IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

カテゴリ: 書評

カート・ボネガットの「Cat's Cradle (猫のゆりかご)」を読んだ。

◆内容は・・・

あるノーベル賞科学者が「アイス9」という物体を発明した。
これは触れた水を結晶化させ、結晶化した水が新たなアイス9に変わるというもの。
それで例えば池にアイス9を投げ込むと、池が結晶化し、それにつながっている川が続けて結晶化し、さらに川が注ぎ込む海が結晶化し・・・という具合に連鎖していく。
それで世界が凍ったような状態になるわけです。

この科学者が死ぬとき、3人の子供がアイス9を受け取った。
ある作家は、この子供たちが今カリブ海のとある国に住んでいるらしいことを突き止める。
そしてこの作家が子供たちに会おうとカリブ海の国に向かい、いろいろな出来事に巻き込まれるわけです。
(結末に近いところは書きませんが、もっと知りたければ Wikipedia でも)

◆英語は・・・

原書で読んだのですが、英語自体はやや難の部類に入りそう。
ただ章段がいくつにも分かれていて区切りをつけやすいので、読み進めること自体は楽だった。

ところで、少なくとも 3〜4 冊程度(原書で)読んだ作家の中で、英語が読みやすかったのはアガサ・クリスティーとヘミングウェイあたりですね。
今回のボネガットや前回読んだサリンジャーは、これらよりも難しかった。

次は「ユリシーズ」あたりを読みたいのだけど、ちょっと学校が忙しくなってきたからお預けかな・・・。

Cat's Cradle (Penguin Modern Classics)Cat's Cradle (Penguin Modern Classics)
著者:Kurt Vonnegut
販売元:Penguin Classics
発売日:2008-05-01
おすすめ度:5.0
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最近また文学を読み始めたのですが、次に何を読めばよいか参考になる資料がないかと思って探していました。
英語で書かれた文学のベスト 100 みたいなのをいくつかの組織が出しているみたいです。

◆ ランダムハウス社:モダンライブラリ
(1998年発表)
http://www.randomhouse.com/modernlibrary/100bestnovels.html

リンク先の左列の「THE BOARD'S LIST」が委員会選出のベスト100、右列の「THE READER'S LIST」が読者投票によるベスト 100 です。
読者の方はちょっと微妙なので、ここは権威がありそうな委員会の方で話を進めましょう(”文学”なんていう制度は権威で成立している)。

ベスト 10 を見ると・・・

  1. ユリシーズ: ジェームズ・ジョイス
  2. 華麗なるギャッツビー: スコット・フィッツジェラルド
  3. 若き芸術家の肖像: ジェームズ・ジョイス
  4. ロリータ: ウラジミール・ナボコフ
  5. すばらしい新世界: オルダス・ハクスリー
  6. 響きと怒り: ウィリアム・フォークナー
  7. キャッチ22: ジョゼフ・ヘラー
  8. 真昼の暗闇: アーサー・ケストラー
  9. 息子と恋人: D.H. ローレンス
  10. 怒りの葡萄: ジョン・スタインベック

ほとんど知っているタイトルばかりですが、恥ずかしながら 5 位と 8 位はまったく知らなかった。名前すら聞いたことなかった・・・。


◆ ラドクリフ出版コース
(1998年発表)
http://www.randomhouse.com/modernlibrary/100rivallist.html

それで、このランダムハウスのに対し、Radcliffe Publishing Course というところもベスト 100 を出してきたらしい。
(Radcliffe Publishing Course というのは、もともとラドクリフ大学の出版コースらしく、今はコロンビア大学に吸収されていてもうないようだ)

  1. 華麗なるギャッツビー: スコット・フィッツジェラルド
  2. ライ麦畑でつかまえて: J.D. サリンジャー
  3. 怒りの葡萄: ジョン・スタインベック
  4. アラバマ物語(To Kill a Mockingbird): ハーパー・リー
  5. カラーパープル: アリス・ウォーカー
  6. ユリシーズ: ジェームズ・ジョイス
  7. ビラブド: トニ・モリソン
  8. 蝿の王: ウィリアム・ゴールディング
  9. 1984: ジョージ・オーウェル
  10. 響きと怒り: ウィリアム・フォークナー

こちらはほとんど知っていた。
(ちょっと「政治的正しさ」みたいなものが見えますが、まあいいでしょう)

共通なのは、「ユリシーズ」、「華麗なるギャッツビー」、「怒りの葡萄」、「響きと怒り」ですか。


◆ タイム誌
(2005 年発表)
http://www.time.com/time/2005/100books/the_complete_list.html

あのタイムもベスト 100 なんて出してます。
こちらは順位が付いてないので、だらだらと 100 冊。
どうもタイムが刊行された 1923 年以降が対象らしく、選者がわざわざ「1922 年のユリシーズは入っていません」みたいなことを言っています。
やはり「ユリシーズ」はすごいのか。


◆ BBC
(2003 年発表)
http://www.bbc.co.uk/arts/bigread/top100.shtml

イギリスの BBC までベスト 100 に手を出していました。
ただしこちらは読者投票らしく、ハリーポッターとかが上位に入っています。
これはパスでいいか・・・。


そもそもこういう芸術価値がかかわるものに順位を付けられるかどうかは分かりませんが、議論を起こさせるにはちょうどいいですね。
日本でも 10 年くらい前に福田和也氏が「作家の値うち」という本で、日本の作家の作品に点数を付けていました。
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サリンジャーの「The Catcher in the Rye」(ライ麦畑でつかまえて)を読み終わった。
サリンジャーは高校生のときに何冊か読んでいたのですが、一番有名なこれだけはそのうち原文で読もうと思って読んでなかったんです。

メモを取っていたわけではないけど、頻繁に使われていた単語や表現は以下のようなのがありました。
ちゃんとした意味は辞書で調べていただくとして、僕が受けた印象による訳語を載せておきます。
たぶん 1945 年の作品なので、もう使われてないのもあるだろうけど・・・。

◆ 悪口、罵倒系
  horny → いやらしい奴
  corny → ダサい奴
  lousy → 嫌な奴
  moron → 馬鹿者
  pain in the ass → むかつく奴

"pain in the ass" と罵られた女の子は「生まれてからそんなこと言われたことないのに」とものすごくショックを受けていた。
あと f*ck も出てきましたが、主人公の妹が通う小学校の壁に落書きされていて、それを見た主人公が「子供はこんなの見ちゃいかん!」などと言ってこすって消していました。
当時はそれほどお下劣な言葉だったのでしょうな。
この主人公は結構悪口を言うくせにね・・・。

◆ 丁寧、愛情系
  old [人名] → 〜さん、〜くん、〜ちゃん

◆ 萌え系
  〜 kill me → 〜に萌えた、〜はウケた、〜には笑った

どうしようか迷ったのだけど、「萌え系」などと分類しておいた。
というのも、主人公の妹が何かかわいらしいことを言ったり、怒って膨れたりする場面で、「She killed me.」などと言うわけです。
微笑ましい印象を受けたような場面で使うのでしょう。


ところでアニメ「攻殻機動隊」に The Catcher in the Rye からこんな引用があります。

I thought what I'd do was, I'd pretend I was one of those deaf-mutes.
(僕が考えていたのは、聾唖者の振りをしてみようということだった)

この一文がどこで登場してくるのだろうと注意して読んでいたら、かなり終わりに近い場面で出てきた。
主人公が学校を除籍処分になって寮から出るものの、実家には帰れない。
それで、そのままコロラドかどこかの田舎に行き、ガソリンスタンドでバイトでもしながらお金をため、山小屋みたいなのを建ててひっそり暮らそう、などと考えている場面です。

先週カート・ボネガットの「Cat's Cradle」を買ったので、今度はそれを読もうと思います。

The Catcher in the RyeThe Catcher in the Rye
著者:J. Salinger
販売元:Penguin
発売日:1994-08-04
おすすめ度:4.0
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