rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

グローバル英語のスタイル

31 3月

グローバル英語のスタイル(19):前置詞句が何を修飾しているか明確にする

「グローバル英語のスタイル(18)」では、only と not は修飾する部分の直前に置くというルールについて書いた。これとは逆に、前置詞句は修飾する部分の後ろに置く。ただし直後に来るとは限らないため、曖昧さが発生することがある。
例えば Style Guide では次の例を挙げている。
Enter text that you want to appear at the top of the window.

at の前置詞句が Enter を修飾している場合、「ウィンドウの最上部に入力する」と解釈できる。逆に to appear を修飾している場合、「ウィンドウの最上部に表示される」と解釈できる。どちらにも解釈できるため曖昧である。
特にソフトウェアのユーザー インターフェイスを翻訳する場合、実際にソフトウェアが手元になければ、確認できないため誤訳につながってしまう。

前置詞句で曖昧さに対処するには、次のような方法がある。

A. 前置詞句が of で始まる場合
前置詞句が of で始まる場合、曖昧になることはまずない。of の直前の名詞句を修飾している。そのため、何もする必要はない。
Style Guide の例:
For a text version of this Web site, go to text.uchicago.edu.

B. 前置詞句が動詞句を修飾している場合、移動を検討する
動詞句と前置詞句の間に名詞が入る場合、どちらにかかるか曖昧になる可能性がある。この場合、次のように対処できる。

・前置詞句を文頭に移動する
Style Guide では次の例で説明している。
× Only 17 characters are available for the table name on a standard table label.
On a standard table label, only 17 characters are available for the table name.
(参考訳:標準の表ラベルでは、表名に使えるのは 17 文字だけです。)

前者の場合、on で始まる前置詞句がどちらを修飾しているのか分からない。しかし、後者のように文頭に移動させることで、are available を修飾していることが明確になる。

・修飾している動詞の近くに前置詞句を移動する
Style Guide の例を引用する。
× The server enables a client user to share data across platform with other users.
○ The server enables a client user to share data with other users across platform.
(参考訳:このサーバーにより、クライアントのユーザーはプラットフォーム間で他のユーザーとデータを共有できる。)

with で始まる前置詞句を to share の近くに移動させることで、share を修飾していることが明確になる。

B. 前置詞句が名詞句を修飾している場合、関係詞節への変換を検討する
上記 A と同様、前置詞句の前に修飾の対象が複数あると、どれを修飾しているのか分からない。そこで前置詞句が名詞句を修飾してる場合、関係詞節へ変換すると曖昧さがなくなる。
Style Guide の例:
× The PRINT statement prints the data in the SPSS file.
○ The PRINT statement prints the data that is in the SPSS file.

前者の場合、in で始まる前置詞句は prints を修飾しているとも data を修飾しているとも解釈できる。しかし後者のように that で関係詞節にすることで、data を修飾していることが明確になる。

C. 必要であれば翻訳者向けの注意書きを付ける
どうしても曖昧さを排除できない場合、何を修飾しているのかという注意書きを付ける。これにより誤訳を減らすことができる。



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「4.2」の内容に該当する。


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30 3月

グローバル英語のスタイル(18):only と not は修飾する部分の直前に置く

通常 only と not は修飾する部分の直前に置くようにする。
どこを修飾しているのか不明確な場合、誤読が発生したり、解釈に時間がかかったりといった問題が発生する。

Only
Style Guide では次の例を挙げている。
× Artificial Neural Network forecasting only works in Version 7.0.

この場合、「Artificial Neural Network forecasting はバージョン 7.0 でしか動作しない」にも、「バージョン 7.0 では Artificial Neural Network forecasting しか動作しない」にも解釈できる。もし前者の意味を伝えたいのなら、次のようにする。
○ Artificial Neural Network forecasting works only in Version 7.0.

only はすぐ後ろにある「in Version 7.0」にかかる。

Not
not について、同様に Style Guide の例を挙げる。
× All information requests have not crossed my desk, but quite a few have.
Not all information requests have crossed my desk, but quite a few have.
(参考訳:すべての情報が私のデスクを経由したわけではないが、かなりの量は経由した。)

ここで not は all を修飾し、部分否定の意味になっている。all の直前に not があれば、すぐに部分否定であると分かる。

このように、only と not は修飾する部分の直前に置くと、意味が明確になる。



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「4.1」の内容に該当する。

補足:例文に「only」が表示されていなかった不具合を修正しました(3/30 11:44)

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26 3月

グローバル英語のスタイル(17):肯定文で書く

肯定文でも否定文でも書ける場合、肯定文を使うようにする。ただし警告など、否定文を使わなければならないケースでは使っても問題ない。

Style Guide の例:
× Add a statement to the program to specify that messages not be displayed.
○ Add a statement to the program to suppress messages.
 (参考訳:メッセージを非表示にするよう、プログラムに 1 文追加します。)

また、1 文中に not が 2 つ現れるような「二重否定文」はネイティブにとっても非ネイティブにとっても読みにくいので避ける。次に Style Guide の例を引用する。
× You cannot access databeses for which you do not have appropriate permissions.
○ You can access only databases for which you have appropriate permissions.
 (参考訳:適切な権限のあるデータベースにのみアクセスできます。)

意図を伝えることを主目的にするのであれば、文の構造はできるだけシンプルにすべきである。



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「3.12」の内容に該当する。


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25 3月

グローバル英語のスタイル(16):不明瞭な動詞構文は避ける

文は動詞を使って組み立てるが、ネイティブや非ネイティブを問わず、読みにくい構文がある。

A. Has または have + 過去分詞 + 名詞句
has や have の直後に過去分詞形がある場合、通常それは「動詞」である。しかし過去分詞形が「形容詞」の場合もある。
Style Guide の例:
× Each column has assigned attributes such as name, type, and length.

読者は「has assigned」が動詞であるのか、または「has」だけが動詞で「assigned」が形容詞なのか、すぐに判断できない。
前者の場合は「column が属性を割り当てた」と解釈でき、後者の場合は「column は割り当てられた属性を持っている」と解釈できる。よく読めば後者の解釈が正しいことは分かるのだが、読者に不要な負担がかかるし、機械翻訳では正確に解釈できない。
次のような文が望ましいと Style Guide は書いている。
○ Attributes such as name, type, and length are assigned to each column.
○ Each column has attributes such as name, type, and length.
(参考訳:各カラムには名前、種類、および長さなどの属性が割り当てられている。)

どちらも「have + 過去分詞」を避けて解釈の曖昧さを取り除いている。

B. Has または have + 名詞句 + 過去分詞
上記の「Has または have + 過去分詞 + 名詞句」と違って誤読を招くことは少ないが、文が複雑になるので避けたほうがよい。
Style Guide の例:
× The software already has the printing functions built in.
○ The printing function are already included in the software.
(参考訳:そのソフトウェアにはすでに印刷機能が組み込まれている。)


C. Must be、must have、must have been
助動詞 must は「義務」(〜しなければならない)を表すことが多いが、「肯定的な推量」(〜に違いない)を表すこともある。そのため、解釈の曖昧さが生じないような工夫が必要となる。



・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「3.11」の内容に該当する。


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24 3月

グローバル英語のスタイル(15):見慣れない構文は使わない

次に挙げる構文は、英語の非ネイティブは見慣れていないことが多く、機械翻訳でも問題が発生することがある。言い換える方法はいくつもある。

(1)受動態の get
受動態では「be 動詞 + 過去分詞」が通常であるが、be 動詞の代わりに get が使われることがある。
通常通り be 動詞を使うべきである。

(2)使役動詞の have と get
人や物が何かをする原因を作る使役動詞として have や get を使うことがあるが、言い換えた方がよい。
have は「have + 過去分詞」、「have + 動詞原形」、get は「get + 過去分詞」、「get + 不定詞」という形で使われる。
以下は Style Guide の例である。

・Have + 動詞原形

 × Have the sponser send a copy of the document to each member of the Project Team.
 ○ Ask the sponser to send a copy of the document to each member of the Project Team.
(参考訳:プロジェクト チームの各メンバーにドキュメントのコピーを 1 部送るよう、スポンサーに依頼してください。)

後者の方が動作の中身が明瞭である。

・Get + 過去分詞

 × In order to get these statistics printed in the log, the PRINTALL option must be in effect.
 ○ In order to print these statistics in the log, you must specify the PRINTALL option.
(参考訳:ログにある統計を印刷するには、PRINTALL オプションを指定しなければなりません。)


(3)理由を説明する in that
できるだけ because を使って理由を説明するようにする。

(4)Need not
「必ずしも必要でない」という意味で使う場合、「do not need to」を使う方が誤解がなくなる。

(5)倒置
英語では通常、動詞より主語が先に来るが、これが逆にする使い方を倒置と呼ぶ。
倒置することで、ある語を強調できるため、場合によっては有効であるが、可能であれば避けた方がよい。次は Style Guide の例である。

 × Only when stored in an integer variable is the value truncated.
 ○ The value is truncated only when it is stored in an integer variable.




・Style Guide とは『The Global English Style Guide: Writing Clear, Translatable Documentation for a Global Market』を指す。
・本項目は、Style Guide の「3.10」の内容に該当する。


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筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
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