IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

最近また文学を読み始めたのですが、次に何を読めばよいか参考になる資料がないかと思って探していました。
英語で書かれた文学のベスト 100 みたいなのをいくつかの組織が出しているみたいです。

◆ ランダムハウス社:モダンライブラリ
(1998年発表)
http://www.randomhouse.com/modernlibrary/100bestnovels.html

リンク先の左列の「THE BOARD'S LIST」が委員会選出のベスト100、右列の「THE READER'S LIST」が読者投票によるベスト 100 です。
読者の方はちょっと微妙なので、ここは権威がありそうな委員会の方で話を進めましょう(”文学”なんていう制度は権威で成立している)。

ベスト 10 を見ると・・・

  1. ユリシーズ: ジェームズ・ジョイス
  2. 華麗なるギャッツビー: スコット・フィッツジェラルド
  3. 若き芸術家の肖像: ジェームズ・ジョイス
  4. ロリータ: ウラジミール・ナボコフ
  5. すばらしい新世界: オルダス・ハクスリー
  6. 響きと怒り: ウィリアム・フォークナー
  7. キャッチ22: ジョゼフ・ヘラー
  8. 真昼の暗闇: アーサー・ケストラー
  9. 息子と恋人: D.H. ローレンス
  10. 怒りの葡萄: ジョン・スタインベック

ほとんど知っているタイトルばかりですが、恥ずかしながら 5 位と 8 位はまったく知らなかった。名前すら聞いたことなかった・・・。


◆ ラドクリフ出版コース
(1998年発表)
http://www.randomhouse.com/modernlibrary/100rivallist.html

それで、このランダムハウスのに対し、Radcliffe Publishing Course というところもベスト 100 を出してきたらしい。
(Radcliffe Publishing Course というのは、もともとラドクリフ大学の出版コースらしく、今はコロンビア大学に吸収されていてもうないようだ)

  1. 華麗なるギャッツビー: スコット・フィッツジェラルド
  2. ライ麦畑でつかまえて: J.D. サリンジャー
  3. 怒りの葡萄: ジョン・スタインベック
  4. アラバマ物語(To Kill a Mockingbird): ハーパー・リー
  5. カラーパープル: アリス・ウォーカー
  6. ユリシーズ: ジェームズ・ジョイス
  7. ビラブド: トニ・モリソン
  8. 蝿の王: ウィリアム・ゴールディング
  9. 1984: ジョージ・オーウェル
  10. 響きと怒り: ウィリアム・フォークナー

こちらはほとんど知っていた。
(ちょっと「政治的正しさ」みたいなものが見えますが、まあいいでしょう)

共通なのは、「ユリシーズ」、「華麗なるギャッツビー」、「怒りの葡萄」、「響きと怒り」ですか。


◆ タイム誌
(2005 年発表)
http://www.time.com/time/2005/100books/the_complete_list.html

あのタイムもベスト 100 なんて出してます。
こちらは順位が付いてないので、だらだらと 100 冊。
どうもタイムが刊行された 1923 年以降が対象らしく、選者がわざわざ「1922 年のユリシーズは入っていません」みたいなことを言っています。
やはり「ユリシーズ」はすごいのか。


◆ BBC
(2003 年発表)
http://www.bbc.co.uk/arts/bigread/top100.shtml

イギリスの BBC までベスト 100 に手を出していました。
ただしこちらは読者投票らしく、ハリーポッターとかが上位に入っています。
これはパスでいいか・・・。


そもそもこういう芸術価値がかかわるものに順位を付けられるかどうかは分かりませんが、議論を起こさせるにはちょうどいいですね。
日本でも 10 年くらい前に福田和也氏が「作家の値うち」という本で、日本の作家の作品に点数を付けていました。
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以前にクローズドな SNS に書いたのですが、意外に好評だったので、加筆・修正してブログにも再掲しておきます。
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最近「肉食」とか「草食」とかは、男子を形容するようですね・・・。

ところでこれらを英語で何と言うかご存知ですか?

  肉食 → carnivorous
  草食 → herbivorous
  雑食 → omnivorous

何だこりゃ、見たことない単語だ!という感じがするかもしれませんが、よく見ると、後ろ半分が同じですね。
-vorous」となっている。
そう、これはラテン語の語源で、「食べる」とか「むさぼる」とかいう意味です。

で、残った最初の半分を見るとこうです。

  肉 → carni
  草 → herbi
  雑 → omni

carni」というのは、carnival(カーニバル)の carni で、”肉”の意味です。
カーニバルは「謝肉祭」ですね。
それで、carni + vorous で「肉食」となります。

herbi」というのは、見てのとおり herb(ハーブ)、すなわち”草”です。
herbi + vorus で「草食」となります。

最後の「omni」というは、omnibus(オムニバス)の omni で、”たくさんの”とか”すべての”とかいった意味です。
omni + vorus で「雑食」です。

こうやって語源で覚えると語彙数を一気に増やせます。


せっかくなので、上記の語源から別の単語も覚えてみましょう。

-vorous (食べる) から・・・
  voracious → 【形】貪欲な、食欲旺盛な

carni- (肉)から・・・
  reincarnation → 【名】輪廻転生

これは、re (再び) + in (入る) + car (肉) + 〜tion (名詞を作る語尾)、つまり”再び肉体をまとう”といったニュアンスです。

herb- (草)から・・・
  herbicide → 【名】除草剤

ついでに -cide というのは「殺す」という意味です。
suicide(自殺)とか、homicide(殺人)とか、patricide(父殺し)とか、たくさんあります。
ちなみに殺人の homi- homo と同じで、人という意味です。「ホモ サピエンス」もここから由来しています。
あと「父殺し」があるなら「母殺し」はあるのか、という疑問がわくかもしれません。
あります。matricide です。さらに「兄弟姉妹殺し」もあって fratricide と言います。

omni- (たくさんの、すべての)から・・・
  omnipotence → 【名】全能

-potence というのは”力”という意味です。potential(ポテンシャル、潜在能力)などです。


語源をたどっていくと面白い発見があります。
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翻訳業界には「トライアル」なるものがあります。

私が知る限りでは、
  (1)翻訳を発注したい会社が翻訳会社を選定するために行なうテスト
  (2)翻訳会社がフリーランスの翻訳者を選抜するために行なうテスト
の 2 種類があります。
いずれの場合も、「仕事を出す先」をテストするわけです。

今、(2)の意味でのトライアル課題文を作っています。
(さすがに内容については言えませんが)

これまでにも作ったことはあるのですが、何度やっても悩みます。
このテストで翻訳者を選抜するわけですから、あまり簡単では駄目だし、かといって現実に遭遇しないようなひねくれた文を出しても実力は測れない・・・。
などと思っていたら、こんな本があるんですね。

「トライアル現場主義!―売れる翻訳者へのショートカット」
http://www.amazon.co.jp/dp/4621076043

ただ、トライアルというのは各翻訳会社で重視する部分が違ったり、どのレベルの翻訳者を募集しているかで合否基準が異なったりするので、対策を立てるのは簡単ではないでしょう。
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