◆「アジャイル開発」とは

本当に大したものではありませんが、「Simple Weight Recorder」という Android アプリを公開しております。(Facebook アカウントお持ちの方、よろしかったらリンク先にある「いいね!」「Like」ボタンを是非ポチっと)。

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今、毎週機能を追加してリリースしています。先週バージョン 1.1、今週バージョン 1.2 を公開しました。来週にはバージョン 1.3 を公開できそうです。
このように毎週〜数週間程度の短い期間で新しい機能を追加していく開発方法は、「アジャイル」と呼ばれます。それに対して、計画を重視する「ウォーターフォール」という開発手法もあります。

以前も引用させてもらいましたが、シリコンバレーの渡辺千賀さんは 4/8 にこう書いています。
最先端のウェブサービス開発の現場は、とてもアウトソースなんかできない状況になっている。「仕様書を文章で作って、それを誰かが作る」なんていう悠長なやり方は通用しない。どんどん機能開発して、どんどんリリースして、ユーザーのフィードバックを元にさらに進化させる、というのを、毎日行い続けないとならない。
http://www.chikawatanabe.com/blog/2010/04/lean_startup.html


これはまさにアジャイルの方法ですが、毎週どころか、毎日あるいは数時間ごとにアップデートするようですね。恐ろしい。しかしこれが「最先端のウェブサービス開発の現場」のようです。
(しばらく前は CD-ROM でアプリケーションを購入してインストールし、数年後にアップデートがあればこれまた CD-ROM で更新するという方法は普通でしたが、隔世の感です。 )

こういうスピードを体感したかったので、Android アプリの機能追加をアジャイルでやってみたわけです。
もちろん Android アプリはウェブのサービスではありませんが、ユーザーの反応は即座に戻ってきます。Android Market にはコメント欄や評価ボタンがあるので、アップデート内容をユーザーが気に入ったのかどうかが分かります。それで、次にどういった機能を追加しようかと考えます。恐らく、少なからぬ開発者がこういった方法で Android アプリを改善しているのではないでしょうか。


◆ アジャイルとローカライズ(翻訳)

Android アプリをアジャイルで作るとき、プログラミングに加え、メッセージやユーザーインターフェイスを作らなければなりません。僕の場合は英語と日本語ですが、職業柄どちらも分かるし大した量ではないので、自分で翻訳します(基本的にまず英語で作成し、それを日本語に翻訳)。ただこれがもっと大規模なアプリケーションであれば、このローカライズ(翻訳)過程を別の人が分担することになるでしょう。

アジャイル開発について Wikipedia でこう説明されています。
アジャイル開発では、たくさんの文書を書くことよりも、プロジェクト関係者間で必要な時に即座に直接顔を合わせて意思疎通を行うべきであることを強調する。 ほとんどのアジャイル開発チームでは、ソフトウェア開発に必要な関係者全員が、1か所の作業場所で仕事をする。<中略>この作業場所では、テスト担当者、ユーザインタフェース設計者、テクニカルライタ、管理職も一緒に作業する場合がある。


文書でやり取りするのではなく、口頭でコミュニケーションを図って開発します。そして、「関係者全員が、1か所の作業場所で仕事をする」わけです。ローカライズ版アプリケーションを出す場合、当然ここに翻訳者も含まれることになります。

ところが現状では、翻訳は社内ではなく外部の業者を使うというケースが多いのではないでしょうか。これは計画重視のウォーターフォール型ではうまくいくと思います。というのもウォーターフォールでは、あらかじめ仕様書などを作成して翻訳すべき文字や文章を確定するため、外部に出してもそれほど問題は発生しないからです。

ところがアジャイルでは、ウォーターフォールの手法は通用しません。きっちりした仕様書やドキュメントは作られない可能性は高いです。しかも頻繁に更新するため納期は短くなります。
ウォーターフォールに適合した外注という方法をアジャイルでも適用しようとすると、相当な無理が発生します。短納期に苦しめられている翻訳会社は多いですが、こういう点が原因の一つではないかと思います。


◆ 翻訳者・翻訳会社にビジネスチャンスはあるか

渡辺さんによると「最先端のウェブサービス開発の現場は、とてもアウトソースなんかできない状況」のようです。つまりローカライズ(翻訳)も内製化しなければ、この状況には対応できないということです。翻訳者や翻訳会社にとって、もしかしたらここにビジネスチャンスがあるかもしれません。
例えば、開発現場への常駐という方法がすぐに思い浮かびますが、Skype やビデオ会議アプリを活用してコミュニケーションを密にするという方法なども考えられるでしょう。本当にアイデア次第だと思います。

いずれにせよ、新しい状況では新しいチャンスが生まれる可能性があります。従来のビジネスモデル(単価で料金を請求するモデルなど)に囚われていたら、チャンスの芽を逃してしまうでしょう。
(もちろん、最先端のウェブサービスだけが翻訳の仕事ではないので、皆がそうする必要はありませんが)