rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

英語

18 7月

新しくIT的な意味が追加された英単語

英語辞書を出版しているオックスフォード大学出版局は毎年「今年の英単語」を発表している。
そのような英単語以外にも辞書には言葉が追加され続けており、同局のOxford Advanced Learner's Dictionary(OALD。オックスフォード現代英英辞典)に過去数年間で追加された言葉は以下にまとめられている。

 Recent Additions to OALD
 https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/wordlist/new_words

中にはテクノロジーの進展などで新たな意味が追加された言葉もある。
特に私の専門であるITと関連したものをいくつか見てみたい。

◆ 2018年10月追加

fulfilment[名詞]フルフィルメント
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/fulfilment(4番目の意味)

インターネット通販における受発注や発送などの業務全体のこと。アマゾンなどがフルフィルメントの代行サービスを提供している。
もともとは(約束などの)「履行」や「遂行」という意味。

◆ 2018年3月追加

curator[名詞]キュレーター
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/curator(2番目の意味)

自分の知識に基づき、特にインターネット上で記事や写真などを選んで投稿する人のこと。
もともとは博物館などの「学芸員」。

ghost[動詞]連絡を断つ
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/ghost_2(3番目の意味)

人間関係を終わらせようと、オンラインでの連絡を断つこと。
この言葉は私は初めて聞いた。
もともとは名詞で「幽霊」だが、動詞だと「ゴーストライティングをする」意味らしい。

unicorn[名詞]ユニコーン企業
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/unicorn(2番目の意味)

時価総額が10億ドル以上の新興企業のこと。IT関連企業が一般的。
もともとは「一角獣」。

◆ 2017年10月追加

crawler[名詞]クローラー
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/crawler(3番目の意味)

ウェブ上で情報を取得して回るプログラムのこと。
crawlは「はう」という動詞(水泳の"クロール"もここから)なので、もともとは「はいはいする赤ちゃん」とか、イギリスでは「おべっか野郎」とかいった意味。

◆ 2017年3月追加

deprecate[動詞]非推奨にする
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/deprecate(2番目の意味)

ソフトウェアの古い機能などに関して、使用はできるものの、控えるべきだとすること。
もともとは「非難する」という意味。
翻訳者になりたての頃、この単語を見て訳すのにとても困ったことを思い出した。「非推奨」という訳語を作った人はすごい。

◆ 2016年3月追加

MVP[名詞]
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/mvp(2番目の意味)

Minimum Viable Product(実用可能な最小限の製品)のことで、小さいが使えるソフトウェア製品をまず作り、そこから徐々に改善するケースで使われる言葉。
もともとと言うか、MVPとしてよく知られているのはスポーツにおけるMost Valuable Player(最優秀選手)だろう。

◆ 2015年12月追加

build[名詞]ビルド
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/build_2(3番目の意味。2〜5が新規追加)

通常は開発途中にあるソフトウェアのバージョン。
buildと聞くと、すぐに動詞(建設する)が頭に浮かぶ。しかし名詞もあり、1番目の意味は「体格」らしい。
またリンク先には載っていないが、ゲームにおける「キャラクターの育成方法」もbuildと呼ばれる。


level[名詞](ゲームの)レベル
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/level_1(7番目の意味)

日本語で言うところの「面」や「ステージ」を指す。RPGなどにおけるキャラクターの"レベル"ではないので注意。
もともとは「水準」といった意味。


この記事は以上です。
21 5月

最新の「Microsoft Writing Style Guide」が無料で公開

つい最近知ったのですが、2018年2月にマイクロソフトが英語スタイルガイド「Microsoft Writing Style Guide」を無料公開していたようです。

Microsoft Writing Style Guide
https://docs.microsoft.com/ja-jp/style-guide/welcome/

ms-styleguide

これまでIT分野の英語スタイルガイドとして重要な位置を占めてきた『Microsoft Manual of Style』の後継となるようです。
The Microsoft Writing Style Guide replaces the Microsoft Manual of Style, a respected source of editorial guidance for the tech community for more than 20 years.

従来の『Microsoft Manual of Style』は2012年に第4版が出たので、6年ぶりの更新となるようです。
また同書は有料で販売されていましたが、「Microsoft Writing Style Guide」はウェブ上で無料公開となりました。

古い『Microsoft Manual of Style』では、全般的なスタイル解説に加え、個々の単語の使い方を解説するという特徴を持っていました。
新しい「Microsoft Writing Style Guide」も同様に、スタイル全般 + 個々の単語の解説という構成になっています。
たとえば「abort」という単語についてはこう解説があります。
Don't use abort in content or user experiences for a general audience. If abort appears in a UI that you can't edit, use an alternative term to describe the customer action.

要するに、abortという単語は一般向けには使わず、UIに出てきたら言い換えよということです。言い換え候補として以下が挙がっています。
  • End: use for communications and network connections.

  • Close: use for apps and programs.

  • Stop: use for hardware operations.

  • Cancel: use for requests and processes.

このように、1つの単語についてもかなり解説が詳しいので、英語を書くのに悩んでいる日本人にとっても大いに参考になるはずです。



昨年、Googleが開発者向け文書のスタイルガイドを公開しました。
これはこれで簡潔にまとまっていて便利なのですが、やはり英語ライティングのリソースに関してはマイクロソフトに一日の長があります。
「Microsoft Writing Style Guide」は無料でアクセスできるので、英語を書く際に活用してみてはいかがでしょうか。

28 10月

IT分野の英文サンプルを検索できるサイトを作りました

英語を書く際、実在する英文サンプルを参考にしたいときがあります。
しかしウェブ検索だとうまく引っかからなかったり、自分が書いているドキュメント・タイプに合致した表現を検索結果から取捨選択しなければならなかったりします。
こういうときには分野に特化したコーパス(言語資料)があると便利です。

そこで、IT分野で書く機会がありそうなドキュメントの英文コーパスを作ってみました。

IT英文サンプル検索コーパス
http://itenglishsearch.nishinos.com/



英語原文に対して(ほぼ機械翻訳で)日本語訳を付けてあるため、日本語検索キーワードから英文サンプルを見つけることも可能です。
収録したドキュメント・タイプは「UI」、「ユーザー・マニュアル」、「開発者ガイド」の3つです。合計のワード数は20万超(執筆時点)で、今後も増やしていく予定です。
詳しい使い方や注意点は、上記ページのリンク先で説明しています。



ここからは技術的な話です。
上記サイトはGoogle Apps Script(GAS)のHTML Serviceで作っています。データはGoogleスプレッドシートにまとめておき、それに対して検索をかけ、結果をGoogle Sitesに埋め込んで表示するという流れです。
スプレッドシートの中はこんな感じです:



当初はクラウドでサーバーを立ててデータベースを用意しようとも思ったのですが、それほどアクセスが多いわけでもありませんし、やはりスプレッドシート形式だとちょっとした更新作業や内容確認などが楽なので、運用の手間やコスト(Googleのは無料)を考えてGASを使うことにしました。
(ただし動作は若干遅いかもしれない)

Googleスプレッドシートにデータを集めて検索してもらう方法は、例えばIT企業や翻訳会社が自社の「用語」をまとめておき、それを社内外から参照してもらうようなこともできそうです。
Googleアカウントでアクセス制限をかければ、関係者(例:外注契約した翻訳者)のみに使ってもらうことも可能です。スプレッドシートならITに疎い人でも更新作業はできるでしょう。

以上です。
10 9月

Google開発者向け文書スタイルガイドの要点

Googleが開発者向け文書で使っていた英語スタイルガイドが社外に公開された(Googleブログ)。
URLはこちら:

 Google Developer Documentation Style Guide
 https://developers.google.com/style/

MicrosoftやIBMは自社の英語スタイルガイドを書籍(リンク:MSIBM)として販売するしているし、Appleは公開(リンク)している。Googleもマテリアル・デザインの一部としてスタイルを公開してはいる(リンク)が、分量が少ないため、他社と比べるとどうしても見劣りした。
そのため、「開発者向け文書」を対象としてはいるものの、ある程度の規模のスタイルガイドが公開されたのは意義深い。

そこで今回は、同スタイルガイドの要点(highlight)のみについて読んでみたい。

 Highlights
 https://developers.google.com/style/highlights

Highlights

◆Tone and content(トーンとコンテンツ)
・Be conversational and friendly without being frivolous.

 → 会話っぽく、親しみがある感じだが、軽すぎないように
 いきなり非ネイティブにとって難しい…。ただいくつか具体例が挙げられている。例えば、
 - すべての文を同じフレーズ("You can ..."や"To do")で始めない
 - 本当に高揚するような状況以外では、感嘆符(!)は避ける
 - 指示の文で「please」は不要

・Don't pre-announce anything in documentation.
 → 将来の機能や製品について書かない
 これはコンテンツに関する内容だが、Google社内では重要だったのかもしれない。一般的なスタイルガイドとしてはあまり意味がない項目だと思われる。

・Use descriptive link text.
 → リンク先を説明するようなテキストにする
 要するに「ここをクリック」みたいなのは避けよ、ということになる。だから本ブログ記事にある書き方もダメで「Appleは公開(リンク)している」ではなく「Appleは公開(Apple Style Guide)している」となる。

・Write accessibly.
 → アクセスしやすいよう書く
 障がいのある人だけでなく、海外の(英語が母語でない)ユーザーや古いブラウザーを使っているユーザーにとってもアクセスしやすくするということらしい。
具体的には、文法や句読点を正しく使ったり、能動態や現在形を使ったり、スラングなどは避けたり、といった点が挙げられている。

・Write for a global audience.
 → 世界中の読者に向けて書く
 翻訳されることを意識しながら書くということだ。例えば、短く明瞭な文を書く、一貫性を持たせる、略語を使わない、特定文化の色が濃すぎないようにする、といった点が挙げられている。最後のは、例えばタッチダウン(アメフト)やホームラン(野球)みたいな用語は、そのスポーツが普及していない国では理解されにくい、ということだ。

◆Language and grammar(言葉づかいと文法)
・Use second person: "you" rather than "we."

 → 二人称(you)を使って書く
 読者をyouで指して書きましょうということのようだ。

・Use active voice; make clear who's performing the action.
 → 能動態を使う。行為者を明確にする
 受動態を使うと行為者をぼかすことができる(例:The file can be downloaded.)が、可能な場面ではそれを明確にしましょう(例:You can download the file.)ことだ。

・Use standard American spelling and punctuation.
 → アメリカ式のスペルと句読点を使う
 例えばcenter(米)とcentre(英)がある。ちなみにスタイルガイドに掲載されていたのが、英米で違うスペルの一覧(リンク)が興味深い。

・Put conditional clauses before instructions, not after.
 → 条件を表す節は、指示よりも先に書く
 スタイルガイドに挙げられている例だと、
  ✕ Click Delete if you want to delete the entire document.
  ◯ To delete the entire document, click Delete.
となる。
 これはテクニカル・ライティングでよく言われる点で、最初に指示「Click Delete」を書くと、いきなり削除してしまう人がいるとされるためだ。

・For usage and spelling of specific words, see the word list.
 → ある単語の使い方とスペルはWord listを参照
 この語リストは非常に役に立ちそうだ。例えば「app」か「application」かで迷ったら、ページ内検索すると「appを使う」と出てくる。ほかも、deselectは使わず「clear」にする、disableは使わず「turn off」にする、といった項目がある。

◆Formatting, punctuation, and organization(書式、句読点、構成)
・Use sentence case for document titles and section headings.

 → 文書のタイトルとセクション見出しでは、センテンス・スタイル(sentence case:最初の単語のみキャピタリゼーション)にする
 キャピタリゼーションとは、単語の最初の文字だけ大文字にすること。
 つまり、上記の例は、
  ✕ To Send a Message to Other Users
  ◯ To send a message to other users
ということになる。
 ちなみに✕の例文(タイトル・スタイルとも)でも、aとtoは小文字になっている。タイトル・スタイルでキャピタリゼーションする場合も、冠詞や短い前置詞などは小文字のままになるというルールがある。

・Use numbered lists for sequences.
・Use bulleted lists for most other lists.

 → 手順では数字のリストを使う
 → それ以外のほとんどのリストではブレット(中黒)を使う
 列挙する際に数字を使うのは、何かしら順番があるものだけにしましょうということ。テクニカル・ライティングでは一般的に知られている手法だ。

・Use description lists for pairs of related pieces of data.
 → 関連するデータのグループには、説明的なリストを使う
 頭に数字、アルファベット、ブレットは無しで、名前そのものを列挙しましょうということのようだ。

・Use serial commas.
 → シリアル・カンマを使う
 シリアル・カンマとは、3つ以上の項目をorやandで列挙する場合、最後の項目の前にカンマを置く方法だ。
  ✕ A, B, C and D
  ◯ A, B, C, and D

 実はこのシリアル・カンマは英語圏で熱い論争がある(ウィキペディア英語版のSerial comma)。何か月か前には、シリアル・カンマが判決を左右したというニュースもあった。

・Put code-related text in code font.
 → ソースコードにはコード用フォントを使う
 開発者向け文書ではソースコードが頻出するため、通常のテキストと見分けやすくするためだと推測できる。

・Put UI elements in bold.
 → UI要素にはボールドを使う
 例えばボタン名やメニュー名について、角カッコ([Edit])や引用符("Edit")を使うのではなく、ボールド(Edit)にするということだ。

・Use unambiguous date formatting.
 → 曖昧さのない日付形式を使う
 「月名 日, 年」という形式を使い、月名はスペルアウトするとしている。例えば「September 10, 2017」で、Sepみたいな略も避ける。
 アメリカとイギリスでは月と日の順番が逆になり、「08/09/2017」みたいな書き方は8月9日なのか9月8日なのか分からないことがある。

◆Images(画像)
・Use SVG files or crushed PNG images.
 → SVGファイルか圧縮PNG画像を使う

・Provide alt text.
 → alt属性にテキストを入れる

・Provide high-resolution images when practical.
 → 高解像度の画像が役立ちそうであれば使う


要点(highlights)は、細かなルールというより、書く際の姿勢みたいな内容も入っている。
長文の英語は書かないものの、UIのボタン名あたりを書くエンジニアであれば「Word list」でページ内検索をかけて確認する程度の使い方でも有用かもしれない。
19 2月

この英英辞典を使え

英英辞典は、英単語の定義や説明が英語で書かれています。日本語における「国語辞典」です。

「英語が分からないから辞書を引くのに、説明が英語なら意味が無いじゃないか」と思う人もいるでしょうが、実は英語で書かれているから良いのです。
英和辞典であれば、日本語での意味(訳語)だけ見て理解したと考えるケースが多いでしょう。例えばdestroyを英和辞典で調べ、「ああ、『壊す』か」と理解します。しかしこれは対応しそうな日本語が分かったというだけであり、destroyが示す意味の範囲を理解したわけではありません。「壊す」と「destroy」では、意味範囲は必ずしも一致しません。

もちろん親切な英和辞典では意味範囲まで解説していますが、使う人が少し読んで「ああ、『壊す』か」と納得してその英和辞典を閉じてしまうと、それ以上踏み込んで調べようとしないでしょう。そういった点では日本語がない英英辞典で、定義や説明や用例をじっくり読んで把握する方法も勧められるわけです。まあ頭を「英語モード」に切り替える感じでしょうか。
私の場合、「訳語」を見つけるのに英和辞典、「意味」を調べるのに英英辞典を使っています。

そこで、有名どころのオンライン英英辞典をいくつか紹介します。

・Oxford
http://oaadonline.oxfordlearnersdictionaries.com/

・Collins
http://www.collinsdictionary.com/

・Macmillan
http://www.macmillandictionary.com/

・Cambridge
http://dictionary.cambridge.org/dictionary/american-english/

・Longman
http://www.ldoceonline.com/

個人的には最初の2つ、Oxford Advanced American DictionaryとCollins American English Dictionaryを頻繁に使っています。
Oxfordは基本単語の解説が充実していて、似た言葉の使い分けなども詳しいという印象です。例えば「walk」。
Collinsは同義語などの関連情報が一緒に出てくるので便利です。語の使用頻度が時系列的にグラフで表示されたりします。例えば「blog」を調べると、2004年あたりから登場したことが分かります(ページ右下)。

以上です。
★6/22発売の翻訳書★
血と汗とピクセル 『血と汗とピクセル』
筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所・代表社員。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについてはこちらをご覧ください。
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英語語源が魔術に変わる世界では
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