IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

カテゴリ: 書評

一企業内でしか通用しない「ジェネラリスト」の時代は終わり、複数の企業から専門的な仕事を請ける「エキスパート」の時代が到来する。
そのような時代を生きるために必要なセルフブランディング(個人のブランド化)の方法について書かれている。

その方法とはタイトルにもあるようにネットを利用することだが、それには戦略が必要になる。
例えばプライバシーをコントロールしつつも自分の情報を思い切って出したり、ブログや Twitter で有益な情報を発信したりといった点である。
また、プロフィールサイトや情報収集サイトを利用して効率を上げることも勧められている。

本書は、まず今後の社会の姿(エキスパートの時代)を示し、次にその対応策(セルフブランディング)について解説し、最後に具体的なツールをいくつか紹介するという構成になっている。
ツールの紹介はアカウントの登録方法なども含めて非常に丁寧であり、日ごろインターネットを使用している人であれば、すぐ理解できるだろう。


個人的には、序盤の終身雇用の崩壊や非正規雇用の増加に触れている部分で、もう少し統計的(客観的)な情報があればよかったように感じる。例えば二十代の正規雇用・非正規雇用の割合の推移を示すグラフなどある。ただし統計があると逆に敬遠してしまう読者もいる可能性もあるので、トレードオフかもしれない。

また、91ページに「ブログであればコメント欄を設置しないもの一つの方法だ」とある。
ブログサービスによっては、コメントは受け付けるものの管理者が表示するかどうかを選択できるという機能が付いていることがある(例えばこの Livedoor ブログにもある)。この機能を使えばコメント欄を設置しておいても特に問題はないため、細かい話ではあるが、そういった点が書かれていてもよかったように思う。


私の感想としては、本書に強い共感を覚えた。
私自身少し前までフリーランスで翻訳者をしていたため、特定企業に依存せずに自己の専門技能を向上させ、その専門技能によって生きていくことが重要だと感じていたからである。
しかし具体的に個人として何をしたらよいか、またどのようなツールを使ったらよいかを明確に理解していたわけではなかったため、内容は非常に有益だった。

偶然にも本書の購入前日に、休眠させていた Twitter アカウントを復活させてブログとリンクし、佐々木さんのフォローを開始していた。そのため、Twitter の活用方法はタイムリーな話題であった。
さらには半年ほど前に、本書に登場する SBI ビジネスで佐々木さんの「マイネットワーク」に加えていただいていた。
個人的にはさまざまに縁のある本である。


ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術 (宝島社新書)ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術 (宝島社新書)
著者:佐々木 俊尚
販売元:宝島社
発売日:2010-01-09
おすすめ度:4.0
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大学生の頃は哲学関係の本をかなり読みました。現代フランス哲学やら言語哲学やらと並び、科学哲学も好きでした。
実はまだこの本は前半しか読んでいません。非常に内容が濃くて面白かったので、途中ですが感想を書いてしまいました。

この本の前半は科学哲学の歴史の本質的な部分が簡潔にまとめられていて、アリストテレスからニュートンを経てアインシュタインに至るまでの流れがざっとつかめます。
しかし簡潔なわりに、挙げられている例は説得力があります。
例えば古典力学(ニュートン力学)からアインシュタインの相対論的力学への「進歩」を説明する部分があります。

ところで、アインシュタインの相対的力学による「質量」の定式は次のものである。

m = m0 / √(1 - (v2 / c2))
c は光速度、v は物体の速度、m0 は静止質量

これは、光速度 c を物体の速度 v に対して無限大に大きいとみなしてよい(我々の周りの物体はすべてそうである)ときには、v2/c2 は 0 として無視することができ、その場合は、相対論的力学の質量 m は古典力学の静止質量 m0 に帰着するということを教える。いいかえれば、相対論的力学は古典力学に対してメタ理論の役割を果たし、古典力学の妥当範囲(妥当条件)を明らかにする。このように、後なる相対論的力学は、先なる古典力学の妥当範囲を画定し、その点でまさに相対論的力学は古典力学に優越することが示されるのである。
ちょっと引用が長くなりましたが、このように具体的に簡単な数式を出して説明しているので理解が進みます。
ただし個別の用語(例えば「通約不可能性」)が詳しく解説されているわけではないので、ある程度の前提知識が要るかもしれません。

後半の「心の哲学」の部分はこれから読みます。


科学の世界と心の哲学―心は科学で解明できるか (中公新書)科学の世界と心の哲学―心は科学で解明できるか (中公新書)
著者:小林 道夫
販売元:中央公論新社
発売日:2009-02
おすすめ度:4.0
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普段は翻訳ばかりしていて話すことがないので、英語でのスピーチやミーティングはあまり得意ではありません……。
ところが現在、大学院の PBL(プロジェクトベースの学習方法)グループでベトナムの大学院生たちと共同でソフトウェアを開発しているため、ビデオ会議で英語を話す必要があります。
そこでミーティング英語と銘打たれた本を買い、特有のフレーズをいくつか暗記しました。
それはそれで役に立つのですが、なかなか応用が利きません。
費用対効果というか、暗記量に対する応用場面が少なすぎます。

何か良い本はないかと探していたら、この本を見つけました。
具体的なフレーズを覚えさせるのではなく、タイトルにもあるように「思考法」を解説しています。

(1)英語の情報パッケージ
(2)潜在意識のテンプレート
(3)滑らかなサウンドストリーム
(4)成功を左右する雑談
(5)メロディーとそこに隠された意味
(6)標識となる言語の威力
(7)メッセージデザイン

たとえば(1)の場合、英語では思考の最小単位は「文節」であり、文節で区切って情報をパッケージ化するとよい。
(2)の場合、ネイティブスピーカーの思考テンプレートは「実行者 → アクション → 目標」となっているため、それを使うと理解されやすい。
などという具合に、7 つの思考法について解説しています。

私はあまり英語学習の本を買わないので比較できませんが、これは非常に良いと思いました。
目から鱗の優れた一冊で、特に例文暗記でうんざりしている人には良いかもしれない。
あと、(私もそうですが)TOEIC の点数は高いのに、あまりしゃべれない人にもお勧めです。


ドクター・ヴァンスの 英語で考えるスピーキング―すらすら話すための7つの思考法ドクター・ヴァンスの 英語で考えるスピーキング―すらすら話すための7つの思考法
著者:ウィリアム A. ヴァンス
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2009-02-16
おすすめ度:4.5
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池田信夫氏のお勧め本で見て買いました。
特にデジタル経済における「無償」(Free)について考察した本です。

無償の歴史(カミソリのジレット社のおまけなど)から始まり、現在のインターネットの無償サービスに至るまで、さまざまな無償サービスの形態を解説しています。
特に有用だと思ったのは最後のまとめで、「無償の法則 10」「フリーミアム(Freemium)の戦略」「無償のビジネスモデル 50」について触れています。

その 3 つについて一部を紹介:

◆ 無償の法則 10
 1. デジタルであれば遠かれ近かれ無償になる
 2. 財も無償に向かうが、それほど強力ではない
 3. 無償化は止められない
 4. 無償から利益を上げることは可能
 5. マーケットを再定義せよ

◆ フリーミアムの戦略
 ・自分にとって最適なフリーミアム モデルを探す
 ・適切なコンバージョン率は何か
 ・無償の顧客の価値は

◆ 無償のビジネスモデル 50
 ・直接補償型
  - ハードウェア有償、ソフトウェア無償(IBM や HP の Linux)
  - ハードウェア無償、ソフトウェア有償(ハードウェアをコスト以下で提供するゲーム機)
  - ショー無償、ドリンク有償(ストリップ クラブ)
  - ショー有償、ドリンク無償(カジノ)

 ・第三者補償型
  - コンテンツ無償、読者へのアクセスを販売(広告メディア)
  - 閲覧ソフト無償、文書作成ソフト有償(Adobe)]
  - 女性無償、男性有償(バー)
  - リスト無償、検索有償(Craigslist のニューヨーク版不動産)
  - レジュメ一覧無償、詳細検索有償(LinkedIn)

 ・フリーミアム(一部ユーザーが他のユーザーを補償)
  - 基本情報は無償、詳細情報は使いやすいフォームで有償(BoxOfficeMojo)
  - Web コンテンツ無償、印刷物有償(雑誌から書籍まで)
  - コンピュータ間の通信無償、コンピュータ電話間の通信有償(Skype)
  - 写真共有サービス無償、追加ストレージ有償(Flickr)
  - 仮想の旅行無償、仮想の土地有償(Second Life)


ここに全部は書きませんでしたが、最後のまとめを読むだけでも価値はあるのではないかと思います。


Free: The Future of a Radical PriceFree: The Future of a Radical Price
著者:Chris Anderson
販売元:Hyperion
発売日:2009-07-07
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Android プログラミングを勉強するのに本を数冊買った。

Android は Java 言語でコーディングするので、まず Java は必須です。
ただし、その手法はかなり特殊です。
すでに用意されているクラスを継承してプログラミングするというケースが多い。
そのため Java が分かっていてもすぐに Android アプリケーションが作れるようになるわけではありません。
Android 独特のやり方を覚えなきゃならない。

他にも、モバイルはメモリや電力に限りがあるため、アプリケーションがバックグラウンドに回ったときの処理方法まで考えなければならないことがあります。
ここがリソースが豊富なデスクトップや Web のアプリケーションとは違う部分です。

『初めてのGoogle Androidプログラミング サンプルで学ぶ必須作法と基本手順』(ジェローム・ディマジオ)
サンプルを作りながらプログラミングを覚えていくという伝統的な方法を採用している。
ただ、バージョンがやや古くなってしまっている(SDK 1.0)ので、今から買うのはどうだろうかと思う。

『初めてのAndroid』(Ed Burnette)
こちらも「数独」のサンプルを徐々に発展させながら勉強していく。
だから途中の章を飛ばすとちょっと分からなくなってしまう・・・。(サンプルコードは入手できますが)
Amazon での評価が低いのだけど、1 から順に学習するのであれば、厚くはないし、それほど悪くないと思う。

『Google Androidアプリケーション開発入門 画面作成からデバイス制御まで――基本機能の全容』(木南 英夫)
もし 1 冊だけ買うならこれがよいと思う。
2009 年 6 月発売で、情報も最新。
サンプルを使っている点は同じだが、それぞれのサンプルが独立しているので、前の章から順番にやっていく必要はない。
あと機能の解説も細かく、レファレンス本に近い使い方もできる。
Android マーケットへの出し方や付属ツールの使い方など、周辺の情報も記載されている。

Android はものすごい速さで進化しているから、本を出す方も大変だ。
翻訳なんてしてたら、すぐに古くなってしまうし・・・。


Google Androidアプリケーション開発入門 画面作成からデバイス制御まで――基本機能の全容Google Androidアプリケーション開発入門 画面作成からデバイス制御まで――基本機能の全容
著者:木南 英夫
販売元:日経BP社
発売日:2009-06-04
おすすめ度:4.5
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