理系のための英語「キー構文」46 (ブルーバックス)理系のための英語「キー構文」46 (ブルーバックス)
著者:原田 豊太郎
販売元:講談社
(2009-09-18)
販売元:Amazon.co.jp
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以前の記事で紹介した『技術英語の冠詞活用入門』の著者による書籍です。

本書『理系のための英語「キー構文」46』では、タイトルの通り英語の構文を紹介しています。
特徴的なのは、英語構文を最初に紹介して解説するという方法を取っていない点です。頻繁に使うものの、うまく英語にできない日本語表現を見出しとして取り上げ、それに対応する英語構文を説明しています。

プログラミングの本では、言語の文法を解説するものが主流です。しかしそれとは別に、「やりたいこと」や「実現したい機能」を目次にし、それに対応するプログラミング例を挙げている本があります。いわゆる「逆引き」です。
『理系のための英語「キー構文」46』は、いわば英語表現の「逆引き本」と言えます。具体的に目次を見ると、次のような二部構成になっています(一部抜粋)。
第 1 部 キー構文編
日本語の構文を英語に置き換えるコツ

ex. 1 …か…か… 26
ex. 2 …が,… 26
ex. 3 …が…が… 35
<中略>
ex. 21 …では 73
ex. 22 …ではなくて… 76
<中略>
…は…が… 98
  ex. 33 1 …は…がある 99
  ex. 34 2 …は…が多い 104
<中略>

第 2 部 重要フレーズ編
多用する「単語」と「言い回し」を身に付ける

ある 148
  1 一般的である 148
  2 恐れがある 149
  3 ことがある 150
  4 根底にある 151
  5 はずである 151
  6 問題である 152
<中略>
場合 258
  1 場合 258
  2 …する場合,…する場合には,…する場合は 259
  3 …の場合,…の場合は… 261
<後略>


第 1 部は機能語ばかりで、ぱっと見ると意味が分からず少々面食らいます。しかしそれ自体で意味を持たないことが「構文」の特徴とも言えます。上で引用した「…は…が…」の構文について、次のような解説があります(p 98)。
構文「A は B が…」は,主題 A(題目とも呼ばれる)を提示する係助詞「は」と主格 B を表す格助詞「が」を含む構文になっており,1 つの文章のなかに似たような 2 つの要素が含まれているという点で日本語のなかでもとりわけ興味深い構文である。

これを読むと分かるように、英文法ではなく、日本語文法の解説になっています。普段日本語を母国語にする私たちは、英語と対照させて初めて日本語の特性に気づくことがあります。また、何となく書いた日本語を英語にするとき、自分の思考の非論理性に気づくこともあります。本書を読んで得られる副効能は、自分の書く日本語に意識的になれるという点でしょう。明快な英語を書こうとする場合、英文法に詳しいことよりも、思考が明快であることの方が重要です。

逆引き本の利点は、それが辞書的に使えるという点です。ただし一度通読してからの方が使いやすくなるかもしれません。また日英対訳になっているので、日本語だけ見て英語を書く練習をするという使い方もできそうです。
いずれにしても、英語を書く人なら手元に置いておきたい本です。講談社ブルーバックスなので入手しやすく、価格も 1060 円(税別)と手ごろです。