欧州委員会(EC)が「Translation tools and workflow」という冊子を公開している。
以下のリンクからPDFをダウンロードできる。
http://bookshop.europa.eu/en/translation-tools-and-workflow-pbHC0616046/



EUでは加盟国の言語が違うので、公的な翻訳需要がかなり発生する。
この冊子によると、ECの翻訳部門(Directorate-General for Translation)は世界最大規模の翻訳サービス組織らしい。翻訳者とそのサポートをするスタッフが合計2200人ほどいるようだ。

冊子では、この巨大組織で使っているツールとワークフローが説明されている。
そのうち、翻訳作業時に主となるツールはこの4つのようだ。
(1)用語ツール:IATE
(2)中央翻訳メモリー:Euramis
(3)機械翻訳: MT@EC
(4)音声認識

特に(2)の中央翻訳メモリーには力を入れているようだ。非常に規模が大きく、EU全言語をカバーする10億セグメントが格納されているとのことだ。翻訳者はこの中央翻訳メモリーから(一部を)ローカルにダウンロードし、ローカル翻訳メモリーとして使う。

(1)の用語ツールは、データベースをEU諸機関が共有している。用語が860万語以上、略語が50万語以上格納されている。ヨーロッパは用語をかなり重視している(研究も盛ん)が、こういった部分に反映されているのだろうか。
(3)の機械翻訳は統計ベースが基本で、毎日10万ページほど機械翻訳しているようだ。
あと(4)の音声認識ツールが出てくるとは意外だった。キーボードの代わりに多くの翻訳者が使っているらしい。

ヨーロッパは多言語社会で、公的な翻訳需要が大きく、日本とは状況が異なる。ただ、公的な組織が既存訳や用語を集めて有効活用しようとしている例として参考になるのかもしれない。