IT翻訳者Blog

翻訳、英語、ローカリゼーション、インターナショナリゼーションなどについて書いています。

カテゴリ: その他

借金まみれの現状を見ると、日本を脱出して海外で暮らしたいという気持ちもよく分かる(ただしマイノリティーとして生きる覚悟は必要だ)。しかも今は数年前に比べたらかなりの円高。このチャンスを活かしてアメリカに留学し、現地で何とか仕事を得られないかと考えている人もいるだろう。既得権益層の自己保身のしわ寄せを受けた「就職氷河期」に当たる世代は、不満を持ちつつも会社員生活を送っているかもしれない。現実逃避の留学というのは好ましくないだろうが、しかし向上心を抑圧したくはない。

A. 例えば、1 学年(9 か月)留学してコースを終了し、OPT で 1 年間働くという選択肢があります。



まず「OPT」の説明が必要だろう。これは「Optional Practical Training」の略で、任意選択の実践トレーニングのことだ。留学生が特定の課程を修了すると、学んだことを実践するために 1 年間の労働が許可されるという仕組みである。特定の課程とは、例えば学士課程や修士課程などである。詳しくは「OPT 留学」あたりのキーワードで検索。

30 歳くらいの大卒会社員がアメリカ留学を考える場合、まず MBA あたりが思い浮かぶだろう。しかしアメリカの MBA 課程は 2 年間が多く、費用も非常に高い。2 年間の授業料と生活費で 1,000 万円くらいは見積もっておかなければならないかもしれない。貯まるまで待っていたら、円高のチャンスを逃す上に、いたずらに歳を取ってしまう。大学に編入する手もあるが、こちらも修了まで 2 〜 3 年。しかも TOEFL が必要で、とてもスピーキングやライティングまで勉強する時間がない……などという悩みもあるかもしれない。貯金の金額も考えたら、1 年で終わる便利なコースはないのだろうか?

そんな便利なコースが、実はある。いやむしろ、そういうニーズを満たすために作られたのではないかと思えるコースがあるのだ。いくつか挙げてみる。


◆ カリフォルニア大学リバーサイド校(UC Riverside)エクステンション

※「エクステンション」とは課外講座や公開講座のこと。

Academic Year Certificate Programs(AYCP)
http://www.iep.ucr.edu/programs/aycp/

1 学年の修了証プログラム。まさに OPT を前提にしたコースであるとしか思えない。

・期間: 9 か月(9 月〜翌年 6 月)
・授業料: 14,850 ドル(1 ドル 90 円で約 134 万円)
・英語力: TOEIC 700 点以上
・専攻: 経営管理、マーケティング、物流とサプライチェーン、プロジェクト管理、インテリア デザインなど

Postgraduate Diploma in Management(PGDM)
http://www.iep.ucr.edu/programs/postgrad-management.html

1 学年の修了証(Diploma)プログラム。もちろん OPT の対象(期間の短い Certificate プログラムは対象外)。最初の 3 か月でマネジメントの入門的な授業、次の 3 か月で専門的な授業、最後の 3 か月がインターン(無給)に当てられている。インターン後に OPT に入れるため、アメリカの職場に慣れるには便利だ。

・期間: 9 か月(年 4 回入学機会)
・授業料: 14,850 ドル(1 ドル 90 円で約 134 万円)
・英語力: TOEIC 700 点以上
・資格: 大卒か、同等の経験

生活費だが、月 15 万円程度に抑えられれば 9 か月で 135 万円。授業料と合わせて何とか 300 万円以内で修了できる。寮もある。
ちなみにリバーサイドはロサンゼルスから電車や車で東に 1 時間くらい行った場所にあるらしい。生活費が少し安くなるかもしれないが、インターン企業がやや少なそうなところが難点か。


◆ カリフォルニア大学アーバイン校(UC Irvine)エクステンション

International Certificate Programs
http://unex.uci.edu/international/certificates/overview.aspx

専攻授業 3 か月 + インターン 3 か月の修了証プログラム。9 か月という要件を満たすために、3 ヶ月間の専攻授業を複数回取る必要がある。

・期間: 3 か月(年 4 回入学機会)
・授業料: 専攻授業 6,500 ドル、インターン 1,650 ドル。専攻授業を 2 回、インターンを 1 回取ると合計 14,650 ドル(1 ドル 90 円で約 132 万円)
・英語力: TOEIC 710 点以上
・資格: 大卒か、専門分野での経験
・専攻: 経営管理、通信システム設計工学、国際ビジネス業務と管理、国際金融、国際ツーリズムとホテル管理、マーケティング、など

こちらも生活費を月 15 万程度に抑えられれば、9 か月で 300 万円以内になる。寮もある。アーバインはリバーサイドと比べると都会らしく、ロサンゼルスにも比較的近い。インターン企業も有名企業が多い。


上記の 2 校は一例で、他にも OPT を前提としたコースはいくつもある。UC Berkeley にもあるし、シリコンバレーの UCSC にもある。エンジニアであればシリコンバレーもいいかもしれない。もちろん、カリフォルニア大学以外でも提供しているが、なぜかカリフォルニア大学のエクステンションが積極的だ。

OPT の情報を検索するときは、例えば「"Optional Practical Training" Certificate」のような検索キーワードがよいだろう。修了証コースは短い期間のものが多いからだ。また検索でヒットしたら、OPT 情報をサイトに載せていて、留学生の受け入れが積極的な学校が望ましいのではないだろうか。


:この情報は本記事の作成時点のものです。もし誤りが見つかったらコメントをいただければ幸いです。
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ダイヤモンド・オンラインにクリス・アンダーソンのインタビューが載っていた。

独占インタビュー!『FREE』著者のクリス・アンダーソンが語る「無料経済を勝ち抜く企業と個人の条件」
http://diamond.jp/feature/dolweekly/10001/

タイトルの通り、ほとんどが『Free』に関する話題である。しかし、最後の方で次に発表する本について少し話している。
それほど長くないので引用してみる。
―あなたの次の本のテーマは「マイクロ製造」だと聞く。それが新産業の一つの例か。

そうだ。今やインターネットのおかげで、私のようにエンジニアではない人間でもラップトップ上でロボットを設計し、ごくわずかな単位でも中国の企業に製造を発注できる。どんな小さな企業も、街中のクリーニング店以上の存在になれる時代だ。世界にインパクトをもたらすことができる時代だ。実は私も最近、ロボット製造ベンチャーを起業した。

インターネットは企業という組織を離れて新しい共同作業を行う方法を与えてくれた。次は、その教訓を現実のモノの世界に応用することになるはずだ。要するに、アトム(物質)が次なるビット(情報)なのだ。つまり、PCの中でビットを扱うように、物理的なものを自在に組み合わせて何かを作ることができるということだ。

―あなたの関心は、既存産業の破壊にあるのか?

違う。“個”の台頭だ。『ロングテール』は小さな個別市場の台頭にスポットライトを当てた。『フリー』はプラットフォーム上での“生産”が無料になれば、人びとが金銭だけにとらわれず行動できるようになることを説いた。

そして次の本は、需要と製造の可能性はまだまだあるということについて書く。大企業で働かなくとも、いいアイデアと熱意、そして貢献できる“何か”を備えていれば、その個人の潜在能力は計り知れなく大きいことを示したい。
これは、アンダーソンが Wired の 2 月号に書いた記事と同じ内容だろう。
リンク先は英語である上に少々長いので、概要を知りたい方は私のブログに要約を載せてあるので読んでいただきたい。
また、アンダーソンが同じく Wired の Podcast で行なったインタビューもこちらで聴ける(ただし英語)。

簡単に言うと、(1)プロトタイプ ツールの低価格化(2)中国の工場へのネット経由による発注、という 2 点によって、資本の少ない個人がデザインから製造まで行なえるようになりつつあるということである。
これは、個人がブログや DTP で「出版業」ができるようになってビットのロングテールが実現したのに対し、モノのロングテールが始まることを意味する。
しかしそれによって製造業を行なっている大企業を打ち倒す、というわけでは必ずしもない。大企業が扱わないようなロングテールの部分を狙うということである。Wired の記事では、例えば「レゴ ブロックの兵隊の武器」という非常に狭くて大企業が進出しないような分野で商売している会社が紹介されている。

注意したいのは、製造業といっても個人が担うのはデザイン(設計)の部分であって、実際の製造は中国に委託するということである。これはアップルの製品に「Designed by Apple in California, Assembled in China」と書いてあるのと同じだ。
個人が担当し、かつ高い付加価値を与えられるのは、そういったデザインの部分(知識集約型)なのであり、実際に機械を使った製造という部分(資本集約型、労働集約型)ではない。

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ここしばらくの間、アメリカのニュースのトップはハイチかオリンピックかトヨタでした。いよいよトヨタの社長が下院公聴会に呼ばれ、一体どうなることかと思っていました。
議会での証言後に地元ディーラーとの会合に出席して、涙を流したそうです。

Toyoda's tears
http://www.youtube.com/watch?v=OItBnWHjlFM
ロイターのビデオ(YouTube)

マスメディアのニュースばかり見ていると気がつきませんが、意外にトヨタ擁護の声はネット上に多いようですね。このロイターのコメントを見ると、トヨタ批判はそれほどなく、比較的好意的なものばかりです。
流暢な英語でスピーチして冷静な顔をしているより、巨大企業トップの人間的な側面の方が同情を引くのでしょうか。

また、CNN のコメントを見ても、トヨタを買い続けるというコメントが多いです。
むしろフォードや GM に対する批判が多い。

Analysis: How did Toyoda do?
http://www.cnn.com/2010/BUSINESS/02/25/toyota.congress.react/index.html

Toyoda in Washington: A clash of cultures?
http://www.cnn.com/2010/BUSINESS/02/24/money.toyoda.culture.clash/index.html

少なくともこういったコメントを見ると、トヨタに対する信頼は崩れていないようです。
選挙を控えている下院議員の「政治的パフォーマンス」みたいに捉えている人も多いんでしょうね。
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Fast Company 誌が「世界で最も革新的な企業」の 2010 年版を発表しています。

詳しくはリンク先を見てください。
http://www.fastcompany.com/mic/2010

ここで一覧になっている上位 50 社を国別に挙げると・・・

アメリカ 36
中国   4
インド   2
イギリス 1
ドイツ   1
フランス 1
オランダ 1
スイス  1
台湾   1
韓国   1
日本   1

アメリカが 1 位であるのはそれほど不思議ではありませんが、それにしても上位の 7 割以上がアメリカ企業です。
アメリカの雑誌が集計している点を割り引いても、圧倒的です。

驚くのは、中国が 2 位、インドが 3 位という点でしょうか。どちらも日本より多い数の企業が入っています。
(ただし分野別ランキングで、「中国」「インド」があるので、その影響かもしれません)

中国とインドでどのような企業が入っているかと言うと・・・

・中国
 5 位 Huawei: 通信機器
16 位 BYD: 自動車、電池
29 位 Alibaba: B2B オンライン マーケット
42 位 Huayi Brothers: 映画/テレビ番組制作

・インド
22 位 Indian Premier League: クリケット リーグ運営
39 位 VNL: 太陽電池式の携帯電話基地局網

中国は国際的な企業が多いですが、インドは主に国内市場をターゲットにしている企業のようです。

ちなみに同じアジアの台湾と韓国は・・・

・台湾
31 位 HTC: 携帯電話

・韓国
36 位 Samsung: 家電、メモリ、携帯電話

最後に日本は・・・

・日本
41 位 ファースト リテイリング: 衣料品(ユニクロ)

日本企業は、上位 50 社ではファースト リテイリングのみです。
上位 50 社以外でも分野別ランキングが出されていて、家電分野でオリンパスが 9 位になっています。
ゲーム分野で「Muteki Corp.」とあったので、日本の会社かと思ったらアメリカ企業でした。
日本が得意だと思われていた家電やゲームの分野でも、台湾や韓国の企業が入る一方、日本企業に革新性があると認められていないようです。

(リンク先を見ると、「SPONSORED BY HITACHI」となっています。これは一体何かの皮肉なのか・・・)
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『フリー』の著者であるクリス・アンダーソンが Wired に記事を書いています。

In the Next Industrial Revolution, Atoms Are the New Bits
http://www.wired.com/magazine/2010/01/ff_newrevolution/

要約すると以下のような内容です。
----------
この 10 年間で、インターネットのおかげで出版や放送を行なう人が増え、「ビットのロングテール」現象が起こった。
今後 10 年間で、これと同様なことが「製造業」でも発生する。「原子(atom)のロングテール」と言うべき現象である。
アイデアを持つ人であれば、個人でモノを製造して販売できるようになる。

この現象は 2 つの要因に後押しされる:

(1)安価で高性能なプロトタイプ製作ツールが普及する
例えば「MakerBot」は、3 次元プリンターを 1,000 ドル未満で販売している。これはプラスチックで立体を形成する機械である。

(2)中国の工場にカスタム製品を発注できる
インターネット経由で注文を受け、クレジットカードなどでの支払いが可能な企業が増えている。「Alibaba.com」などを見るとそういった工場は見つかる。


アイデアから販売までの手順:

1. アイデアを出す
すでに特許が出てないか確認するした方がよい。

2. デザインする
Blender などの無償のツールで 3 次元のデジタルモデルを製作する。

3. プロトタイプを作成する
MakerBot などの 3 次元プリンターでプロトタイプを作成する

4. 製造する
小規模ならガレージでもよいが、世界を目指すなら中国に発注する。

5. 販売する
オンラインで消費者に直接販売するか、E コマースサイトを利用する。
----------

技術の発展により、それまで巨大な資本を持つ企業にしかできなかったことが個人でできるようになりました。
出版や放送の例を挙げるなら、ブログや Youtube の動画です。これらはビット(電子データ)を扱うため、容易にコンピュータで処理したりネットワークで伝送したりできます。
コンピュータの低価格化やネットワーク帯域の増大によって、資本の少ない個人が出版業や放送業を始められるようになったのです。

上記の通り、アンダーソンは今後 10 年で同じ傾向が物理的なモノにまで及んでくると言っています。つまり、個人で製造業を始められるということです。
ただ注意したいのは、町工場に代表されるような、いわゆる「ものづくり」的な製造業ということではありません。
個人が担うのは、アイデアやデザインといった知識集約型の部分であり、実際の製造という資本集約型(場合によっては労働集約型)の部分ではないのです。
アンダーソンは Jawbone というノイズキャンセラーを製造している企業を例に挙げています。ここは工場は持たず、製造はすべてアウトソーシングしているようです。

アンダーソンの予想が的中するなら、GDP における製造業の割合が大きい日本は、不利な立場に立たされるでしょう。
ブログなどの個人メディアの発展により、収益を脅かされる新聞社や出版社と同じ立場です。
アイデアやデザインといった知識集約型の部分をいかに伸ばせるかで、今後の日本経済の行く末が決まるような気がします。
(Apple の台頭を見れば、もう始まっているのでしょうけど・・・)
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