内容が明確になって誤読がなくなる。

高校の英文法では無生物に「's」を付けることは望ましくないと言われているが、分かりやすくするために使うのは問題ない。



・本項目は、Style Guide の「5.1」の内容に該当する。
・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・背景が濃くなっている部分は引用箇所である。


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9 4月

グローバル英語のスタイル(23):And や or で接続された名詞の曖昧さを取り除く

接続詞である and や or でつなげられた名詞句は、かかり受けが曖昧になることがある。また書く側がそれに気づかないため、問題になることもある。
Style Guide の例:
○ We had apple pie and ice cream for dessert.
× We had apple pie and ice cream for dessert.

この例では、apple が pie だけにかかるのか、それとも ice cream にもかかるのかという点を問題にしている。
常識的に考えれば、apple は pie だけにかかる。しかし、apple ice cream という解釈も不可能ではない。このように、書く側からすれば何も疑問を持たないところで曖昧さが発生することがある。

これに対処する方法はいくつかある。

A. 各名詞句で同じ文法構造を使う
Style Guide の例:
× Table 8.1 shows average ages and salaries for employees in each division.
○ Table 8.1 shows average ages and average salaries for employees in each division.
(参考訳:表 8.1 は、各部門に所属する従業員の平均年齢と平均給与を表している。)

ある修飾語が複数の非修飾語にかかる場合の対処方法である。
後者では、average という単語を追加することで構造を同一にしている。これにより書いていると冗長に感じるかもしれないが、曖昧さはなくなる。

B. 接続詞の後に冠詞を入れる
上記 A とは異なり、ある修飾語が複数の非修飾語にかからない場合、非修飾語(名詞)のそれぞれに冠詞を追加して、独立した名詞として扱う。
Style Guide の例:
× Use the FILENAME statement to specify a logical member name and member type.
○ Use the FILENAME statement to specify a logical member name and a member type.
(参考訳:FILENAME 文を使用して、論理的なメンバー名と、メンバータイプを指定します。)


C. 名詞句の順番を変える
ある修飾語が最初の名詞句だけを修飾する場合、後の名詞句と順番を入れ替えると曖昧さがなくなる。
Style Guide の例:
× Be careful when your input includes leading blanks and semicolons.
○ Be careful when your input includes semicolons and leading blanks.
(参考訳:セミコロンと行頭スペースが入力内容に含まれる場合、注意してください。)


D. リストを使う
3 つ以上の名詞句が文末に並ぶ場合、リストすることを検討する。

E. 前置詞を繰り返し使う
1 つ目の名詞が前置詞句の一部であった場合、前置詞を繰り返して使うこともできる。
Style Guide の例:
× The stored query is executed when you use the view in a SAS procedure or subroutine.
○ The stored query is executed when you use the view in a SAS procedure or in a subroutine.
(参考訳:SAS プロシージャ内またはサブルーチン内でそのビューを使用すると、保存されているクエリが実行されます。)

前者では「SAS」が procedure だけにかかるのか、subroutine にもかかるのか分からない。後者のように前置詞を繰り返すことで、かかる範囲が明確になる。

E. 注を入れる
上記のような方法でかかり受けを明確にしようとすると、かえって文が変になってしまうことがある。その場合、翻訳者向けに何が何を修飾するのか、注意書きを入れることを検討する。



・本項目は、Style Guide の「4.6」の内容に該当する。
・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・背景が濃くなっている部分は引用箇所である。


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7 4月

グローバル英語のスタイル(22):動詞を修飾する言葉は文頭に移動する

動詞を修飾する言葉は文頭に移動すると読みやすくなる。
移動できる言葉として、Style Guide は次の 3 種類を挙げている。

A. 分子句
Style Guide の例文:
× Write a SYMBOL statement, using the fewest options possible, that changes the color of the plotting symbols to RED.
Using the fewest options possible, write a SYMBOL statement that changes the color of the plotting symbols to RED.
(参考訳:できる限り少ないオプションを使用して、プロット用記号の色を RED に変更する SYMBOL 文を書いてください。)

この分子句(Using…)は動詞 write を修飾しているため、文頭に移動する。

B. In order to
目的を表す「in order to」も、文頭に移動できる場合はする。

C. 副詞句
副詞句にはさまざまなものがある。Style Guide では次の例を挙げている。
× Avoid creating situations that require a message box to be displayed whenever possible.
Whenever possible, avoid creating situations that require a message box to be displayed.
(参考訳:可能であれば、メッセージ ボックスが表示されるような状況を発生させることは避けましょう。)


このように文頭に切り出すというのは、どこにかかっているのか(修飾しているのか)が明確だからである。
文中に置いておくと、かかり受けの関係が不明瞭になることがある。文頭に移動させることで、かかり受けの関係をはっきりさせられるため、誤読が減る。



・本項目は、Style Guide の「4.5」の内容に該当する。
・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・背景が濃くなっている部分は引用箇所である。


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5 4月

グローバル英語のスタイル(21):関係詞の限定用法には that を使う

関係詞の「限定用法」とは、先行する名詞を特定する方法である。限定用法の反対は「継続用法」であるが、次のような違いがある。

・限定用法
She has two sons who are doctors.
・継続用法
She has two sons, who are doctors.

前者では「医者をしている息子が 2 人いる」と息子を特定し、「医者をしていない息子がいる」可能性を示唆している。逆に後者は「2 人息子がいて、医者をしている」となり、「2 人の息子全員が医者をしている」ことを表している。

上記の例は人を指す who であるが、物を指す which も関係詞として使える。その際、限定用法では which ではなく that を使うようにする。このルールに従うことで、文に一貫性を持たせられる。
Style Guide の例:
× A DBMS client is an application which manages connections to a specific DBMS.
○ A DBMS client is an application that manages connections to a specific DBMS.
(参考訳:DBMS クライアントは、ある DBMS への接続を管理するアプリケーションです。)


which を継続用法として使う場合、「, which」とカンマを付加することが多い。



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「4.4」の内容に該当する。


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2 4月

グローバル英語のスタイル(20):関係詞節が何を修飾しているのか明確にする

関係詞とは、文同士を接続しつつ主語や目的語、または副詞になる語である。例えば that や which は主語や目的語となり(関係代名詞)、場所を表す where や時を表す when は副詞となる(関係副詞)。

本記事で説明する関係代名詞の that は、前に出現する名詞を修飾する。そのため、前に複数の名詞があると、どれを修飾しているの不明確になってしまう。何らかの工夫が必要となる。
Style Guide の例:
○ Click [Overview] to view short descriptions of the products that include information links.
× Click [Overview] to view short descriptions of the products. Each description includes information links to more-detailed information.
(参考訳:製品の説明を表示するには [Overview] をクリックします。それぞれの説明には、より詳細な情報へのリンクが含まれています。)

前者の場合、that 関係詞節が descriptions にかかるのか products にかかるのか判断できない。後者では文を 2 つに分け、description を修飾していることを明確にして、曖昧さを排除している。

上記の例では関係詞節の動詞が include であった。もし仮に名詞のいずれかが単数形であれば、それにはかからない。単数形を修飾するのは includes だからである。
このように動詞の形から、何を修飾しているのか判断できる場合もある。



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「4.3」の内容に該当する。


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筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
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