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IT翻訳者Blog

主にIT、英語、翻訳の話題を書いています。

社会/経済

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仕事引退までの〇十年という時間を想像するヒント

最近、年金支給が 68 歳に引き上げられるというニュースがありましたが、政治的な配慮から断念したようです。しかしこのまま国債で予算をまかなうような状況は持続不可能です。早晩財政的に行き詰まり、支給開始年齢は 70 歳などに引き上げられるでしょう。仮に将来 70 歳で引退して支給開始ということになれば、あと何年働くことになるのでしょうか?また、今のままの仕事の仕方で乗り切れるのでしょうか?

私の場合は現在 35 歳なので、70 歳で引退して年金支給開始と仮定すれば、あと 35 年間働くことになります。35 年後、経済や社会がどうなっているか誰にも分かりません。この「35 年という期間」を想像する方法として、35 年前の状況を調べてみました。35 年前と現在とを比較することで、想像してみるのです。35 年前、大卒初任給は 9 万円、為替は 1 ドル 300 円でした。パソコンはやっとアップルIが登場し、インターネットは原形が出来上がった程度で普及はまだまだ先です。
さまざまなものが予想もつかない程度に変わります。果たして 35 年前、数万円で買ったコンピュータの前に座って Skype でテレビ会議をしながら、タブレットを使ってデータを Wikipedia で調べるという仕事スタイルが想像できたでしょうか。


この記事では「〇年という時間の長さ」を想像するために、「〇年前に何があったか」を調べてまとめてみました。私のブログの主読者層だと思われる 25 〜 50 歳まで 5 年ごとに項目を作ってあります。各項目の見出しは「現在△歳の人が引退するまでの〇年という長さ」という形です。引退と年金支給開始は 70 歳と仮定してあります。
時間が経つと産業も変わり、仕事で求められるスキルや能力も変化するだろうと考えているため、「産業の移り変わり」が分かるようなデータを重点的に集めてあります。

最近、42 年間続いたテレビ番組「水戸黄門」が終了することとなりました。実に長い期間に思えますが、28 歳の人が 70 歳になる時間も、42 年間です。28 歳の人が今のスキルのまま 70 歳まで乗り切ろうと思うなら、この「水戸黄門」と同じ時間をしのがなければならないわけです。

引退までの「〇十年」という期間を、過去との比較から想像してみてください。

・注:
 - 大卒初任給は、1985 年まで男子のもの
 - 為替は、対米ドルで、年末のもの
 - 耐久消費財普及率で、ハイフンが入っているセルはデータがない
 - ロングセラー商品は、その近辺の年に売り出され、現在も販売されているもの
 - 長寿番組は、その近辺の年に放送開始され、現在も続いているもの
 - 「何年前?」という項目は、2011 年が基準


◆ 現在(2011 年)の状況


大卒初任給202,000 円
為替78 円
経済成長率3.1 %(2010 年)

・産業別就業者数(2010 年)
第一次(農業、漁業など)4.0 %
第二次(製造、建設など)24.8 %
第三次(小売、サービスなど)70.2 %

・耐久消費財普及率
エアコン89.2 %
カラーテレビ99.6 %
乗用車82.7 %
ビデオカメラ39.9 %
パソコン76.0 %

・主要輸出品の順位(2010 年)
1 位自動車
2 位化学製品
3 位電子




◆ 現在 50 歳の人: 引退まであと 20 年


→ 約 20 年前、1990 年の状況

大卒初任給173,996 円
為替135 円
経済成長率6.2 %


・産業別就業者数
第一次(農業、漁業など)7.2 %
第二次(製造、建設など)33.5 %
第三次(小売、サービスなど)59.4 %


・耐久消費財普及率
エアコン63.7 %
カラーテレビ99.4 %
乗用車77.3 %
ビデオカメラ15.6 %
パソコン10.6 %


・主要輸出品の順位
1 位自動車
2 位電子
3 位化学製品


・ロングセラー商品
品名発売年何年前?
一番搾り1990 年21 年前
オーザック1990 年21 年前
カルピス・ウォーター1991 年20 年前
ラ王(日清)1992 年19 年前


・長寿番組
番組名開始年何年前?
それいけ!アンパンマン1988 年23 年前


・コンピュータ関連
事柄何年前?説明
WWW(ワールドワイドウェブ)1990 年21 年前スイスの CERN でティム・バーナーズ=リーが開発。HTTP、HTML、URI を特徴としている。
Windows 3.11992 年19 年前-
Mosaic ブラウザ1992 年19 年前画像も表示できる Web ブラウザ。マイクロソフトの Internet Explorer はこれを元に開発された。


・その他 1990 年の出来事はこちら



◆ 現在 45 歳の人: 引退まであと 25 年


→ 約 25 年前、1985 年の状況

大卒初任給(男)144,541 円
為替200 円
経済成長率6.3 %


・産業別就業者数
第一次(農業、漁業など)9.3 %
第二次(製造、建設など)33.2 %
第三次(小売、サービスなど)57.5 %


・耐久消費財普及率
エアコン52.3 %
カラーテレビ99.1 %
乗用車67.4 %
ビデオカメラ8.4 %
パソコン-


・主要輸出品の順位
1 位自動車
2 位鉄鋼
3 位電子


・ロングセラー商品
品名発売年何年前?
カロリーメイト1983 年28 年前
カラムーチョ1984 年27 年前
モルツ(サントリー)1986 年25 年前
スーパードライ(アサヒ)1987 年24 年前


・長寿番組
番組名開始年何年前?
志村けんのバカ殿様1986 年25 年前


・コンピュータ関連
事柄何年前?説明
マッキントッシュ1984 年27 年前マウスと GUI を備えたものとしては初めて成功したパソコン。約 2,500 ドル(http://ja.wikipedia.org/wiki/Macintosh)。
IBM PC/AT1984 年27 年前これの互換機が現在もパソコンの大部分を占めて主流になっている(マッキントッシュは互換機ではない)。
Windows 1.01985 年26 年前-
パソコン通信1980 年代半ば25 年ほど前日本でパソコン通信が普及し始める。インターネットはまだ先。


・その他 1985 年の出来事はこちら



◆ 現在 40 歳の人: 引退まであと 30 年


→ 約 30 年前、1980 年の状況

大卒初任給(男)118,138 円
為替203 円
経済成長率2.6 %


・産業別就業者数
第一次(農業、漁業など)10.9 %
第二次(製造、建設など)33.6 %
第三次(小売、サービスなど)55.4 %


・耐久消費財普及率
エアコン39.2 %
カラーテレビ98.2 %
乗用車57.2 %
ビデオカメラ8.6 %
パソコン-


・主要輸出品の順位
1 位自動車
2 位鉄鋼
3 位化学製品


・ロングセラー商品
品名発売年何年前?
マルちゃん赤いきつね1978 年33 年前
うまか棒1979 年32 年前
ポカリスエット1980 年31 年前
ガリガリ君1981 年30 年前


・長寿番組
番組名開始年何年前?
笑っていいとも1982 年29 年前


・コンピュータ関連
事柄何年前?説明
スペースインベーダー1978 年33 年前アーケードゲーム。
IBM PC1981 年30 年前当時巨大コンピュータ会社だった IBM 初のパソコン。アップルが独占していた市場への参入。本体は 1,600 〜 6,300 ドルで何種類かあり、モニタが 4,500 ドル(http://www.geocities.jp/kenjin_keyboard/prehistory1.htm)。
MS-DOS1981 年30 年前マイクロソフトが IBM PC に供給した OS。ここからマイクロソフトの大躍進。


・その他 1980 年の出来事はこちら



◆ 現在 35 歳の人: 引退まであと 35 年


→ 約 35 年前、1975 年の状況

大卒初任給(男)91,272 円
為替305 円
経済成長率4.0 %


・産業別就業者数
第一次(農業、漁業など)13.9 %
第二次(製造、建設など)34.2 %
第三次(小売、サービスなど)52.0 %


・耐久消費財普及率
エアコン17.2 %
カラーテレビ90.3 %
乗用車41.2 %
ビデオカメラ7.9 %
パソコン-


・主要輸出品の順位
1 位鉄鋼
2 位(同程度)船舶
2 位(同程度)自動車


・ロングセラー商品
品名発売年何年前?
明治ブルガリアヨーグルト1973 年38 年前
ポテトチップス(カルビー)1975 年36 年前
ピノ1976 年35 年前
ハッピーターン1977 年34 年前


・長寿番組
番組名開始年何年前?
徹子の部屋1976 年35 年前


・コンピュータ関連
事柄何年前?説明
アルテア 88001975 年36 年前世界初のパソコン(組み立てキット)。マイクロソフト社はアルテア 8800 用の BASIC を開発するところから始まった。約 400 ドル。
Apple I1976 年35 年前-
Apple II1977 年34 年前大量生産される完成品の「パソコン」としてはこれが世界初と考える人もいる。1,300 米ドルほど。


・その他 1975 年の出来事はこちら



◆ 現在 30 歳の人: 引退まであと 40 年


→ 約 40 年前、1970 年の状況

大卒初任給(男)40,961 円
為替360 円
経済成長率8.2 %


・産業別就業者数
第一次(農業、漁業など)19.3 %
第二次(製造、建設など)34.1 %
第三次(小売、サービスなど)46.6 %


・耐久消費財普及率
エアコン5.9 %
カラーテレビ26.3 %
乗用車22.1 %
ビデオカメラ-
パソコン-


・主要輸出品の順位
1 位鉄鋼
2 位(同程度)船舶
2 位(同程度)自動車


・ロングセラー商品
品名発売年何年前?
カール1968 年43 年前
ボンカレー1968 年43 年前
UCCコーヒーミルク入り(缶コーヒー)1969 年42 年前
カップヌードル1971 年40 年前


・長寿番組
番組名開始年何年前?
水戸黄門1969 年42 年前
サザエさん1969 年42 年前
新婚さんいらっしゃい1971 年40 年前


・コンピュータ関連
事柄何年前?説明
ARPANET1969 年42 年前現在のインターネットの起源。
Unix1969 年42 年前-
C 言語1972 年39 年前-


・その他 1970 年の出来事はこちら



◆ 現在 25 歳の人: 引退まであと 45 年


→ 約 45 年前、1965 年の状況

大卒初任給(男)24,102 円
為替360 円
経済成長率6.2 %


・産業別就業者数
第一次(農業、漁業など)24.7 %
第二次(製造、建設など)31.5 %
第三次(小売、サービスなど)43.7 %


・耐久消費財普及率
エアコン2.0 %
カラーテレビ-
乗用車9.2 %
ビデオカメラ3.4 %
パソコン-


・主要輸出品の順位
1 位鉄鋼
2 位船舶
3 位化学製品


・ロングセラー商品
品名発売年何年前?
バーモントカレー1963 年48 年前
かっぱえびせん1964 年47 年前
オロナミンC1965 年46 年前
ポッキー1966 年45 年前
チョコボール(森永)1967 年44 年前


・長寿番組
番組名開始年何年前?
笑点1966 年45 年前


・コンピュータ関連
事柄何年前?説明
IBM System 3601964 年47 年前プログラムを入れ替えることで、あらゆる用途(科学計算用や事務処理用など)に使えるように設計された初めてのコンピュータ。それまでコンピュータは用途に合わせて設計されていたため、別の用途には使えなかった。


・その他 1965 年の出来事はこちら


◆ 参考にしたサイト


・初任給:
 - 大卒初任給の推移
http://www.777money.com/torivia/daisotu_syoninkyu.htm
 - 学歴別にみた初任給|厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/11/01.html

・為替:
 - 経済年表
http://www.k5.dion.ne.jp/~consult/c_table_n.htm
 - 円相場 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%86%E7%9B%B8%E5%A0%B4

・経済成長率:
 - 図録▽経済成長率の推移(日本)
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4400.html

・産業別就業者:
 - 図録▽産業別就業者数の長期推移(サービス経済化)
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5240.html
 - 統計局ホームページ
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/kouhou/useful/u18.htm

・耐久消費財普及率:
 - 図録▽主要耐久消費財の世帯普及率推移
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2280.html
 - 消費動向調査 結果
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/shouhi.html

・主要輸出品:
 - 図録▽主要輸出品の長期推移
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4750.html

・ロングセラー商品:
 - goo ランキング
http://ranking.goo.ne.jp/ranking/013/longtimeseller_foods/p1/
 - ロングセラー図鑑 | まだある。昭和ナビ
http://www.showanavi.jp/archive/

・長寿番組:
 - 長寿番組の一覧 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%AF%BF%E7%95%AA%E7%B5%84%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7

・コンピュータ:
 - コンピュータの歴史(年表)
http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/history/history_ct.html
 - パーソナルコンピュータ史 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E5%8F%B2

・その他出来事:
 - ザ・20世紀
http://www001.upp.so-net.ne.jp/fukushi/year/index.html


以上です。
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英語教員の留学プログラムと財源案

10 月 10 日の読売新聞に次のような興味深いニュース記事が掲載されていた。

英語の先生を米留学、小中高の若手1〜2年

 日米両政府は、日本の小中高校の若手英語教員を米国に留学させ、語学能力向上を図るプログラムを創設する方向で検討に入った。

 菅首相は日米同盟「深化」の一環として、安全保障政策と経済活動に加え、文化・知的・人的交流の拡大を掲げており、11月中旬のオバマ米大統領来日時に正式合意したい考えだ。

 小中高の若手英語教員を1〜2年間、米国に派遣する案などが浮上している。1000人を派遣し1人当たりの経費を年1000万円と試算すれば、日本政府は、年100億円程度の予算措置が必要になる。

 英語教育では現在、外務、文部科学、総務省と地方自治体が協力し、英語を教える米国などの青年を日本の学校に招く「語学指導等を行う外国青年招致事業」が行われている。ただ、同事業は政府の「事業仕分け」で「見直し」と判定され、外務省の2011年度予算概算要求では10年度当初予算比14%減の1・3億円にとどまった。新たな語学プログラムの創設には、財源の確保が課題となる。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101010-OYT1T00524.htm


グローバル化が進む現在、事実上の共通語となっている英語が非常に重要であることは言うまでもないだろう。私がかかわっている IT 業界でも同様である。先日のブログ記事にも書いたように、将来新興国のブロードバンド化の結果として、インターネット サービスは産業規模が大きくなる。増加するユーザーが英語でサービスを使おうが、現地語に訳されようが、非ネイティブにとって分かりやすい英語は必須となる。

そのため、若手英語教員の留学プログラムには大いに賛成である。


◆ 財源はどこにあるか

しかし考えておかなければならないのは、記事にもあるように、財源だ。仮に年間 100 億円だとして、どこからそれを捻出すればいいだろうか。
同じ「留学」というくくりで見るならば、外国からの国費留学生などに支出している予算を精査し、一部であっても英語教員の留学プログラムに向けたらどうだろうか。

現在、外国人留学生向けには、税金で主に次のような制度が運営されている(参考 PDF)。

<文部科学省>
・国費留学生制度
・ヤング・リーダーズ・プログラム

<日本学生支援機構>
・私費外国人留学生学習奨励費給付制度
・留学生交流支援制度(短期受入れ)

このうち 2009 年に 1 万 2 千人程度が対象となった「国費留学生制度」では、院生に月 15 万円程度(期間 2 年)、学部生に 12 万 5 千円(期間 1 年)が支給されている。文部科学省によると、この制度で年間 200 億円程度になる(参考 PDF)。

また、同じく 2009 年に合計 2 万 8 千人程度が対象となった「私費外国人留学生学習奨励費給付制度」では、院生に 6 万 5 千円(期間 1 年)、学部生に 4 万 8 千円(期間 1 年)が支給されている。内訳は分からないが、関連事業も含めてこちらも年間 200 億円近くになっている(参考 PDF)。

この 2 事業だけで 400 億円程度になるため、その他の事業を足せばそれをはるかに超える規模になるだろう。


◆ 日本への国費留学生数

2009 年 5 月 1 日時点で、日本への留学生は 13 万人ほどいる(参考リンク)。「過去最高」らしい。留学生数の推移は次の通りである。

101011
(赤枠は筆者が追加)

グラフ左端の昭和 58 年(1983 年)頃は私費留学生 7,500 人、国費留学生 2,000 人ほどだった。それが平成 21 年(2009 年)には私費留学生が約 12 万人で 16 倍に、国費留学生が 1 万人で 5 倍に増えている。私費留学生数の伸びは驚異的である。受け入れ留学生を増やそうという努力の成果が表れているのだろうか。

なぜここまで私費留学生が伸びているのだろうか?いろいろと要因はあるだろうが、やはり私費で留学できるほど裕福になった点が大きいのではないか(不法就労を目的に入国する者もいるだろうが、そもそも日本に来る程度にはお金が必要だ)。

確かに、優秀だが貧しい学生を国費留学生として招くことは重要である。しかし、私費留学生が大幅に増加する程度に他国(特に留学生が多い中国などアジア諸国)が裕福になっているのであれば、そこまで国費留学生を増やす必要があるのかとも感じる。

諸外国の留学生総数に対する国費留学生の割合は次の通りである。

101011_2

米国や英国と比べると、留学生総数は少ないのに、国費留学生は多い。ドイツと比べた場合、割合は少ない。国際的に見ると、国費留学生の割合は多い方に位置付けられるだろう。(つまり、仮に減らしても体面は保たれるだろう。)




日本の英語教師が実際の英語を習得することは急務であり、留学プログラムは歓迎すべきことだ。

しかし実現しようと思えば、予算的に厳しいかもしれない。他を削って捻出できるならそれでいいが、もし留学関連予算の中でやり繰りせよというのであれば、国費留学生などに対する予算を一部削減してでも捻出すべきではないか。「貧しいアジア」といったステレオタイプは過去のものである。日本人の所得は減ってきており、かつての「金持ち日本人」ではない。

確かに国費留学生は、国際交流を推進するのに重要な役割を果たしてくれるだろう。貿易で成り立っている日本にとっては貴重な存在である。しかし、子孫に借金を押し付けて生活している現在、限られた予算の中で優先順位を考えて選択を行わなければならないはずだ。
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学費は誰が負担すべきか?

広島大学で教えていらっしゃる柳瀬さんのブログ記事「授業に対して国立大学教員が有している金銭的責任」を読んでいたら、こう書かれていた。
さて、2009年時点での広島大学の1年間の授業料は54.4万円です。これが保護者(ごくたまに学生自身)が、1年間の大学教育(この計算では卒業所要単位だけを想定)で得られる価値に期待して支払う金額です。

主題とは関係ない部分なので恐縮なのだが、やはり現在でも主に保護者が学費を払っているようだ。「現在でも」と書いたのは、10 数年前に私が大学生だったときも保護者が払うというケースが圧倒的に多かったように思えるからである。

日本では、保護者が学費を払うというのは「常識」のようになっている。しかし、海外では保護者が払うというケースは日本ほど多くないと聞く。確かに私がアメリカに留学している間も、働きながら大学に通う学生は日本より多かったように感じる(軍隊に入って奨学金をもらった学生が何人もいたのが印象的だった)。

私は「保護者が学費を負担すべき」という常識には、疑問を持っている。次のような弊害があるからだ。
  • 学生が人生における「費用対効果」を学ぶ機会を逸してしまう(個人レベル)
  • 保護者の収入で学生の進学機会が限定されてしまう(社会レベル)

そして、私は学費は学生本人が払うべきだと考える。当然学生本人はお金など持っていないだろうから、ローンを利用することになる。


◆ 人生における「費用対効果」

学費を学生自身が負担するならば、高校在学中、大学進学することの「費用対効果」を計算する機会を得られる。人生の早い段階でこういったことを考えるのは有益だと思う。その結果、十分なリターンが得られないと考えるなら、大学進学を止めて別の活動にコストをかける選択肢も生まれるはずだ。もし進学したとしても、コストに見合わないような行動(無駄に遊ぶなど)を慎むようになるだろう。

ちなみに私自身、この 3 月に社会人大学院を卒業した。現在の日本社会では、社会人大学院に通う人はそれほど多くない。投資に見合う効果が得られないと判断する人が多いからだろう。しかし投資は将来を予測して行うもので、現時点では割に合わないように思えても、将来大きなリターンを生み出す可能性はある。


◆ 保護者の収入によらない進学機会

保護者が学費を払うのが当然であるならば、裕福でない家の子供は進学できなくなってしまう。有能な子供が進学できないのであれば、社会的な損失となる(あと、気の毒だ)。本人が将来的に高い収入を得られそうであれば、本人がローンを組んで進学できるような環境を整えるべきだろう。確かに現在も学費ローンはあるが、基本的に親が組んで親が払う仕組みになっている。子供が就職後に代わりに返済する方法もあるが、結局ローンを組むのは親である。重要なのは、親ではなく本人がローンを組んで、投じるコストの重みを実感することだと思う。(社会人が大学に戻って学び直す際も、本人がローンを組めた方が良い。さすがに年老いた親には頼れない。)

さらに、今の日本の賃金制度で 50 代くらいが高くなるのは、親世代による学費負担が前提になっているという部分もあるだろう。しかし、現在のような経済状況下で、この制度がいつまで持つのか分からない。親がリストラされたため大学を退学したという話をたまに聞くが、親に学費を依存するならこのような悲劇は続くだろう。


◆ 本人が組めるローン

本人が学費を負担できるようにするには、本人が組めるローンが必要だ。低利子にしてもよいが、将来十分高い収入を得られそうなら、低利子でなくてもいいだろう。ただ、現在のように学費だけではなく、生活費もまかなえる金額枠が望ましいように思える。それによって、例えば生活費を得るために時給 800 円のアルバイトをするより、将来的に高い収入を得られる資格の取得に時間をかけた方がリターンは大きくなる、という判断も可能になる。

ちなみに「奨学金」の英訳は「scholarship」だと教わるが、scholarship は基本的に返済の必要がない。ところが日本では(給付以外の)奨学金は返済の必要があり、これは英語で「loan」(ローン)と呼ばれる。




以上、「学費は学生本人が負担すべきだ」という意見を書いた。

現在の「保護者が負担すべき」という常識にはいくつかの弊害があると思われる。学生が費用対効果を考えないまま大学生活を送ってしまったり、保護者の収入で進学機会が奪われてしまったりという点だ。

学費を本人が負担できる環境を整えることで、学生自身が若い間にコスト意識を高められるというメリットと、保護者の収入によらず進学できるようになるというメリットがあると思われる。
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インターネット サービスを提供する際の「言葉の壁」を乗り越える

やや長いので概要:
  • アメリカでは先端的サービス産業が伸びている。
  • 日本で先端的サービス産業が伸びないのは、「言葉の壁」などの障害があるからだ。
  • インターネット サービスでは言語が重要である。特に英語だ。
  • しかし必要になるのは「非ネイティブ向けの英語」であり、日本人でも圧倒的に不利なわけではない。

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野口悠紀雄氏は『「超」整理法』などのベストセラーが有名であるが、さすがに専門の経済やファイナンスの話も面白い。現在、東洋経済のオンライン版に野口悠紀雄の「経済危機後の大転換――ニッポンの選択」という連載がある。実データに基づいた分析で、素人にはやや難しい記事もあるが、非常に面白い。


◆ アメリカのサービス産業

この連載の第 32 回(9/27)は「米国の国際収支でのサービス輸出の貢献」という話であった。

簡単に内容をまとめると、アメリカは 70 年代から産業構造が変化し、特に 90 年代以降にサービス業の収益が伸びた。例えば「金融」や「IT」といった高度なサービス産業である。IT の中でもインターネット サービスは世界的に見るとアメリカ企業が圧倒的に多く、将来の黒字に貢献するだろう、という内容である。


◆ 日本のサービス産業

次の第 33 回(10/4)は、「国際競争力がない日本のサービス産業」というタイトルである。前回のアメリカと比較した場合の日本のサービス産業の特徴である。

重要と思われる点について、やや長くなるが何ヶ所か引用してみる。まず、なぜサービス産業を発展させなければならないか、という部分である。
……日本のサービス産業が、小売り、飲食など国内対人サービスを中心としており、国際競争力を持つサービスを提供できないことの表れだ。日本のサービス産業は、国際的に見て弱い産業なのである。製造業の比重が低下していく中で、生産性の低いサービス産業しか存在しないことが、日本の所得が低下していく基本的原因になっている。

……所得水準が高い先進国は、製品価格の点では、賃金の低い新興国に太刀打ちできない。新興国では供給できない専門的で先端的なサービス産業を成長させない限り、新しい世界経済の環境の中では先進国としては生き延びられないのだ。


次に、日本でサービス産業を発展させる場合の障害についてである。
 第一は「言葉の壁」だ。製造業の製品を輸出するには、言葉は直接には関係しない(営業のために言葉が必要になるかもしれないが、製品そのものは言葉とは無関係だ)。しかし、サービス輸出の場合には、言葉が重要な意味を持つ……

 第二は、人材の育成体制である。……金融業や先端業務サービスで日本が弱いのは、そうした業務を支える専門的人材が弱いからである。つまり、日本の高等教育体制は、製造業のための人材を育成することを主眼としており、サービス産業をほとんど無視している。

 第三に、社会的価値観の問題がある。……国際分業の比較優位原則を考えれば、ルーチンワークの比重が高い製造業は新興国にまかせ、人材の能力を発揮できる分野に集中することが必要なのだ。

上記の 3 点を克服できなければ、国際的に競争力のあるサービス産業は生まれないということなのだろう。


◆ インターネット サービスと「言葉の壁」

今後、ブロードバンドと低価格端末の世界的な普及に伴い、インターネット サービスはさらに重要になるはずだ。インターネットを日常的に使用している人なら分かるだろうが、大部分がアメリカ企業によって提供されている。例えば、世界最大の SNS である Facebook、日本でもユーザーが急増している Twitter、そして検索エンジンのみならずさまざまな最先端サービスを提供している Google である。

日本の SNS では mixi が最大手であるが、ユーザーはほぼ日本人に限られている。また機能もアメリカ企業の真似が多い。これは「言葉の壁」のメリットで、英語サービスが使えない日本人を相手に、海外で流行ったサービスを移植して提供するわけである。海外から一テンポ遅れるため、「タイムマシン」と呼ばれている。言葉の壁というメリットには当然、デメリットがある。タイムマシン商売を続ける限り、世界最先端のサービスを提供することはできない。

サービス産業の発展で障害になる「言葉の壁」であるが、特にインターネット サービスではほとんどの部分に存在する。従来のテキスト(書かれた文章)はもちろん、ブロードバンド普及で増加するとすると思われる動画や音声などである。また、ユーザーが外国語を使うならば、ユーザー サポートもその言語で行わなければならない。「作って終わり」というわけにはいかないのだ。


◆ まず考えるべきは英語によるサービスか

言葉の壁を乗り越えてサービスを海外に提供するには、現地の言葉に翻訳したり現地スタッフにユーザー サポートしてもらう方法が一般的かと思われる。ただしこれは非常にコストがかかる。実際、Twitter のような大規模サービスでさえ、一部の翻訳をボランティアに任せている。インターネット サービスのメリットは低コストで世界中に提供できる点にあるので、特に初期段階ではあまり翻訳や現地スタッフにコストをかけたくないはずだ。

となると、世界にインターネット サービスを提供したい場合、まず考えるべきは英語によるサービスだろう。英語は世界一の経済大国であるアメリカの公用語である。しかし何より、英語を使う非ネイティブの人口が爆発的に増えている。以前「英語 2.0: TOEIC とネイティブを超えて」にも書いたが、現在では非ネイティブの英語話者は、ネイティブの 3 倍に上る。また、人口の多い新興国でのインターネット普及により、非ネイティブのインターネット ユーザーは大幅に増えるはずである。実際、つい最近も Android Market の有料アプリケーションがインドやロシアなどで買えるようになった(ニュース)。

つまり、英語と言っても、アメリカ人やイギリス人に向けた「ネイティブ英語」ではなく、非ネイティブにとって分かりやすい英語(仮に「グローバル英語」と呼ぶ)でサービスを提供すべきだと考えるのである。


◆ ネイティブも英語が「言葉の壁」になる

上記のように、英語で提供する場合は、非ネイティブにとって分かりやすい英語で提供すべきだろう。英語ならネイティブが圧倒的に有利だ、と思われるかもしれない。確かに有利であることは間違いないが、ネイティブもある程度は非ネイティブ英語を学ぶ必要がある。というのも「ネイティブ表現」がむしろ非ネイティブに分かりにくいことがあるからだ。これは皮肉なことに、逆に「言葉の壁」になってしまう。

今後インターネット サービスを世界に提供するにあたって必要なのは、非ネイティブ向けの「グローバル英語」だろう。グローバル英語はネイティブも習得が必要であるため、日本人だからといって圧倒的に不利な立場に立たされているわけではない。発想を切り換えれば、挑戦は十分可能だ。
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産業としての留学生受け入れ

日本は 10 万人を超える留学生を受け入れている。2020 年には 30 万人まで増やそうとしている。しかし必要なのは、留学生の頭数を揃えるというより、留学生受け入れを産業として成り立たせようとする戦略ではないだろうか。


◆ どこから出てきた 30 万人なのか

政府は 2008 年に「留学生 30 万人計画」を立てた。2020 年を目途に 30 万人の留学生を受け入れるという計画である。その骨子はこちらの PDF ファイルから見られるが、趣旨にこうある。

日本を世界により開かれた国とし、アジア、世界との間のヒト、モノ、カネ、情報の流れを拡大する「グローバル戦略」を展開する一環として、2020年を目途に留学生受入れ 30万人を目指す。


「開かれた国」だとか「グローバル戦略」だとか、それ自体にはあまり反論できない耳触りのよい言葉が使われているが、結局それがどのように日本のためになるのか、そしてなぜ「30 万人」なのか、よく分からない。文部科学省の担当官はインタビューにこう答えている。

我が国の高等教育機関が、他の先進国と同様に、海外からの留学生の受け入れ数の水準を確保していこうとする際、現在の3%強からドイツ、フランスに届くような10%程度(つまり300万人のうちの1割≒30万人)の受入れが必要となるということになります。

また、世界の留学生市場は今後急拡大をするというレポートもあり、そのレポートでは留学生数は、2015年には500万人、2025年には700万人規模と試算されています。現在、世界の留学生数における日本の受入れシェアは約5%程度ですので、仮に中間の2020年を600万人とすれば、現在の受入れシェアを確保しようとした場合、約30万人程度の留学生を受け入れるということになります。

http://www.studyjapan.go.jp/jp/toj/toj09j.html


1 つ目の理由としては、他の先進国では留学生割合が 10% くらいだから、日本も 10%(つまり 30 万人)を目指そうということらしい。2 つ目の理由として、現在の留学生市場のシェア(5%)を維持するためには、30 万人確保する必要があるということである。いずれにしても、先進国としての面目が立たないから、頭数だけ揃えましょうということだろう。


◆ 留学生受け入れで儲ける国

たとえばオーストラリアでは、留学生受け入れが産業として成り立っている。実際、観光業と並ぶくらいの巨大な輸出産業となっているようだ(参考リンク)。

そのオーストラリア、アメリカ、イギリスなどでは、国公立大学に入学する外国人留学生は、現地人より高い授業料を払うことになる。国や大学によって異なるが、1.5 〜 3 倍程度にはなる。金額で言うと、年間 100 〜 200 万円くらいだろう。逆に学生 1 人あたりに投入される税金は、オーストラリアで 77 万円、イギリスで 97 万円、アメリカで 104 万円である(参考リンク:PDF)。少なくともこの 3 か国では、費用(投じられる税金)と収益(支払われる授業料)を比較した場合、国立大学でも留学生から十分儲けていそうである。


◆ 留学生受け入れは産業になるか

最初に述べたように、日本には 30 万人を受け入れる計画がある。しかし 30 万人という数字は単に「先進国としての面目」を立てることが主目的のように思えて仕方ない。産業として成り立たせて儲けようという発想はなさそうだ。

だが上記の通り、産業として成り立たせている国は存在する。たとえばオーストラリアでは毎月留学生数の統計を調査・発表したり、留学生出身国の経済・社会状況のレポートを出したりしている。留学生というお客様(特にお金を出してくれそうな国の学生)を獲得するために、マーケットの動向を調査しているのだ。


単に「日本に来てくださいね」というだけではなく、オーストラリアのように徹底的にマーケットの調査をし、顧客(留学生)を知り、サービスを向上させることで、儲かる産業を目指すことが必要ではないかと思う。30 万人などの数字は、その結果として付いてくるものではないだろうか。

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筆者について
西野 竜太郎
(Ryutaro Nishino)

IT分野の英語翻訳者でソフトウェア開発者。現在フリーランスです。Androidアプリを開発して世界に向けて販売しています。
週刊英和新聞の朝日ウイークリーで「AppとWebで気軽に英語」を連載しています。
詳しいプロフィールや連絡先はこちらをご覧ください。
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