rnishino

IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

英語

22 10月

名詞としての-able

IT関連のドキュメントを読んでいると、語の最後が「-able」で終わる名詞をよく見かける。これはもともと形容詞だったものが名詞化されたものだと思われる。

たとえば、プログラミングの基本用語である「variable」、つまり「変数」だ。これは語源も判明しているようで、1816年に形容詞から作られたらしい(参考URL)。最初は数学用語である。

ほかに一般辞書に載っている語としては「deliverable」がある(OALD)。「納品物」や「成果物」といった意味になる。これも形容詞からできたのではと思われる。またdeliverableを名詞で使う際は、deliverablesと複数形にすることが一般的なので注意が必要だ。

executable」も名詞として辞書に載っている(Collins)。「実行可能ファイル」という意味になる。

さらに「wearable」もOALDに掲載されている。こちらはITの文脈で言うと「着用デバイス」を指す。


こうして見ると、もともと「-able+名詞」(たとえばexecutable file)だったのに、名詞部分が抜け、「-able」だけが残って名詞化されたのではないかと想像してしまう。
そのため「-able」という名詞を日本語にする際は「納品」、「実行可能ファイル」、「着用デバイス」と、名詞を補う必要がある。


プログラミング関連資料を見てみると、辞書には載っていないものの、名詞扱いされる「-able」が数多くある。少し探しただけでも以下の語が見つかった。

・callable
・clickable
・consumable
・commitable
・drawable
・enumerable
・immutable
・initializable
・iterable
・playable
・returnable
・runnable
・scrollable
・throwable

たとえば「commitable」は「コミット可能ファイル」、「iterable」は「イテレーション可能オブジェクト」といった意味になりそうだ。いずれの場合も日本語では「ファイル」や「オブジェクト」などと適切に補って名詞であると明示しなければならない。
品詞を転換して作られる「-able名詞」の造語力は非常に高い。今後もどんどん作られるだろうから、読む側は「-able」は形容詞だけでなく、名詞の可能性もあると考えておく必要がありそうだ。


10 9月

「プログラミング英語検定」をニュース記事にしてもらいました

私の会社でベータ版を公開した「プログラミング英語検定」について、いくつかのメディアでニュース記事にしていただきました。

・IT人材ラボ
 「プログラミング英語検定」のベータ版をリリース、「プログラミング必須英単語600+」も無償配布―グローバリゼーションデザイン研究所
 https://itjinzai-lab.jp/article/detail/1852

・ICT教育ニュース
 プログラミングで求められる英語力を測る「プログラミング英語検定」開始
 https://ict-enews.net/2019/09/06progeigo/

・リセマム
 プログラミング英語検定、無料ベータ版提供開始
 https://resemom.jp/article/2019/09/09/52377.html
(なおYahoo!ニュースにも転載されています)

・EdTechZine
 プログラミングで必要な英語力を測定、「プログラミング英語検定」提供開始
 https://edtechzine.jp/article/detail/2635


【追記】9/17に「教育家庭新聞」でも取り上げていただいています。
プログラミングで必要な英語力を測る「プログラミング英語検定」を開始
https://www.kknews.co.jp/news/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%A7%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E8%8B%B1%E8%AA%9E%E5%8A%9B%E3%82%92%E6%B8%AC%E3%82%8B%E3%80%8C%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9


「プログラミング + 英語」でキーワードとしてインパクトがあったのか、予想以上に反響があり、はてなブックマークの人気エントリー(9/6分)に入ったり、まとめサイトに載ったり(😅)しました。
また、ありがたいことにベータ版の受験者もかなりの数に上っています。

プログラミング英語検定のウェブサイトにも記載しましたが、もし同検定に協賛していただける団体(企業や学校など)がいれば、ご連絡いただけると幸いです。

以上です。
5 9月

「プログラミング英語検定」を開始し「プログラミング必須英単語600+」も公開

私の会社で「プログラミング英語検定」の提供を開始しました。プログラミングで求められる英語力を測定して認定する試験です。

 プログラミング英語検定
 https://progeigo.org/

Programming-English_Web

現在ベータ版を無料提供中で、2020年初め頃の正式版公開を目指しています。
ベータ版の試験画面は以下のような感じです。

Programming-English_Exam_a

また、同時に「プログラミング必須英単語600+」という資料をクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで公開しています。文字通り、プログラミングで頻出する必須英単語をまとめたものです。
無償で入手可能なので、ぜひプログラミング英語の学習や知識確認にご活用ください。

 プログラミング必須英単語600+
 https://progeigo.org/learning/essential-words-600-plus/

Programming-English_Words-600

以上です。
18 7月

新しくIT的な意味が追加された英単語

英語辞書を出版しているオックスフォード大学出版局は毎年「今年の英単語」を発表している。
そのような英単語以外にも辞書には言葉が追加され続けており、同局のOxford Advanced Learner's Dictionary(OALD。オックスフォード現代英英辞典)に過去数年間で追加された言葉は以下にまとめられている。

 Recent Additions to OALD
 https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/wordlist/new_words

中にはテクノロジーの進展などで新たな意味が追加された言葉もある。
特に私の専門であるITと関連したものをいくつか見てみたい。

◆ 2018年10月追加

fulfilment[名詞]フルフィルメント
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/fulfilment(4番目の意味)

インターネット通販における受発注や発送などの業務全体のこと。アマゾンなどがフルフィルメントの代行サービスを提供している。
もともとは(約束などの)「履行」や「遂行」という意味。

◆ 2018年3月追加

curator[名詞]キュレーター
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/curator(2番目の意味)

自分の知識に基づき、特にインターネット上で記事や写真などを選んで投稿する人のこと。
もともとは博物館などの「学芸員」。

ghost[動詞]連絡を断つ
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/ghost_2(3番目の意味)

人間関係を終わらせようと、オンラインでの連絡を断つこと。
この言葉は私は初めて聞いた。
もともとは名詞で「幽霊」だが、動詞だと「ゴーストライティングをする」意味らしい。

unicorn[名詞]ユニコーン企業
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/unicorn(2番目の意味)

時価総額が10億ドル以上の新興企業のこと。IT関連企業が一般的。
もともとは「一角獣」。

◆ 2017年10月追加

crawler[名詞]クローラー
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/crawler(3番目の意味)

ウェブ上で情報を取得して回るプログラムのこと。
crawlは「はう」という動詞(水泳の"クロール"もここから)なので、もともとは「はいはいする赤ちゃん」とか、イギリスでは「おべっか野郎」とかいった意味。

◆ 2017年3月追加

deprecate[動詞]非推奨にする
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/deprecate(2番目の意味)

ソフトウェアの古い機能などに関して、使用はできるものの、控えるべきだとすること。
もともとは「非難する」という意味。
翻訳者になりたての頃、この単語を見て訳すのにとても困ったことを思い出した。「非推奨」という訳語を作った人はすごい。

◆ 2016年3月追加

MVP[名詞]
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/mvp(2番目の意味)

Minimum Viable Product(実用可能な最小限の製品)のことで、小さいが使えるソフトウェア製品をまず作り、そこから徐々に改善するケースで使われる言葉。
もともとと言うか、MVPとしてよく知られているのはスポーツにおけるMost Valuable Player(最優秀選手)だろう。

◆ 2015年12月追加

build[名詞]ビルド
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/build_2(3番目の意味。2〜5が新規追加)

通常は開発途中にあるソフトウェアのバージョン。
buildと聞くと、すぐに動詞(建設する)が頭に浮かぶ。しかし名詞もあり、1番目の意味は「体格」らしい。
またリンク先には載っていないが、ゲームにおける「キャラクターの育成方法」もbuildと呼ばれる。


level[名詞](ゲームの)レベル
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/level_1(7番目の意味)

日本語で言うところの「面」や「ステージ」を指す。RPGなどにおけるキャラクターの"レベル"ではないので注意。
もともとは「水準」といった意味。


この記事は以上です。
21 5月

最新の「Microsoft Writing Style Guide」が無料で公開

つい最近知ったのですが、2018年2月にマイクロソフトが英語スタイルガイド「Microsoft Writing Style Guide」を無料公開していたようです。

Microsoft Writing Style Guide
https://docs.microsoft.com/ja-jp/style-guide/welcome/

ms-styleguide

これまでIT分野の英語スタイルガイドとして重要な位置を占めてきた『Microsoft Manual of Style』の後継となるようです。
The Microsoft Writing Style Guide replaces the Microsoft Manual of Style, a respected source of editorial guidance for the tech community for more than 20 years.

従来の『Microsoft Manual of Style』は2012年に第4版が出たので、6年ぶりの更新となるようです。
また同書は有料で販売されていましたが、「Microsoft Writing Style Guide」はウェブ上で無料公開となりました。

古い『Microsoft Manual of Style』では、全般的なスタイル解説に加え、個々の単語の使い方を解説するという特徴を持っていました。
新しい「Microsoft Writing Style Guide」も同様に、スタイル全般 + 個々の単語の解説という構成になっています。
たとえば「abort」という単語についてはこう解説があります。
Don't use abort in content or user experiences for a general audience. If abort appears in a UI that you can't edit, use an alternative term to describe the customer action.

要するに、abortという単語は一般向けには使わず、UIに出てきたら言い換えよということです。言い換え候補として以下が挙がっています。
  • End: use for communications and network connections.

  • Close: use for apps and programs.

  • Stop: use for hardware operations.

  • Cancel: use for requests and processes.

このように、1つの単語についてもかなり解説が詳しいので、英語を書くのに悩んでいる日本人にとっても大いに参考になるはずです。



昨年、Googleが開発者向け文書のスタイルガイドを公開しました。
これはこれで簡潔にまとまっていて便利なのですが、やはり英語ライティングのリソースに関してはマイクロソフトに一日の長があります。
「Microsoft Writing Style Guide」は無料でアクセスできるので、英語を書く際に活用してみてはいかがでしょうか。

★最新刊★
プログラミング英語教本 『プログラミング英語教本』
筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

翻訳者/著者/リンギスト。日本翻訳連盟・理事。
プロフィールや連絡先などについてはこちらをご覧ください。
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