IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

カテゴリ: 自著/連載

JTFジャーナルの連載「翻訳品質のランチボックス」が最終回を迎えました。294号の「第8回:仕様とJTF翻訳品質評価ガイドライン」という記事です。
JTF会員でなくても、アカウントを作成するとPDF版を無料で読めます(無料期間の終了時期は未定)。またJTF会員には近日郵送されるはずです。
リンクはこちら:https://journal.jtf.jp/



記事の内容を簡単にまとめると次のようになります。
現在海外では、翻訳成果物の要件などについて受発注者が合意して作成する「仕様」の考え方が広まりつつあります。仕様には納期やワード数などの情報に加え、品質評価時の項目(エラー・カテゴリー)や合否しきい値などについても盛り込みます。本年中の完成を目指す「JTF翻訳品質評価ガイドライン」でも仕様に基づく評価方法をベースにしながら、日本語に対応したエラー・カテゴリーを提示します。



なお、同号特集「ニューラル翻訳を超える未来へ」では、長尾真氏と賀沢秀人氏(グーグル)が対談をしています。これは現在のニューラル機械翻訳(NMT)の解説というより、その「次」を語るという内容です。
印象深かった部分を1つ挙げてみます。

長尾:<中略>あるいは完全に使うためにはテキストの情報だけじゃなくて、テキストが発話された環境や状況を追加する必要があるのではないかと思います。
今のディープラーニングでやる機械翻訳のクオリティをもうひとつ超えるためには、たとえば今対話しているこの状況に関する情報が欠けている面があるからだめなんじゃないかという気がしてまして、<後略>

本ブログでも何回か書いています(下記リンク参照)が、「翻訳」はテキストに書かれた情報だけでできるわけではなく、テキスト外部にある文脈や状況に関する情報を取り込む必要があります。しかし現在までの機械翻訳(ルールベースも統計もニューラルも)では、テキストに書かれた情報しか利用していません。
人間はテキスト外部の情報も取り込んで「翻訳」できます。もちろんダメな翻訳者は文法に従って単語を組み替えるようなこともしますが、少なくとも人間にはテキスト外部の情報を取り込む能力はあります。

人間がしてきた翻訳を「翻訳」と呼ぶなら、機械翻訳がやっていることは実はまだ「翻訳」ではありません。テキスト外部の情報も取り込んで初めて「翻訳」と言えるはずです。
対談にあるように、そちらの方面に研究が進むのだとしたら、実に楽しみです。

<本ブログの関連記事>
ホフスタッター氏による機械翻訳考察(2018-02-05)
機械翻訳は「翻訳」をしていない(が役に立つ)(2017-12-01)
機械で「翻訳」をしているのか(2016-03-18)

以上です。
このエントリーをはてなブックマークに追加

アマゾンKindleストアの「月替りセール」の対象タイトルとして、私の『英語語源が魔術に変わる世界では』が選ばれています。
セール期間は、2/1〜2/28までです。





Kindleストアでこういったセール対象に入るには、大きな出版社じゃないと厳しいかなとも思っていたのですが、幸運にも対象に選んでもらえました。
これは、やはりある程度読まれていたのが背景にあるはずで、すでにご購入くださった皆さまのおかげだと思います。ありがとうございました。
このエントリーをはてなブックマークに追加

達人出版会版『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』はバージョンが0.9でしたが、修正を終えて正式版になりました。
価格は1,600円です。

g11n-v1

同タイトルでインプレス版も販売されていていますが、少し違いがあります。
インプレス版には企業インタビューの章が追加されており、価格は2,400円です。

少し高くても企業インタビューも読みたい方はインプレス版、インタビューは不要なので低い価格で買いたいという方はこちらの達人出版会版をどうぞ。
このエントリーをはてなブックマークに追加

語学フィクション『英語語源が魔術に変わる世界では』は、2017年9月に電子版、10月に紙版を発売しました。おかげさまでアマゾンのKindleストアで部門ベストセラーを獲得するなど、これまで多くの方に読んでいただいています。
同書をご購入いただけるウェブサイトを紹介します。

◆電子版

電子版(Kindle本)はアマゾンのみから販売されています。
Kindle専用機器が無くても、iPhone、Android、またはパソコン用の無料Kindleアプリをインストールすればお読みいただけます。
ご購入はこちらから:
https://www.amazon.co.jp/dp/B075CVS58L/

◆紙版

紙版は書店ウェブサイト上でのみ販売しています。街の書店には並んでいません。
オンデマンド印刷(プリント・オン・デマンド:POD)という方式で、注文があり次第、1冊ずつ印刷および製本し、郵送されます。
以下の書店ウェブサイトからご購入いただけます:

オンデマンド印刷はあまり馴染みがありませんが、取り外し可能なカバーが付属しないという点を除き、一般的な紙の本と変わりません。アマゾンでは「ペーパーバック」とも呼ばれています。

購入に不安を覚える方もいらっしゃるでしょうから、サンプルの写真を掲載します。ちなみにサンプルはアマゾンから購入したもので、他の書店とは(印刷機が違うため)若干異なる部分があるようです。

まず全体の様子です。
pod_1

次に上部の拡大です。
pod_2

表紙を少しめくってみたところです。取り外し可能なカバーはありませんが、表紙の紙には十分な厚みがあります。
pod_3

最後に本文です。一般的な紙の本と違いはありません。
pod_4

以上です。
このエントリーをはてなブックマークに追加

数か月間で何冊か本を出版しました。ここ2年ほどで書いてきたものが、ちょうどこの時期に重なって出たという感じです。
今後しばらくは出す予定がないため、いったんまとめて時系列で紹介します。


◆ 7/7刊『ソフトウェア・グローバリゼーション入門: I18NとL10Nを理解する』(達人出版会)

ソフトウェアを世界中で使ってもらうにはI18N(インターナショナリゼーション)とL10N(ローカリゼーション)が必須で、2つは合わせて「グローバリゼーション」と呼ばれます。
グローバリゼーション全体を扱っている日本語書籍は少なく、15〜20年前に何点か出されたのが最後です。本書は最新のアジャイル開発の動向も盛り込みながら、基本的な考え方を理解できるようにしてあります。
(電子版のみ)
blog-top_Intro-G11N_2
https://tatsu-zine.com/books/software-g11n


◆ 8/7刊『現場で困らない! ITエンジニアのための英語リーディング』(翔泳社)

ITエンジニアには、英語を読む機会が頻繁にあります。
中高で英文法を学ぶと「1つの文」は読めるようになります。英文法は基本的に「1つの文」に関するルールだからです。しかし文が集まった「文章」は、また別の特徴を持ち始めます。
本書はITエンジニアがよく読むドキュメントについて、文章全体に注目して解説するとともに、すぐに役立つリーディング・テクニックも紹介しています。
IT英語リーディング
http://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798149493


◆ 9/3刊『英語語源が魔術に変わる世界では』(グローバリゼーションデザイン研究所)

語源を使った英単語学習は効果的だと言われていますが、既存書は語源と単語を羅列したものが多く、無味乾燥な印象を持っていました。そこで、個人的に好きなSFやファンタジーっぽく仕立てられないか……という意識から書いた「語学フィクション」です。
幸運にも、アマゾンKindleストアの「SF・ホラー・ファンタジー」部門で、ベストセラー1位を9/10〜13に獲得しました。
ちなみに10月にはオンデマンド印刷による紙版も出しました。
Gogen_small
https://www.amazon.co.jp/dp/B075CVS58L


◆ 10/16刊『ソフトウェアグローバリゼーション入門:国際化I18Nと地域化L10Nによる多言語対応』(インプレス)

7月に出した達人出版会の『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』のインプレス版です。
ただし内容が増えています。グローバリゼーションを実践している企業数社にインタビューし、1章追加しました。
G11N-imp_small
https://book.impress.co.jp/books/1117101057


以上です。
ご興味があればお読みいただけると幸いです。
このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ