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IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

翻訳/L10N

16 4月

翻訳品質に関する言語処理学会の論文公開

2020年3月に開催された言語処理学会の発表論文が公開されています。

 言語処理学会第26回年次大会(NLP2020)
 https://www.anlp.jp/proceedings/annual_meeting/2020/index.html

私もテーマセッション「翻訳とは何か? 何ではないか?」で、関西大学の山田さんと共著で1つ発表しました。PDFファイルを以下からダウンロードできます。

 翻訳品質と JTF 翻訳品質評価ガイドライン: 生産ベース評価の品質の考え方
 https://www.anlp.jp/proceedings/annual_meeting/2020/pdf_dir/G1-1.pdf

基本的には機械翻訳の研究者向けなので、翻訳業界の方々はすでに知っている内容かもしれません。
簡単に言うと「翻訳とは、字面上のテキスト変換ではない。人間は、仕様や現実世界など、テキスト外部の要因も考慮して翻訳をしている。だから今後、そういった視点を機械翻訳研究に取り入れてはどうか?」という内容です。

一般社会では「翻訳=テキスト変換」だと考えている人は結構いますし、日常レベルではそれで十分なこともあります。ただし、最終読者に合うように翻訳したり、記述内容の正しさも判断しつつ翻訳したりするには、テキスト外部まで把握する必要があります。

現在の機械翻訳では、テキスト外部まで考慮した翻訳ができません。今後翻訳業界が生き残るには、一般社会の人にここを理解してもらう点が重要でしょう。単に機械翻訳のミスをあげつらうより、機械翻訳の発展や利点を認めた上で、「それでも人間にしかできない点と、それの何に価値があるのか」を社会に伝えた方が生産的だと考えます。
31 3月

2020年度からJTF個人年会費が半額(+現在入会キャンペーン)

日本翻訳連盟(JTF)の個人会員の年会費が2020年4月1日から半額になります。
従来は年2万円でしたが2020年度から年1万円です。

会員になるとさまざまなメリットがありますが、経済面では以下の通りです(執筆時点)。

  • 翻訳(関西)セミナー受講料: 非会員6,000円が3,000円(税抜)

  • セミナーDVD代金: 非会員6,000円が3,000円(税抜)

  • 翻訳祭の参加費: 2019年の場合、非会員10,000円が5,000円(税抜)

  • ほんやく検定受験料: 非会員に比べて20%安い

  • 翻訳白書(2017年版): 非会員20,000円が無料(!)


その他、関連団体のセミナーなどへの参加費が割引になることもあります。

さらに、2020年5月31日まで入会金が半額になる入会キャンペーンを実施しています。
こちらの入会案内ページをご覧ください:
https://www.jtf.jp/jp/admission/admission_info.html

現在フリーランスや会社員として翻訳の仕事をしている、あるいはこれからしたいという方は、この機会にぜひご入会ください。

以上です。
18 3月

翻訳の設計

翻訳は個人で行うことが多く、その場合は橋やビル、あるいは大規模ソフトウェアを構築する際に実施するような「設計」の段階が存在するわけではない。もちろん「これからこの一冊をどう訳そうか」と翻訳者は考えるだろうから、その人の頭の中で計画なり戦略なりは立てているはずだ。ただしここで「設計」とは、翻訳者一人だけというより、翻訳依頼者(クライアント)や翻訳会社などが関係し、翻訳者が何人も参加するような状況における設計を指すことにする。

ソフトウェア開発のプロセスでは、「要件定義」→「外部設計」→「内部設計」→「実装(プログラミング)」といった順に進む。「外部設計」とはユーザーからどう見えるかという設計、「内部設計」とはソフトウェア自体をどう作るかという設計になる。またV字モデルで言うならば、以下の図のように、各フェーズに対して検証を実施することになる。


(引用元:日経XTech https://xtech.nikkei.com/it/article/lecture/20061130/255501/


翻訳プロセスにこれを当てはめた場合、一番分かりやすいのは翻訳者が「実装」をする点だと思われる。ソフトウェア開発におけるプログラマーと同じ立ち位置である。
では翻訳の「外部設計」で何を決めるのだろうか。外部設計はユーザー(最終読者)から見てどうかという話である。だから、たとえば最終読者がエンジニアである場合、「技術専門用語がきちんと用いられている」、「エンジニア向けの日本語になっている」、「旧版マニュアルの表現を踏襲している」といった点だろうか。
続く「内部設計」は、翻訳成果物内部をどうするかという話である。外部設計を受けるならば、たとえば「あの用語集に従う」、「である調(常体)をスタイルとする」、「前回作成したTMを使う」といった話になるはずだ。

このような翻訳における設計(外部と内部)は、現在のところ翻訳会社内で実施されていると思われる。自分自身も翻訳会社にいるときにしていた。
ただ、翻訳設計は誰もが知るような公の知識になってはおらず、各翻訳会社の「ノウハウ」として蓄積されていると考えられる。ノウハウは利益の源泉になるため、翻訳会社に出してくれとは言いにくい。しかし公の知識になれば、人が同じ失敗を繰り返したり、車輪の再発明をしたりする事態は避けられる。だから大学などの公的機関が研究してまとめて公開することが社会全体からすると本当は望ましい。

実のところ、ISO 11669という国際標準規格では、翻訳の仕様を作る(つまり設計する)ためのパラメーターが提案されている。ISO 11669はお金を払わないと読めないが、その元になったパラメーター自体はMelby氏によってウェブ上に公開されている。
大きく「言語面」(原文と訳文の情報)、「制作面」(タスクなど)、「環境面」(ツールなど)、「社会関係面」(納期や費用など)と分類されている。非常に有用ではあるものの、やはり実務者から見ると少し足りない気がするし、構成がどこまで妥当なのかも分からない。こういったパラメーターも、外部設計や内部設計といった概念で分類してみるとすっきりし、かつ実務で適用しやすくなるのかもしれない。特に検証を内部設計にするのか、外部設計にするのかという分割は、概念上役立つ。

なおソフトウェア・ローカリゼーションにおける設計は自著『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』(達人出版会インプレス)の第2章5節で触れているが、あくまでソフトウェア設計に属する話だったので、純粋に翻訳に注目した調査研究が欲しいところである。
26 12月

シンプルMTスコアのウェブ版を公開

以前、機械翻訳の自動評価をGUIで手軽にできるデスクトップ・アプリを作成した(ブログ記事)。
しかしファイル・サイズがかなり大きくなってしまったり、ウイルス誤検出が原因でクラウド・ストレージ上に置けなかったりといった問題があった。

そこでインストール不要なウェブ版を作成して公開した。

 シンプルMTスコア
 http://mtscore.nishinos.com/
 https://mtscore.nishinos.work/
 (SSL対応でドメインを変更しました。2020-01-04)

シンプルMTスコア

機能的にはデスクトップ版と同じで、BLEUとGLEU(Google-BLEU)のスコアが計算できる。

入力された訳文はサーバー上で一切保存していないが、不安であれば機密情報の入力は避けていただきたい。
また、あまりに重い処理を避けるために、センテンス数は500を上限としている。これはサーバー負荷を見ながら変更するかもしれない。
17 12月

JTFほんやく検定合格でトライアル免除/受験要件緩和

日本翻訳連盟(JTF)は「ほんやく検定」を主催しています。

これまでも2級以上に合格するとJTFの「検定合格者リスト」(JTF会員のみ閲覧可)に掲載され、プロとして仕事を受けるチャンスがありました。しかし合格者(翻訳者)の側から翻訳会社にアプローチする機会は限られていました。

そこで、ほんやく検定2級以上の合格者に対してトライアル免除またはトライアル受験要件緩和という優遇措置を実施している翻訳会社をまとめて掲載することになりました。これにより、合格者の側から翻訳会社を探して翻訳者登録をしたりトライアルを受験したりできます。

本日現在、翻訳会社20社がこの優遇措置を実施しています。
たとえば、1級合格で「トライアル免除」、2級合格で「実務経験なしでトライアル受験可能」といった内容です。

実施会社や要件などの詳細情報は、以下「JTFほんやく検定」のページにある「合格者の特典」セクションの「●トライアル優遇措置対象翻訳会社リスト」をご覧ください。
https://kentei.jtf.jp/

あるいは、こちらから直接PDFを開くことも可能です。
https://www.jtf.jp/pdf/kentei_trial.pdf

jtf-kentei-traial

フリーランス翻訳者になるためにはトライアル合格が必須です。しかしそもそもトライアル受験に実務経験を求められるケースもあります。(そのため最近、実務経験を「盛る」トライアル受験者が出ているとの話も聞きます。)
上記の制度を利用すれば、実務経験がなかったり浅かったりしても、トライアル受験が可能になります。しかも一度検定に合格するだけで何社にもアプローチ可能なので、効率的です。

フリーランス翻訳者を目指している方は、ぜひこちらの制度を活用してみてください。

※ なお次の第72回ほんやく検定は2020年1月25日(土)実施で、申込み期限は2020年1月14日(火)17:30までです。
著書/訳書
血と汗とピクセル
『血と汗とピクセル』


アプリ翻訳実践入門
『アプリ翻訳実践入門』


ソフトウェアグローバリゼーション入門
インプレス刊
『ソフトウェアグローバリゼーション入門』

達人出版会刊
『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』


英語語源が魔術に変わる世界では
『英語語源が魔術に変わる世界では』


現場で困らない! ITエンジニアのための英語リーディング
『IT英語リーディング』


アプリケーションをつくる英語
紙版
『アプリケーションをつくる英語』

電子版
『アプリケーションをつくる英語』
第4回ブクログ大賞受賞】